第294話史の京都散歩(17)
史は、加奈子の顔をキョトンとして見る。
何しろ、昨晩の話では「用事がある」と言っていたから。
すると、加奈子が史に、ヒソヒソ。
「なあ、史君、由紀ちゃんがな、愛華ちゃんと二人きりにするのはダメというからな」
「お邪魔虫かもしれんけど」
とにかく申し訳無さそうな顔をする。
史は「そうか、姉貴に何か言われたのかな」と思ったけれど、深く聞いても仕方がないと思った。
ここで「深く聞いても」、家に帰れば由紀から「かなりなお叱り」があるとわかっていたから。
それでも由紀から、「里奈のこと」が言われていたかは気になる。
ただ、なかなか加奈子とか愛華の前では言いづらい。
それに、こっちか「あえていうことではない」と自制する。
そこまで考えて、少しお茶を飲んでから、孝と彰子には十分お礼を言って、お屋敷を出た。
そして出迎えの時と同じ、黒ベンツに乗りこみ
史
「さて、和菓子の軽いのをまとめ買いしようかなと思っています」
「荷物も多くなると大変なので」
と言うと
愛華
「うーん、そうやなあ、軽くてと言うのなら、干菓子が一番軽いかなあ」
加奈子も同意する。
「そやな、史君もお土産を買って帰る先が多そうやから」
しかし、加奈子の言い方は、少し含みがある。
史が
「干菓子を先に買って、その後、少し散歩します」
「家には夕方までに帰ればいいので」
すると愛華
「そしたらまず、干菓子の老舗案内するわ、そこでお買い物をして」
「あとは、円山公園とか知恩院とか八坂の周りでどうやろ」
加奈子
「ああ、お昼も予約しておくわ」
と、スンナリと話が進む。
史としては、久々の京都。
さすが、地元の人の意見を尊重しようと思った。
それからは和菓子の老舗で、まとめ買い。
ただ結局、いろんなお菓子を買い込んでしまい、大きな荷物になったので、家に直接持ち帰る以外は、宅配便になった。
加奈子
「なあ、史君、荷物はトランクに積んどいて」
となったので、ほぼ手ぶらで八坂神社、円山公園、知恩院などを、三人でブラブラと散歩。
史
「けっこう着物を着ている人が多いね」
とつぶやくと
愛華
「ああ、でもな、ほとんど外国人の人とか、日本人でも観光客かな」
加奈子も
「そやね、着物に憧れとる人かな」
ただ、最初は「ある程度離れていた」愛華が、少しずつ史に近づいてくる。
史は少し焦るけれど、愛華の近寄りは、ますます・・・の状態になっている。
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