第11話 金沢基地防衛戦

 

 敵の部隊は既に金沢基地への攻撃を開始していた。


『敵の戦闘機兵は全部で3機。うち1機は改造され、性能が他より高いようです』


 モニターから北川さんの声が聞こえる。


『......トールはイレギュラーを、ヘルは通常機2機をそれぞれ殲滅せよ』


『『了解』』


 北川さんの通信を聞いた神奈川の司令部から出た指示に、北川さんともう1人女の人の声が答えた。

 女の人の声はおそらくヘルのパイロットだろう。


 現場ではイレギュラーと言われた改造機が大きな斧を高く振り上げて、金沢基地の司令塔に向かって今にも振り下ろそうとしている。

 そこに横からトールが飛んできた勢いそのままに肩をぶつけると、イレギュラーはバウンドしながら吹っ飛んでいく。


『......飛べるのか』


 トールの不意打ちに2回地面を跳ねたイレギュラーは、体制を整え宙に浮いている。

 イレギュラーには飛行ユニットが付いていないので、本来ならば飛べるはずがないのだ。


『イレギュラー......か......』


 イレギュラーに向き合う形でトールも宙に浮き、背中からハンマーを取って構える。


「............」


 場を静寂が支配する。


 次の瞬間、2つの機体が同時に動き出す......!


 斧とハンマーが組み合った場所からギリギリと火花が飛び金属音が鳴った。

 力の強さではオリジナル機であるトールの方が上回っているのか、トールはハンマーを振り払う。

 イレギュラーはそれを後ろに下がり避け、左手で腰からグレネードのようなものを取り出し、トール目掛けて投げつける。


『......くっ』


 至近距離で投げられたトールは避けることも出来ず、グレネードが破裂し、左肩にあった装甲が粉々に砕け散った。


『これは一筋縄じゃいかないな......』


 北川さんがボソッと呟いた。


 グレネードの煙が風に流れると、またしても2つの機体は睨み合う。

 一瞬の判断の連続を制した方に軍配は上がる。


 最初に動いたのはイレギュラーの方だった。

 今度は銃を取り出し、連射する。


 トールはそれをハンマーで防ぎ、そのままイレギュラー目掛けて突進してゆくが、イレギュラーは銃を捨て、斧で受け止める。


 どちらも一歩も譲らない激しい攻防戦が続いた。


 戦況が動き出したのは本当に一瞬の判断の事だった。


 再び組み合ったトールはエンジンをフルスロットルにして地面にイレギュラーを叩きつける。

 砂埃が激しく舞い、イレギュラーは出てこない。


『............やったか......』


 その時......砂埃の中から細くて長いものが飛んで来た。


 それはトールの機体の右肩を貫いていった。


『ビームソードを投げたのか......!』


 砂埃の間から機体全体が赤く光っているイレギュラーの姿が見えた。


 見えていたはずのイレギュラーが視界から消える......


 次にイレギュラーの姿を目視した時には既にトールの上に移動していた。


『速すぎるだろ......』


 トールの上に現れたイレギュラーはその大きな斧でトールを地面へと叩き落とす。


『......くそっ......ダメージが大きすぎる......』


 操縦席では警告音がなり、北川さんがいろいろとボタンをいじっている。

 ダメージが大きかった左腕は落下の衝撃で、右腕はビームソードが貫き、両腕が動かなくなってしまったようだ。


 動けないトールの上にイレギュラーが降り立ち、斧を振り上げる。


『......ここまでか............』


 北川さんが覚悟を決めた時、イレギュラーの体が真っ二つに割れて横にずれ落ちる。


『......夏鈴!』


 真っ二つになったイレギュラーの後ろにヘルが機体と同じくらい大きなカマを持って立っている。

 カマはビームソードと同じく、粒子の高速振動によって作り出されるものだ。


『オリジナルでもない機体に手こずり過ぎ......』


 夏鈴と呼ばれた女の人の少し低い声だ。

 どうやら量産機2機を倒して助けに来たらしい。


 モニターを見ていた生徒達はさっきまでの緊迫した空気から一変して、安堵の表情と声を漏らしている。


 その後、遅れて来たジュピター隊によってゲリラは鎮圧されて、北川さんを含める神奈川基地応援部隊は無事に戻って来た。


「みんな......不甲斐ない姿を見せてしまってごめんね」


 俺達のいるモニタールームに北川さんが入って来た。


「......これが戦闘機兵のパイロットになるという事だよ。今回は夏鈴の......ヘルのパイロットのおかげで助かったけど、この仕事はいつ死んでもおかしくないんだ......」


 そう言った北川さんは悲しそうに俯いた。

 俺達の頭では想像出来ないほどの修羅場をくぐり抜け、その中で知り合いが目の前で死んでしまうこともあったのだろう。


 そうして俺達の基地見学は終わり、学校へ帰る為のバスに乗った。


 ゲリラは第三次世界大戦で、家族を失った人達が集まって結成され、戦闘機兵は壊れて戦場に放棄されていたものを直したらしい。

 改造機に関しては、どれだけ問いただしても放棄されていたものを使ったの一点張りだったそうだ。


 今回の基地見学とゲリラの騒動は生徒達に大きな影響を与えた。

 それぞれ思うところがあったらしく、帰りのバスで話す人はいなかった。

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