異世界で流れ星を見る

みちる

第1話 転移

「ここはいったいどこ?」


自分の疑問に答えてくれる人が回りにいないと分かっていても言葉に出して見ると少しは状況が変わるかもと思ったんだが、状況は変わらず俺は森の中に一人たたずんでいる。

 仕事中の急な立ち眩み、健康には人一倍気をつかい、健康診断でも結果は常に最良だった俺を襲った立ち眩み、その数秒の無意識から覚醒したら森の中。

 これ、俗に言う異世界転移か?

 友からラノベやらゲームとかアニメとか勧められた時、どんな知識も知っているのと知らないとではいざというとき困ると無下に扱わないで良かった、おかげでこんな状況でも頭が回るよ。

 どんな状況かって、ラノベ風に答えるとこんな感じだろうか。



 生を受け早32年、私、たき 流星りゅうせいは異世界に迷いこみました、でいいのかな。






 まず現状を把握しないとね、問題点を上げていこう。

 一つ、知らない森の中、少々の勾配こうばいがあり、平地までの距離は不明、見えない。しかも夕方だろうか、このままだと夜の森で一夜明かすことになる。

 二つ、体が痛い、打撲に数ヶ所骨折れてるし、なにより右眼の視力がなくなっている、ってこれはもとから完全に見えない。

 三つ……ガサガサ、と草木を鳴らす音のほうに目を向けるとなんだろ、これ。赤い色の熊らしき生物、いやこれもう熊だ、熊でいいだろもう、命名赤熊。


「ガルルル……!!」


 威嚇、これエサだと思われているのではなく赤熊(仮)の縄張りに侵入した外敵だと思われてる、敵意はんぱない。

 さて体はボロボロ、敵は未知の生物。『相棒』も手元にないし、転移前に持っていたから近くに転がっていると思う、お願い……。


「ガルァァァァ!」


 小動物ならすくんでしまいそうな咆哮あげながら突進してくる赤熊、その程度で動けなくなるほど柔な鍛え方はしてない。


「ふっ!!」

「ガウァ!?」

 

 赤熊の突進する勢いに呼吸を合わせて肩に蹴りを叩きこみ、その反動を利用し空中で反転し踵落としを首に決めるが、しかし……分厚いタイヤを蹴った感触、これは効いていない。

赤熊も反撃に驚いただけでダメージはほぼゼロ。

 まぁ、地球産の熊も似たようなもので打撃は効かないので打撃が効かないなら他にもやりようはあるんだけど。


「ガルァ!」


 赤熊との間合いを詰め、簡単に俺を引き裂けるであろう爪をかわしながらカウンターを右の抜き手で赤熊の口に叩きこみ牙を掴む。

牙を掴んだら赤熊の頭に左手を置き逆立ちをするように振り子運動の勢いでぐるんっ、と。


「よいしょっと!!」

「ガペッ!?」


 これで戦闘終了。俺の前には頭がねじれ、背をむくように顔がある熊が横たわっている。

最後の鳴き声が少し変だったが俺の勝利だ。

もう近くにもう気配はないから少し休める、赤熊との戦いで身体の状態が見事に悪化したし、少しだけ仮眠をとるか、あー疲れた。




 起きたら赤熊を解体して食料にでも……この熊食えるよな?



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