SF『自己鍛造弾頭』

壱りっとる

第一章『日常』

第1話『トリガーハッピー』

 連続するEMPパルス。

 真空中に大量のダミーと一緒に機嫌よく飛び出して、目標惑星地表への強襲を開始する。


「見える、俺にも敵が見えるぞ!」


「・・・・・・5割ぐらいは残るかね」


「ハヴォック神よ、我を守り給え」


「当たるなつってるだろー!!ボケー!」


 皆が、口々に好き勝手なことを言ってる・・・様子が、目の前にあるが如く予測できる。

 そう、EMPパルスの雨の中では電波が聞こえてるわけでもない。

只の予測である。


 破壊的な通信妨害によりどんな通信も届かないが、お陰で誰もが理不尽な思考を幾らでも叫び散らせるのが戦場の通例となっている。

 この部分だけは強襲降下も楽しいと思う。

・・・まあ、それぐらいしか楽しみはないんだが。


 そもそも気圏投入強襲作戦なんぞ、投入された数の6割が取り付ければ良い方であり、今みたいに『敵に察知されていて』『宙域からの支援がなくて』『地上観測データまで怪しい』となれば、その達成数たるや・・・考えるだに恐ろしい。


 予測ソフトからは


-投入成功率、3割5分ぐらいです^^-


 と答えが帰っている。

 無慈悲である。

 「降下成功が5割程度」と甘く見ていた架空の戦友は大丈夫であろうか・・・。


「と、」


 そうこう言っているうちに大気圏上層部、熱の壁とのランデブーである。

圧縮された大気層が無数のダミーと本隊を押し潰す。


 そこは地上の迎撃隊から撃ち頃になる距離であり、こちらも大気圏投入のために先手を打って攻撃を開始する。


 先方部隊と攻性ダミーの群れが親弾子弾・電磁波撹乱弾・熱源欺瞞弾・気圏突破貫徹弾・・・等々、電磁パルスでは潰しきれない熱・光学観測までも怒涛の質量投入で飽和させようとする。


「さて・・・んん?」


 その最も危険な投入タイミングに入る一瞬前。

飛び交う撹乱膜や砲火でヘタりきった光学観測装置の端に、ほんの少し気になった光がある。


 予想分布図からは大幅にずれた地点である。

 反射物や電磁波を噛みこんだ廃品~ ジャンク ~の光だとは思うが、何かが燃えた色でもなく、連続して反射するわけでもなく一度で消えたのが気に掛かる。


「まあ一応は解析にかけてと。伏兵が潜んでるだけならいいんだがなあ」


system

-光学映像解析開始-


system

-光学映像解析完了-


「おお、よし。・・・観測結果の分析終了、結果は・・・うわっ」


 20%ほどの確率で『砲撃準備のために空けたコンシールの隙間から、傷でも付いていた部品が電磁パルスを食らい火花を吹いた閃光かも』という事らしい。


 確かに周囲の観測データには同様の発光は無い。

 疑いの度合いを上げる。 


『E25K地点に有効な陣地を補足』


 身近な味方に通信を送る。


 線・磁・波ありとあらゆるものが妨害・撹乱・幻惑されている最中で放った

近距離通信系が、一体どれだけの機体に情報を伝え得たかは知らないが連絡は終わる。


 降下部隊の内の3割は当初目標陣地よりも、新たに発見される障害の排除の方を優先任務に設定されている。

 そいつらの何機かにでも通信できたことを祈ろう。


 全隊一斉攻撃。


「カウントダウン5.4.3.2.1.E25Kへアタック」


 記録に残すために呟き、対地ミサイルを40放出。

 どんどん砕けるダミー群も、熱波と衝撃に揉まれる味方達も、一斉に大量のミサイルをバラ撒いて、敵の攻撃を吸い付ける。


 皆で一緒に被害を分割しよう。そうしよう。


「反撃が来ませんように」


 攻撃が当たってくれとは言わない。

 目標地点の確定したミサイルが外れるのは、整備不良か迎撃された時だけだである。


 これだけの飽和攻撃なら、立派な成果を出すであろう。

 だからそんな事はいい。


『ハヴォック神よ我を守り給え・・・』

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