第226話悩みこむ史(5)
由紀と里奈は、校長室に入った。
入ってみると、昼休みに話をした山下麻衣ともう一人の新聞部の部長の坂本佳彦が、既に校長室に座っている。
由紀の言葉通り、史の担任は校長が呼び、すぐに校長室に入ってきた。
由紀
「すみません、校長先生、こんな話で」
と、新聞部の山下麻衣から聞いた通りの話を校長と担任に説明をする。
新聞部部長の坂本も、ウンウンと頷いている。
校長は
「うーん・・・一応山下さんだけではなくて、他の部員の証言も必要だったので坂本君には来てもらったのだけれど、どうやら事実らしいねえ」
難しい顔になって腕を組んだ。
史の担任も
「私も時々、史君が放課後にすごく暗い顔になっているので、気にはしていたんですけれど」
「そういえば、すごく分厚い英字の本とか、抱えていましたね、あれも翻訳させられたのかなあ」
難しい顔になっている。
校長は
「ただね、この話が難しいのは、稲葉先生の考えを確認しないと」
「確かに皮肉とかイビリとかは、よろしくない行為だけど」
「史君は、もともと新聞部員、学外のコンサート出演よりは自らの部活動を優先するのも一理ある」
「ただ、史君の学外コンサート出演については、校長も認めていることは、彼も知っている、だから彼の意図を聞かないといけない」
「これには何かあるなあ・・・あいつは変に嫉妬深いから」
担任が少し反発気味に話しだした。
「校長先生、稲葉先生はコンサートの日付を聞いて、わざわざ、その日に本来は他の人が担当のテニス部の取材を当てたという話なんです」
「学園内でも地域でも、史君の演奏を期待する人も、すごく多いんです」
「こんな話が学外に広がったら、何と狭量な学園ということで、学園自体の評判も落ちますよ」
「それでも、校長先生は仕方ないとおっしゃるんですか?」
校長は珍しく反発してくる史の担任に驚いている。
新聞部部長の坂本が口を開いた。
「あの・・・テニス部に聞いたんですが」
首をかしげている。
そして続けた。
「単なる新人戦なので、他の学園とか高校は全く取材なんか来ないって」
「それにテニス部の取材は、最近あったばかりです」
「稲葉先生は、どうしてそんなことを言うのかと不思議がっていました」
そんな話を校長室でしていると、緊急の内線連絡が入った。
校長が内線連絡を取ると
「え?稲葉先生が、史君に大カンシャク?」
「とんでもないこと?」
「うん!」
「すぐに行く!」
校長室内は、緊張に包まれている。
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