第4話『ホットライン』
強襲型偵察機体:RBYF-19E 大輪
これが俺の名前である。
「ポッド達・・・道に迷うんじゃないぞ」
ナデナデ
通信索敵ポッドとはいえ自分で手入れしてエラーチェックから動作確認もしたし、たまに一緒に寝て---整備に任せっきりの奴らは知らないが---いればやはり愛着が湧く。
「前の番号とはぐれるなよ」
ポイッ
ポッド達は自己隠蔽し、通信妨害の中でも阻害され難いレーザー通信網を互いに構築する。
「橋頭堡はあっちだぞ」
ポイッポイッポイッ!
途切れ途切れの味方通信の中に、自軍橋頭堡の座標も含まれていた。ポッドの終端到達点をそこに設定する。
馬鹿みたいな量の散乱膜と煙幕と戦塵によって、地表から衛星上への通信はレーザー通信でさえも阻まれるが、拠点までの通信網を構築できれば、専門の通信班が数と出力に物を言わせて”無理やり”衛星軌道まで通信を上げてくれる。
偵察機としては一安心だ。
まあ以前一度聞いたところ『無理矢理ではない』と、説いてはいたが・・・。
【索敵情報機:CYC-25 サイクロン曰く
『無理矢理ではない。
ウォッチャーに見つからぬよう隠蔽に超気を使ったり、ダミー通信筒を超山のように撒いたり、位置バレ覚悟の超大出力レーザーで通信を通したりするのだ。
そりゃ最終手段として撹乱雲---レーザー通信撹乱幕等が雲となったもの---に、プラズマクラスターで通信窓を開けまくって、通信を通したらこっちの位置がバレる前に速攻で逃げたりもする。
だが、決して無理矢理ではない。キチンとした道理のもとに行っているのだ』
】
とのこと。
その後、最新の通信マニュアルをワンセットと、レーザーレンズ磨きを頂いた。
気配りのできるお姉さんであった。
「ええと」
次々と入る索敵情報を、取捨選択などせずポッドに詰めてはばら撒く。
ポッドは、電波でも近場の機体に索敵内容を発信できるが、発見され破壊されると悲しいため、電波通信は基本最終手段である。
だがまあ僚機にも情報を流す必要が有るため、それ用の電波スピーカーポッドも適度な間隔で撒いてゆく。
これはただ単に、暗号化した情報を大出力でがなりたてて、周囲の味方に教えるだけのいわば立て看板であり・・・だいたいすぐに破壊される。
諸行無常である。
情報を受け取った僚機も、それを自前のレーザーや電波や通信ポッドやらで通信を続け、最終的には軌道上の戦術機まで、リレー形式で伝達されるのである。
そして、通信妨害、その他情報の断片化など、障害物リレーを走り抜けた結果伝達される内容は
「A58に空の鍋が2つ」(注:暗号解除済み)
「FULL行けや かわす 飛び込む ミスノット」(注:暗号解除済み)
「C20に敵拠点」(注:暗号解除済み)
等の、怪文書となって飛び交うことになる。
素敵な戦場過ぎないだろうか。
・・・・・・。
だが、それらの情報も全て突きあわせられ、そこから確実な情報を洗い出すのも戦術機の仕事である。
その際に吟味による多少の遅延は起こるが、索敵隊の残す情報は無駄になることはない。
そして『戦術機』は軌道上に隠れ潜み、戦場から上がった情報を直接検分し、指揮を---通信系等が使えればだが---行う。
機体の大半を占める情報処理専用電脳で、索敵部隊から得られた情報に評価・検証を加え、敵陣の内容どころかその意図までもつまびらかにする恐るべき機体である。・・・通信網が完調なら、という注釈がつくが。
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