第293話史の京都散歩(16)
姉の由紀に叱られ続け、史はヘキエキとなったけれど、今さら愛華とのお土産ショッピングを断ることもできない。
史
「おそらく和菓子屋さんで、同じものをたくさん買って帰る」
「人によって区別して買うのは面倒」
「愛華ちゃんには、礼は尽くします」
と言って、由紀との電話を終えた。
それからお風呂に入って、ベッドに横になった。
やはり疲れていたのか、横になったら「完全グッスリ」、朝食の時間のギリギリ七時まで眠ってしまった。
それでも、お腹が空いた。
着替えて一階に降りると、孝と彰子がすでに食卓についている。
史が
「あ、おはようございます」
と、頭を下げると、孝も彰子もうれしそうな顔。
孝
「ああ、本当にご苦労さん、しっかり食べていって」
彰子も
「美智子さんとかマスターの料理にはかなわんけど」
と言いながらも、食卓の上には京料理がたくさん並んでいる。
史も美味しいのか、食が進む。
「美味しいです、煮物とか、お米も」
それを聞いて彰子もホッとした顔。
「あら、安心したわ、マスターから史君の味覚は聞いていたから、心配やったもの」
史は
「ああ、いえいえ、こっちの味も大好きです」
「関東は関東なりに好きですけれど」
と無難な答え。
そんな感じで食事が進み、孝から話があった。
孝
「なあ、史君、マスターと涼子さん、祥子ちゃんの披露宴なんやけどな」
史も、そういえばと、思い出した。
「はい、まず横浜のホテルで一回目の結婚式と披露宴をして、京都でも披露宴をするんですよね」
孝は、少し考えて
「横浜でも史君は演奏とか頼まれとると思うけれど」
史も察した。
「はい、こっちでも演奏ですか」
孝
「なあ、頼むよ」
史も素直に頷く。
「わかりました、姉と加奈子ちゃんとも相談して」
その言葉で孝もホッとした顔になる。
彰子もうれしそうな顔になる。
「わぁ、マスターも涼子さんも、祥子ちゃんも喜ぶわぁ」
「記念になるなあ」
・・・・・・・
その後はカフェ・ルミエールの話や楽団の話が続き、お屋敷の庭を散歩したりした。
史としては、京都滞在中の数少ないリラックスの時間となった。
さて、史が広い庭から戻った直後、玄関のベルが鳴った。
インタフォンから、
「おはようございます、愛華です」
と聞こえてきた。
彰子が
「あらあら、早いなあ、まだ九時やのに」
と扉を開けている。
史も玄関に出ると、確かに愛華が立っている。
そしてなぜか「用事があるはず」の加奈子も立っている。
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