第164話カフェ・ルミエール楽団演奏会(10)

さて、開演前のちょっとした騒動は、史と里奈が楽屋に入ったたので、一応落ち着いた。

ただ、落ち着いたといっても、母美智子はまだオロオロ状態が続いている。

美智子

「ねえ、何?何で史なんかにあんな声がかかるの?」

「おかしいって!心配だよ!」

「その上、ソリストで皇帝?ねえ、落ち着かないって!」

・・・・同じことの堂々めぐりなので省略。

そんな母美智子に由紀は呆れている。

「あのさ、学園にいけば、こんなの毎日だって」

「私だって気に入らないけれど、しょうがないじゃない!」

奥様はクスクス笑う。

「自分の息子を信じなさい。あれで史君はけっこう芯が強いし本番には強いから」

御大はどっしり構えている。

「ああ、そんなことより、しっかり応援しなさい、親がオタオタしてどうするんだ」

さて、そんな会話の中、地下ホールの客席は地域の自治会長をはじめとした地域住民も入ってきて、完全に満員、立ち見も出ている。


マスターと涼子、美幸、洋子、奈津美、結衣、彩も顔を出したけれど、客席には座らないようだ。

そのまま楽屋に入っていく。

「ああ、飲み物とかちょっとしたお菓子をね」マスター

「というか史君がちょっと心配」

涼子は大きくなったお腹をさすりながらも、少し不安顔。

洋子もドキドキ感が顔に出ている。

「うーーー自分のことより心配、美智子さんの気持がよくわかる」

奈津美もそんな感じ。

「史君のことだから大丈夫とは思うけれどねえ・・・終わるまでは」

結衣は胸をずっと抑えている。

「こればかりは代わってあげられないしねえ、ドキドキする・・・」

彩は少し顔が青い。

「もうね、史君が心配でさ、食事も喉を通らないの・・・ああ、大丈夫かなあ」


さて、そんなカフェ・ルミエールの集団が楽屋に入っていくと、楽団員全員が笑顔で迎える。

「それでは、差し入れです」

マスターの指示で、マカロンとか小さな焼菓子を、カフェ・ルミエールの集団で配っていると、史と里奈が飛び出してきた。


「あ!僕が配ります!」史

「私も協力します!」里奈


洋子は、そんな史と里奈を押しとどめる。

「今は演奏に集中しなさい」

「終わったら、お店においで、飛び切りのケーキを焼いてあるよ」


洋子の言葉で、史と里奈の顔がパッと輝いている。

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