第232話悩みこむ史(11)

マスター以下、カフェ・ルミエールの一同が史の家に入ると、史は顔を赤らめて出てきた。

「わざわざ、申し訳ありません」

「ご心配をおかけしまして」

ここでも、キチンと頭を下げる。


母の美智子は、マスターたちの御見舞にお礼を言った後、話しだした。

「うん、今回ばかりは、この子を責められない」

「最初の交通事故の対応は、マスターが動いてくれて、泣き寝入りにならなかった」

「次の柔道部は、腹が立ったけれど、里奈ちゃんが懸命にフォローをしてくれたから、それに免じた」

「でもね、これで三回目だもの」

「この子が何をしたっていうの?」

まだ、少し難しい顔をしている。


マスターも

「うーん・・・確かに史君は、何も悪いことはしていない」

「美智子さんが、心配になるのは当たり前だと思う」

腕を組んで考えている。


洋子は

「史君、痛みは残っている?」

史の両手首を心配している。


「はい、幸い骨には何ともなくて、指は動きます」

「痛みは鎮痛剤と湿布でおさまっています」

「腫れも、踏まれた日よりは、少なくなってきました」


その史の答えに、全員がホッとした顔になる。


奈津美は

「ごめんね、史君、悩みを聞いてあげられなくて」

涙ぐんでいる。

結衣は

「史君も大変な時があれば、相談してね、心配でしかたがない」

彩も

「早く元気になって、いろいろ教えてね」

美幸からは

「私たち女の子が、交代で病院の送り迎えしようかって、相談していたの」

そんな声が、いろいろとかけられる。


史は

「えっと、歩けるから、足首じゃないんで」

恥ずかしそうに尻込みをする。

母美智子も

「そこまでは、ちょっと・・・」

と、そんな表情になる。


マスターは、少し笑っている。

「美智子さん、素直に送り迎えさせてあげてよ」

「この史君は、カフェ・ルミエールの大切なメンバーなんだ」

「それに、この女の子たちの、大切な家族なんだ」


史は、うれしそうな顔になる。

母美智子は、首を傾げる。

どうにも、史の人気をまだ信じていない。


突然、洋子がマスターに向かって

「あの・・・私も送り迎えグループに入るけどさ」

「ということは、私も女の子と・・・うんうん」

ちょっと、ニンマリしている。


・・・しかし・・・


美智子

「・・・それは・・・変・・・」

奈津美

「コメントできない」

結衣

「師匠でも譲れないことがある」

「ここで揉めるのも何だから」

美幸

「でも、洋子さん、顔が赤くなっています」


ということで、洋子は「女の子グループ」とされたのである。


史は、久しぶりに少し笑っている。


ただ、美智子は

「ふむ・・・この子は、女難の相もあるのか・・・」

違う問題を把握している。

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