第121話里奈にライバル出現(3)

史の食欲も減ったけれど、里奈も目に見えて元気がない。

ただ、史としては恵梨香のアタックについては「何で?」という類のもの。

それが面倒なだけではあるけれど、引っ込み思案な性格のため、恵梨香にはっきりと拒絶反応が出来ない。

「何しろ、同じクラスだし、合唱部のコンクールも近いし、もめ事も面倒だ」

そんな言い訳もある。


里奈としては、

「恵梨香ちゃんだと、私、自信ない」

「私は汗臭い柔道部だし、スタイルだって筋肉系」

「音楽も源氏も恵梨香ちゃんには、かなわないもの」

「史君・・・私が身を引いた方がいいの?」

「でも、そんなこと言えない」

「私だって、史君、離したくないもの」

そんな、堂々巡りの中にいて、柔道部の練習さえ、ままならない。


そんな里奈の様子は、他の柔道部員、特に美佳には気に入らないようだ。

「あのさ!里奈!」

「史君を好きなんでしょ?」

「私だって好きだけどさ、里奈とせっかく仲良くなったんだから、我慢しているだけだよ」

「それを何?」

「史君のやさしすぎる性格、わかっているでしょ?」

「里奈が、グズグズしていれば、史君、ますます悩むよ」


里奈は、美佳と乱取りをしながら、それでも悩んでいる。

「だって、どうしたらいいのか、わかりません」

「相手は恵梨香ですって」

「私なんか・・・」


と・・・その瞬間、里奈の身体が宙に浮く。

そして、畳に背中から、叩きつけられる。


「このアホ!」

美佳は里奈を投げ飛ばし、思いっきり叱責。

「好きだったら浮ついているんじゃない!」

「誰が辛い時の史君を支えてきたの!」

「寒い日も雨の日も、暑い日も風の日も、毎日送り迎えしたんでしょ?」

「みんな里奈の気持と努力を認めているから、身を引いたの!」

「今さら、恵梨香なんかに取られてどうするんだい!」


里奈は、とうとう泣き出してしまった。




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