第295話史の京都散歩(18)

愛華が少しずつ寄ってくるけれど、史はそこで少し考えた。

「愛華ちゃんが悪いわけではない」

「ここで、よそよそしい態度も変だ、お土産ショッピングに付き合ってもらったんだから、古くからの関係もあるらしい」

と言うことで、笑顔で接することにした。

冬にしては暖かな日だったので、円山公園のベンチに座ることにした。


珍しく史から話をはじめた。

「昨晩は、過分なお礼を頂きまして、また今日も付き合っていただいて」

と、キチンと頭を下げる。

そんな史に加奈子はびっくり

「あら、急に固い言葉使って」

となるけれど

愛華はうっとり

「いや、こちらこそや、あんな素晴らしい演奏を聞かせてもらったんや」

「旅行券はともかくな、学生やから」

「呉服を着た史君見たいなあ」

と、目が輝いてている。


史は、相変わらずにこやか

「そうですねえ、普段に着るということはないけれど」

と、周囲をあるく人達を見る。

「それでも、着物を着ている若い人が多いですね」

確かに、男も女も着物を着て歩いている人が円山公園に多い。


それについては加奈子が説明をした。

「ああ、あれはな、祇園の時間貸しで着付けをしてくれる店があるんや」

「たいてい歩いている人は、中国とか韓国の観光客なんや」

「日本人は、よほど地方から出てきた人しか借りないみたい」


史がウンウンと頷いていると、愛華が

「ところでな、史君は源氏にも詳しいの?」

と聞いてきた。


史は

「うーん・・・父の影響もあるけれど、何回か読みました」

「今は枕草子読んだりします」

と無難な答え。


加奈子

「そうかあ、さすがやなあ」

と頷くけれど、

史の表情が少し変わった。


「それでね、昨日孝叔父さんの家に泊まったんだけど」

「父さんが使っていた部屋に、源氏とか古文の本が壁にズラリ」

ただ、少し顔を曇らせている。


愛華は首をかしげた。

「そうやね、晃さんの部屋なんやから、ある意味当然なんやけど?」

加奈子も

「うん、史君、何か感じたの?」

同じように首を傾げる。


史は、少し難しい顔のまま

「古文ばかりじゃなくて、違う勉強をしたくなったんだ」

「ああ、音楽じゃないよ」

そこまで言って、次の言葉をためらっている。

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