蒼の知恵者は自重しない

ヘルパーTさいぼう

第1話 困惑する喪服の男


「さてさてどーしたもんかねじーさんよ......」

「だからその呼び方をやめいと言っておろうが小僧よ」

「しかしほんとにどうしたものかのぉ流石のわしもこのような状況経験ないからのぉ」

「まーだろうな」

「あとじいさん俺の名前は木桜悠であって小僧じゃないからそこんとこよろしく」

「小僧がわしの呼び方を改めたらなまえで呼んでやるわい」

「よしわかった で、じいさん名前なんだっけ?」

「お主覚える気ないじゃろ......盛信じゃ」

「おっけ覚えた」

「本当かのう......」


ここにいるのは日本刀を手に持つ喪服姿の男 木桜悠 と蒼い炎の様にゆらゆらしてる鬼っぽい半透明なじいさんの2人である

そして俺らはというと草原にすっと伸びる1本の道の傍らに立ち尽くしている。

視界の果てには先ほど少し話した商人の馬車が見える。

この様な状況に陥ってからそれなりに時間が経っているのだが未だに状況の整理がつかない

傍から見てもわけのわからん状況だろう


そう俺達は困っているのである。

人生で最大級に困っています「誰か助けてーーー」と声を大にして叫びたい

しかしそんなこと叫んでもなんにもならないので変わりに大きなため息をつく

今までこんな心の篭ったため息などついたことはない気がする


大きなため息をつき状況を再度整理したうえで俺はじいさんに問いかける


「でだ、じいさんよここがどこなのか見当はついたか?」

「ふむ少なくともお前さんがじいさん呼びを辞めないであろうことはわかったの」

「小僧はどうなんじゃ?」


質問に質問が返ってきた


「それなんだけどさ、お恥ずかしい話でどうやら俺は電波に毒されたらしくてさ、まともな思考じゃないと思うんだよ」

「ふむ、ならわしもその電波とやらに毒されておるのかもしれないのぉ」

「じいさんも同じ考えかー以外に気が合うね、でもありえなくないかい?」

「まー普通に考えればありえない事じゃがこの状況からしてそうとしか考えられんの」

「俺ら2人は仲良く電波の仲間入りって感じか」

「わしとしては電波の意味がわかってしまうところが嫌じゃのう......長く生きすぎたかのぉ いや生きてはおらんのか?」

「いや知らんけど」


(少しの間)


「はーーどっかの物理学者が異世界はあるとかほざいてたがまさかほんとに異世界があるとわ思わなかったわ......」


俺は天を仰ぎ

じいさんは肩を竦める


2人の見解が一致したところでさらに深くため息をつく

そうどうやら俺達は異世界いるらしい

ただよく”異世界転移”とかあるが今回の件を転移と呼称するのには意義を唱えたい気分である

俺は上空から落ちてきたからね

まじで下に木の葉っぱとかなかったら死んでるし

転移とか優しすぎるよね

俺的には異世界落下って呼称したいよね

まー生きているので俺の幸運に感謝するとして


とりあえず俺がなぜいきなり異世界の上空でパラシュートなしスカイダイビングを喪服でやるハメになったかというと、ことは4時間ほど前に遡ることになる

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