第20話
カミル達に初めて会ったのは、テレーゼがギーゼラの元に弟子入りしてすぐの事だった。
杖が無ければ修行のしようが無いと、ギーゼラに連れられて行った、中央の街にある魔道具屋。何でも、店主である親方がギーゼラと古い友人なのだという。そこで職人見習いをしながら働いていたのが、カミルだった。
カミルは修行を始めたばかりのテレーゼの助けになるように、と、とても真剣に杖を選んでくれた。そして、合わない部分は懸命にカスタマイズを施し、テレーゼにとって最高の杖を作り上げてくれたのだ。
その日のうちにテレーゼはカミルと仲良くなり、その後は何かと理由を作っては魔道具屋まで遊びに行くようになった。西の谷の中でテレーゼ達の住む場所と、中央の街の魔道具屋が比較的近い位置取りだった事も幸いした。
そのうち、しょっちゅう何かを壊しては修理に来るフォルカーとも知り合い、仲良くなり。いつしか、三人で遊び、語り合うのが当たり前になっていた。
カミルが修行し働く魔道具屋は、テレーゼをカミルやフォルカーと繋いでくれた場所となった。素敵な場所だ、と、口には出さないまでも、何度思った事だろう。
だから、カミルが魔道具屋になって自分の店を持ちたかった気持ちは、よくわかる。あんな素敵な場所を、カミルも作りたかったのだろう。テレーゼも、カミルが主人となった魔道具屋を見たいと、何度も思っていた。
そんな素敵な夢を、十三月の狩人は、カミルごと壊してしまった。優しいカミルを悩ませ苦しませ、そして最後には命まで……。
考えるだけで、胸にぽっかりと穴が空いたようになる。きっと、フォルカーも同じ気持ちでいる事だろう。
許せない。
絶対に許す事が出来ない、と、テレーゼは思った。
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