第233話光あるものの影

マスターたちは、史の御見舞の後、カフェ・ルミエールに戻った。

奈津美が珈琲を淹れ、様々な話になる。


洋子

「それにしても、史君は転校するのかな」

奈津美

「今、転校するっていってもねえ・・・」

結衣

「お母さんのお怒りも、よくわかる、私だって自分の子供が何度もそうなれば、そういうこと言う」

「嘆く人も多くなるね、学園の中も地域の人も」

美幸

「しかし、史君はトラブルが多いなあ、どうしてかなあ」


マスターがそこでポツリ。

「つまりね、光あるものには、必ず反発する人が出てくる」

「嫉みだね、昔からそうなんだ」


洋子は

「何とかして貶めたい人も出てくるのかな」

「桐壷、光源氏vs弘徽殿女御か」


奈津美

「史君の家で決めることだけど、他所の学校に行ってもらいたくないなあ」

「また、そこで新しい人間関係とか作るの大変だから」

結衣

「うーん・・・万が一・・・」

顔を曇らせる。

彩も結衣の考えをわかったようだ。

「もしかして、京都?」

美幸は不安な顔になる。

「やだ、寂しい、史君がいないと」


そんな暗い話をしていると、由紀が店に入ってきた。


由紀は

「史は、学園に残るって言い切った」

「母美智子は、転校しろって言ったけれど」

「史は、何でも途中で投げ出すとか、逃げるのは良くないって」

「史は、時々アホと思うくらいに、頑固なの」


そしてマスターの顔を見た。

由紀は、本当に困った顔をしている。

マスターも、何となくわかったようだ。

マスター

「大旦那のことかい?」


由紀

「うん、母美智子が、史の考えを聞かないで、勝手に大旦那に相談したみたい」

「大旦那はお怒りで、校長も理事長も担任も解任だって、大騒ぎ」

「それから史を京都で育てるって言い張っている」

「もう、私じゃ、どうにもならない」

「父さんも、京都に行かせたいみたい」

由紀は、涙があふれている。


「史と離れたくないよ、こんな形で」

「寂しいもの」

おそらく家の中では、誰にも言えなかったのだと思う。

由紀は大泣きになってしまった。

その由紀を、洋子が抱きかかえた。


マスター

「うん、わかった」

「俺が何とかする」

「由紀ちゃんに泣かれては、たまらない」


マスターは立ち上がった。

そして

「大旦那のところへ」

「史君は、途中で俺が呼び出す」


そして店を出ていった。


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