第334話マスターと由紀の横浜デート(6)

元町レストランでの食事の後は、本来の目的である「由紀のドレス購入」になる。

ここでもマスターは知り合いらしい、かなり高級なドレスショップに、由紀を誘った。


様々な美しいドレスがある中、由紀は上品なピンク色のドレスを選ぶ。

試着をした由紀を見たマスター

「ほお・・・まるでお人形さんだなあ」

「見とれちゃうなあ・・・」

実際、由紀の晴れ姿に見とれている。

見とれられた由紀は、恥ずかしそうな顔。


店員も店長をはじめとして数人、由紀のドレス姿を見に来た。

「完璧です!」

「この子なら、我が店のポスターにしたい」

「とにかくきれいですし、可愛らしい」

・・・・・とにかく大好評である。


そんなことで、ドレスはスンナリと決まり、マスターと由紀は、ドレスショップを出た。


由紀は

「ねえ、本当にいいの?すごく高いよ?」

と、声をかける。


それにマスターはニコニコと首を振る。

「いやいや、俺は由紀ちゃんが生まれた時から、知っているんだ」

「とにかくずっと可愛くてさ、その由紀ちゃんに結婚式で司会をしてもらうんだから」

「俺だってどれほどうれしいか」

「由紀ちゃんの笑顔で、俺は今まで、どれほど苦しみから救われたか言い切れない」


マスターから意外な言葉が飛び出した。

由紀は「え?」という顔になる。


マスターは言葉を続けた。

「これで、料理人の修行とかホテルのシェフの仕事も大変だった」

「そんな時に、美智子さんを通じて晃さんと再会した」

「晃さんも美智子さんも、俺のような出奔した情けない男によくしてくれてさ」

「由紀ちゃんが生まれた時でも、こんな俺を呼んでくれて」

「本当にうれしかったんだ」

「それにさ、由紀ちゃんは今でも可愛いけれど、生まれた時も本当に可愛かった」

「まるで、天使さ」

「新しいメニューを考え苦しんでいた時も、由紀ちゃんの顔を見に来ると、帰りにパッとひらめく、そしてひらめいたメニューが大好評なんだ、いつも」

珍しくマスターの長口舌になった。


由紀は、そんな話を聞いて「へーーー!意外」と思った。

しかし、すごくうれしかった。


「わかりました、マスターの好意、ありがたく受けます」

「しっかりと司会をします」

そして、マスターの正面に立ち、キチンと頭を下げる。


マスターは照れくさそうな顔。

それでも

「じゃあ、中華街に行こうか!」

話題を切り替える。


すると由紀の顔が、パッと輝いた。

「はーい!中華粥食べたいの!」


マスターは、由紀のあまりの元気さに、笑ってしまった。


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