(悪夢1)
悪夢を見ている。そう感じている。
日没。
太陽は地平線の彼方へと姿を消して、辺りはその残滓が漂っている。薄暗いというのに、黄金色の小麦畑が風にさざなみを立てる景色は、不思議とよく理解していた。
黄金色の景色が続いている。風に穂が揺れて、まるで金の海に波が渡るようだ。
その中にボクは立ち、黙って山の方を見詰めている。
こんなにも美しいのにまやかしであるのは、なんて残酷なのだろう。
(その石、キレイだな)
隣に少年が立っている。浅黒い肌。
ボクはいつかそうしたように、右の掌に小さな赤い宝石を乗せて差し出した。
(どこで手に入れたんだ?)
(ちょっと見せて)
(オレの宝も見せてやるよ)
たどたどしい言葉だというのに、母国語のように、スラスラと耳に入ってくる。
ボクはなにかを話した。
どんな言葉を口に出しているのかはわからない。。
意味不明なような気がしたが、それは些細なことだった。なにかを話していることが大事だったのだ。
相手もわかってくれたのだろう。嬉しそうに顔をほころばせた。
すると白い歯がこぼれ、浅黒い肌とのコントラストが美しく映えた。
(友だち、トモダチ)
トモダチ、トモダチ。
次第に風景が流転していく。
ボクはなんだかとても懐かしく、なんだか涙が出そうになった。
なのに、それは醒めれば悪夢でしかないことを、僅かに残る理性がそう告げていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます