第243話史と里奈の横浜デート(5)
大騒ぎとなった史と里奈は、ホテルマンたちに誘導されるかのように、レストランに入った。
そしてレストランに入っても、レストランの中にいるホテルマンや厨房の料理人達が、史と里奈に挨拶に来る。
「美智子さんから連絡があってね、とびきりのをって」
「しっかり食べていってね」
「中華街で栗も食べられないほど食べさせるかな」
「マスターにもよろしくいってくれ」
「産まれて落ち着いたら、遊びに来てほしいなあ」
・・・・いろいろ話しかけられるものだから、本当に落ち着かない。
マスターの後輩になるシェフも出てきた。
「史君、待っていた」
ニッコリと笑う。
そして何か話があるようだ。
シェフ
「せっかく史君が来るという話だから、少し新しいソースををさ」
笑顔から、まともな顔になった。
史
「そうなると、味見ですか?」
シェフ
「うん、味覚は美智子さん以上だしね、マスターも洋子さんも感心している」
史
「うーん・・・シェフを信じます」
それでも、ニッコリと笑って承諾する。
シェフも満面の笑顔で、里奈にも頭を下げて、厨房に戻っていった。
やっと二人きりになった史と里奈はホッとしている。
史
「ごめんね、やかましくて」
里奈に頭を下げる。
里奈
「いいの、史君、どこでも人気があって」
「でも、彼女って言ってくれたから、それがうれしい」
里奈は、まだ顔が赤い。
史
「ごめんなさいは、もう一つかな」
里奈
「え?何かあるの?」
史
「おそらくステーキのソースを少し変えると思うけれど」
里奈
「うん」
史
「僕は伝統的なソースが好きなんだ」
里奈
「ふふん、コダワリの史君だ」
と、そういえば「頑固者の史」と由紀が言っていたことを思い出している。
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