第310話クリスマスコンサートの話し合い

クリスマスコンサートのアンコールの話し合いが始まった。


榊原

「一曲は、史君のピアノで由紀ちゃんが歌って、オーケストラと楽団がバックで支える曲にするよ」

「曲としては、アヴェ・マリアにしたい、いろんなのがあるけれど、どれがいい?」

と、集まったメンバーに尋ねる。


コンサートマスターの高橋

「そうだねえ、バッハ=グノーが定番だけど、モーツァルトやシューベルトもありますね」


管楽器のリーダーの鈴木

「管楽器としては、由紀ちゃんと史君に任せたい」

合唱団の代表として出席している三井も

「お任せです」

と由紀と史に微笑んだ。


由紀は

「うーん・・・悩むなあ・・・」

となかなか決められない。


それでも史は考えがあるようだ。

「やってみたいのはカッチーニのアヴェ・マリア、重みがあって好きです」

史が「カッチーニ説」を言うと、コンサートマスターの高橋、管楽器リーダーの鈴木、合唱団の三井は「ほお・・・」といった顔になる。


由紀

「う・・・わざわざ難しい曲を・・・」

と史の脇をつつくけれど、史は動じない。


「大丈夫、姉貴なら出来るって」

と、珍しく由紀を持ち上げる。

そんな珍しいことをされた由紀


「うーん・・・そう?じゃあ、いいかなあ、やってみるかなあ」

「家でも練習できるかなあ」

由紀は少しばかり機嫌がなおった。


榊原は

「ああ、じゃあ、編曲しておく、カッチーニか、ズシリとしていいかな」

と簡単に納得。


榊原は

「もう一曲ぐらい欲しい」

とまたメンバーに尋ねた。


高橋

「そうですね、少し明るい和音の曲で」

鈴木

「モーツァルトがいいかなあ」

三井は

「そうなると・・・アヴェ・ヴェルム・コルプスとかどうでしょう」

と、合唱団としてはやりたい曲があるようだ。


アヴェ・ヴェルム・コルプスについては、由紀も史も全く異存はないようだ。

二人、素直に頷いている。

こうして、クリスマスコンサートのアンコールは「カッチーニのアヴェ・マリア」と「モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス」に決定した。


話し合いが終わり、榊原が由紀と史に「ああ、送っていく」と声をかけていると、マスターが由紀を手招きしている。


マスターは、何か思惑がある顔つきになっている。



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