第178話彩とデート?(完)
煉瓦亭での昼食後は、当初の目的である涼子の出産祝い探しになる。
史が「近くの三越」と言うので、彩も反論はない。
10階まで、エレベーターでのぼり、出産祝いの品を選ぶ。
史は、くるくる回る音楽付きの「ベッドメリー」という玩具。
彩は、少し迷ったけれど、大きめの熊のぬいぐるみ。
両方とも大きいので、即座に車に積み込む。
「ありがとうございました、すんなり決まりました」
史が、キチンと頭を下げてお礼をしてくるものだから、彩もかなりうれしい。
「いえいえ、美味しいお店、料理人としても勉強になるお店も紹介してもらって」
彩も史にお礼を言う。
その後は、七丁目のヤマハまで歩き、史が少しピアノを弾いたり、また近くの虎屋により、羊羹を何本か買っている。
ただ、この時点で彩は、史に完全に主導権を握られている。
「ほんと・・・銀座詳しいなあ」
「行く店行く店、超名店ばかり」
「これは、育ちかな」
「最初のお香のお店といい・・・」
彩は、そこまで思った時点で、ちょっと気になることを思い出した。
彩
「史君、お香の店で、アロマオイルをたくさん買っていたけれど、史君だけが使うの?」
史
「えっと、洋子さんと、里奈ちゃんにも」
スンナリと答えてくる。
史は言葉を続けた。
「それから羊羹は、涼子さんと奈津美さん、結衣さん」
彩
「マジ?・・・私のことではなく、他の女どものこと考えていたの?」
「うー・・・私は運転手?」
彩の耳には、心なしか「他の女どもの高笑い」まで聞こえてくる。
それでも
「まあ、しょうがない、お母さんと由紀ちゃんにも何か買っていったら?」
一応、年上のアドバイスを施す。
それを聞いた史
「え?あの二人?」
「木村屋のアンパンで十分」
ということになり、それでも気を使った彩が、「私からも美智子さんと由紀ちゃんに」で木村屋で様々なパンを買った。
ただ、荷物も大量で帰ることになってしまった。
そして、車に乗り込むと、史も疲れてしまったようだ。
すぐに眠ってしまった。
「これじゃあ・・・何もできない」
「・・・って何するの?」
「うーーー白い肌、しっとりだ」
彩は助手席の史を見て、ドキドキはするものの、結局何もできなかった。
「まあ、今日は初回だ」
「次は・・・」
その言葉だけが、彩を支えていた。
(完)
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