【神格名鑑】

■"九尾"

■初の人類製第一世代型神格。ベースはプラズマ制御型だが非常に能力は低い。実験的要素の極めて強い神格である。知性強化動物は犬を原型として開発が進められた。あらゆる意味で人類製神格の方向性を形作った機種で、開発時の手法は多くの人類製神格でも踏襲されていくこととなる。

52メートル、1万8千トン。本体に匹敵する巨大な尾が特徴の、和装の獣神である。

■武装は尾。自在に変形し様々な武器になることができる。本来は武装の試験用であるが、その多様性からカタログスペックを超える能力を発揮した。

尾の変形は連装砲、電子砲、魚雷、ミサイル、格闘用アーム、多数に分岐、盾、トゲ付き鉄球、等の形態が存在する。魚雷や砲弾などは流体自体を自爆させるもので、このあたりにプラズマ制御型神格の名残を見る事ができる。

■初期ロット12体から得られたデータをもとに改良が施された二期ロットの個体群は、プラズマ火炎の投射能力と槍が搭載された。とは言え総合的な戦闘能力はそこまで極端に向上したわけではない。これら改良型の長姉"しらぬい"にちなんで、二期ロット以降は不知火型とも呼ばれる。このため特に九尾と呼ぶ場合、初期ロット十二名のみを指す場合がある。

■本編にも登場した"玄武"や"スティールコング"の神格の参考にされ、四一式神対神ミサイルもこの神格の武装の発展型である。一方不知火型に搭載された槍は米国の"エンタープライズ"からフィードバックされたもの。このような神格関連技術の交換はよく行われている。



■"天照"

■高天原・モデル。

戦略級宇宙戦闘型神格。大規模光学砲撃用。宇宙戦闘形態を保持。護衛なしでの行動はあまり想定されていない。レーザー及び剣は自衛用である。大気圏内での戦闘は不向き。そのため、宇宙戦闘がほとんどなかった遺伝子戦争では大変に苦労した。

本体性能は標準的。相は太陽。

武装はアルキメデス・ミラーと剣。投射不可。

宇宙戦闘形態では重量二十万トン、直径二百三十メートルの円環がまわりに出現する。

陸上戦闘モード/光学砲撃形態では重量一万トン、全高五十メートル。

■気象制御型の亜種で、透き通るガラスのような巨神。

主武装はアルキメデス・ミラー。鏡としての機能を備えた構成分子を数千キロメートルの範囲に偏在させ、太陽光を集約することですさまじい破壊力を発揮することが可能。非常に手軽でかつ精密な攻撃が可能だが、性質上悪天候では運用が不可能となる。鏡なので適切なポジションを確保すれば地表の夜の面も攻撃可能である。

また、補助武装として全身の原子を励起してレーザーを発射する機能を備えている。

■人間名焔光院志織。遺伝子戦争時の神格撃破数は百十四柱。人類側神格トップである。

人類の間では「太陽の女王」の異名で呼ばれる伝説的神格。

戦後は九尾級の開発に身を捧げた。



■"リオコルノ"

■人類製第一世代型神格。ベースは人類側神格ジークフリート。相と呼べるほど高等な機能はないがしいて言うなら特化された分子運動制御能力がそれにあたる。武装は大弓、剣、頭部衝角。大弓は100トンの矢を音速の三十倍で投射可能。標準型神格のおおよそ半分程度の初速である。誘導機能も標準型神格同様搭載されている。分子運動制御によって大気や大地を動かし、戦闘に使用可能であるがパワーが弱いためあまり有効ではない。むしろその優れた作業能力で人類の復興期を支えた功労者である。

■人類が建造した四番目の神格。知性強化動物という人造生命体と神格のマッチングを試すためのプロトタイプという意味合いが非常に強い。神格としての性能は極めて低いが他の第一世代型同様、肉体の能力によって驚異的な戦闘力を発揮した。ゴールドマンの言ったように、知性強化動物の神格の肉体としての適性は第一世代の時点で人間を遥かに上回っているのである。

■リオコルノ級の一人リスカムが初の火星有人飛行に成功している。宇宙航行のバックアップとしても神格は優秀で、それが生かされた形となる。

■都築博士によってはじめられた知性強化動物に人間の家庭を経験させるという慣習の恩恵を彼女らも受けた。リスカムの場合は里親は人類側神格ニケであるモニカ・ベルッチ。


■"ドラゴーネ"

■初の人類製第二世代型神格。驚異的な性能を発揮し、模擬戦では百戦錬磨の人類側神格相手に互角の戦いを繰り広げた。武装は槍、爪、牙、尻尾、粒子加速砲。本体性能は防御型だが非常に攻撃力・運動性も優れている。神格としてはリオコルノに引き続いて分子運動制御能力が高く、パワーの総量では眷属にほぼ匹敵する。

■神格の性能向上には二つの道が存在する。一つは神格自体の改良であり、もう一つが肉体及び脳の高性能化である。ドラゴーネは後者を志向して開発された。

■人体と異なり神格に最適化された頭脳と肉体を備え、巨神の制御能力は極めて高い。その高効率さは、眷属の倍の流体がなければ同等の出力を発揮できない稚拙な巨神を眷属以上に強力な破壊兵器せしめるほどである。

■根本的に人体構造を脱却した初の知性強化動物を肉体とする。この神格以降、肉体的にはどんどん人類からかけ離れた神格が生み出されて行くこととなる。

■純粋な肉体の性能及び知能でも人間を遥かに上回る。



■"ニケ"

■オリュンポス・モデル。

■本体性能は標準的。相は勝利。武装は槍、剣、斧。投射可能。

本編で"The-G"によって撃破された"ウィクトーリア"の完全同型機。

強力なセンサーを備え、索敵・情報処理能力は極めて優秀。星間通信型神格であり、性能はあまり戦闘向けではない。

通信用を転用し、攻撃用としても大出力レーザーを投射できる。

肉体とされたのは十二歳のイタリア人の少女モニカ・ベルッチで、戦後は軍に協力しながらも実家の農園で暮らしていた。

■総質量21万トン。気象制御型神格で言う宇宙戦闘形態を持つが、ニケの場合は宇宙空間においてこそ質量を偏在させる意味を持つためあまり利用されることはない。星間通信の受信用アンテナとして数千キロメートルの範囲に質量の大半を偏在させることができる。稼働期間は極めて長く数年単位なら休憩なしで巨神を展開可能。


■"ペレ"

■形式不明。本体性能は標準的。相は溶岩。武装は短剣、銛、斧、槍、盾。盾以外は投射可能。

巨神の性能はごく標準的なプラズマ制御型である。プラズマ制御型神格の本来の用途は元素合成及び大規模エネルギーの確保で、自在に核融合・光分解で元素を生み出すことが可能。余剰エネルギーは第二種永久機関としての流体の機能と粒子加速器に似た原理で物質化する。この、余剰エネルギー処理機構を応用して攻撃エネルギーの吸収に利用したのがペレの神格としての非凡さで、驚異的な戦闘能力を発揮した。

■プラズマ制御型としての基本能力に加え、燈火の超能力+アスタロト級の技量とそれを上回る戦闘経験+絶技による不滅の相の再現(こちらの方が先だが)という化け物じみた能力を持ち、神格二十四柱と互角に戦うことが可能である。まともに勝負ができるのはヘルと燈火のペアか蛇に乗ったアスタロトくらいのものであろう。近接戦闘に限れば九天玄女も勝ち目はある。第五世代型神格完成の日まで、人類の神格として最強の座を維持し続けた。その代償として言語能力を完全に喪失している。

■本人は極めて穏やかで理知的な性格である。同時に極まった武人でもある。明るく振る舞っているが内面は非常に複雑。



■"マステマ"

■アブラハム・モデル

汎用型神格。相は敵意。ふたつの巨神を備え、片方は五十メートル・一万トンの天使像、もう一方は百メートル・八万トンの悪魔像である。これらは同時に顕現させ、二つとも制御することが可能である。

■天使像の武装は剣、槍、杖、弓矢。槍と剣は投射可能。悪魔像の武装はその巨体そのものと、燃え盛る硫黄ようのプラズマ火球である。

■右脳と左脳が協力し合いながらも独立して思考することで、二つの巨神を制御可能となったモデルである。巨大な巨神は運動性が劣悪なため、その欠点を補う目的でこのような仕様となった。通常マステマ自身は天使像内部に偏在するが、悪魔像から天使像を操ることも可能である。

■天使像の性能に特筆するべき点はない。ごく標準的な能力を備えるにとどまる。悪魔像は非常に巨大であるが様々な機能を備える。これは流体を多機能化したためで、単純に機能を増やすと個々の性能は低下するためそれを補う目的で巨大化したという経緯によるもの。この種の神格の生産数は非常に少ない。

■天使像と悪魔像は同一の流体で形成されている。すなわち1個の巨神を2個に分割している形となる。

■肉体となった人物は記憶喪失で、本来の性別すら不明。両性具有に改造されていたため。現在はマステマの名でメキシコ国籍を取得し、中南米を中心に海洋科学者として活動中。

彼女の記憶喪失は神格による思考制御の後遺症。本編でエスス・タラニスが人間の頃の記憶のかなりの部分を失っていたのと同じ症状である。

■余談だが地球側では蛇の女王もマステマと同種の神格ではないかと考えられていた。一方本編で蛇の女王と交戦した者はいずれも蛇が独立した神格であると考えている。極めて高性能だったためである。



■"ワルフラーン"

■ゾロアスター・モデル

■本体性能は防御型。相は化身。武装は剣、槍、盾、甲冑。槍は投射可能な他、甲冑もある程度独自に行動可能である。

恒星探査用に建造された特殊な神格。比較的小型の巨神の外側に複数の生物の意匠を備えた巨大な甲冑を構築、という二重構造によって太陽の過酷な熱や磁場から身を守ることができる。

その物性は自在に変化することができ、透過率と屈折率を変化させて受けたレーザーを甲冑内部で乱反射、敵に跳ね返す。と言った芸当まで可能。防御磁場の域にまで強化された電磁流体制御能力も重金属粒子加速砲やプラズマ火炎等を攻撃者に跳ね返せるほどのパワーを発揮するため、エネルギー系の攻撃に対してはほぼ無敵の防御力を誇る一方動作は鈍重である。甲冑を排除することでそれら弱点を補うことができるが、その場合は防御力が著しく低下する。扱いの難しい神格である。

■長期間の単独行動を可能とするため神格の肉体は半球睡眠によって右脳と左脳を交代で休ませる能力と、巨神からのエネルギー供給のみで代謝を完結させる生理機能を備える。惑星間航行も可能。

■肉体とされたのはイギリス人の少女フランシス・マリオン。遺伝子戦争中には傭兵団を率いており、伝説的な大海賊とみなされている。通称フランシス・"ドレーク"・マリオン。現在ではハイテク企業を率いており、世界長者番付に名を連ねている。人類側神格中最大の金持ちである。


■"ジークフリート"

■ニーベルンゲン・モデル

■本体性能は防御型。相は不死。武装は大剣、槍。槍は投射可能。

■本編のウルリクムミと同系統の分子運動制御型神格で、大質量の物質を自在に操ることができるがその能力はより防御的な方向に特化されており、巨神自体の耐久力も極めて高い。操る対象にエネルギーを供給する目的で電磁波を発信する能力を備えているのもウルリクムミと同様。肉体も反射神経や耐久力、生命力の強化が重視されており、その反応速度と相まってほとんどの攻撃を防御可能。反面巨神はパワーが低く運動性もさほど高くないため攻撃には不向き。その優れた防御力によって、遺伝子戦争を通してダメージらしいダメージを負ったことがほとんどない。眷属撃破数は48柱。ニケと並び欧州の英雄と名高い人類側神格である。

■人類側神格となった時期は早く、天照が反乱を起こした数日後には神々から離反している。

■肉体となったのは37歳のドイツ軍人テオドール=クルツ。人類史上初めて知性強化動物と婚姻関係を結んだ人物である。

全身義体者の娘がいる。




■"九天玄女"

■タオ・モデル

■本体性能は航空戦型。非常に高い飛行能力とステルス性を備え、様々な形状に変化・擬態する符を操ることができる。武装は弓矢及び剣。相は振動。剣を高周波振動させてあらゆる物体を切断したり、符でからめとった対象を粉砕するといったことが可能。また矢は軽量だが高速で連射可能。敵を追尾する機能も備え、高い威力を発揮する。人類製第一世代型神格"虎人"は九天玄女のデッドコピーである。

■肉体は台湾人の少女。英語名サラ・チェン。本名陳淑樺チェン・シュウファー。遺伝子戦争中は米軍に属していたため、国外では英語名を多用する。

■神格の機能外応用を編み出した人類側神格のひとり。彼女の"三面六臂の術"は意思の力と訓練によって巨神の腕を六本にし、敵と切り結ぶことすら可能とする絶技である。その近接戦闘能力は極めて高く、一度に六柱の眷属と切り結び、撃破することに成功したほどである。人類側神格中最強の近接戦闘能力を持つと言っても過言ではない。

なお、三面六臂の術は神格を扱う技であるため伝授可能。もっともその難易度は極めて高く、"虎人"の初期ロット及び二期ロットとして生み出された24名全員に教授されたのにも関わらず、実際に使いこなせたのは1名のみであった。

■遺伝子戦争中に組んで戦っていた米国人男性と国際結婚した。夫婦仲は良好。なお夫婦別姓である。



■"エンタープライズ"

■人類製第一世代型神格。輝くメカニカルな銀のボディを持つ。アメリカで建造された。ベースは人類側神格"ワキンヤン"。武装は槍と荷電粒子砲。第一世代としては比較的優秀な航空戦及び宇宙戦闘能力を備えるが、技術的未熟さのためにワキンヤンが備える機能の大半はオミットされた。

非常に意欲的な神格で、知性強化動物は第一世代でも唯一爬虫類と鳥類のキメラとして生み出されている。もっとも人体構造を付加した関係で他の知性強化動物と著しく異なる構造を持つわけではない。



■"虎人"

■人類製第一世代型神格。台湾と中国の共同開発。九天玄女のコピーで、翠のボディを持つ虎獣人といった外観である。ベースとなった生物はネコ科の動物。武装は弓矢、棍、剣、符。九天玄女と機能的には同種のものを備えるが、性能は大幅に劣っている。とは言えロットごとの性能の向上度合いでは第一世代型としては最も大きく、三期ロットの頃には原型である九天玄女に比較的近い性能を発揮するのに成功していた。

■ちなみに西暦2020年時点では台湾は国連に加盟している。対する中国は遺伝子戦争によって国土の大半が居住不能となる大損害を被っており、常任理事国の座から退いている。事実上台湾の保護と援助を受けて存続している状態と言ってよい。



■"ケルピー"

■人類製第一世代型神格。イギリスを中心として開発された。武装は槍、剣。透き通る水色の流体で構築され、馬の頭部を備え甲冑を身にまとった騎士と言った姿である。知性強化動物のベースは馬。水中行動を重視して設計されており、第一世代としては比較的電磁流体制御能力が優秀。また水中での静謐性・ステルス性は眷属に迫る部分もある。イギリス連邦に属する国家群を中心に広くライセンス生産されており、各地でその姿を見る事ができる。

ライセンス生産された個体群が配備されたタンザニアでは、パトロールのルートに自然保護区域を含めたところ密猟者の減少とレンジャーの安全に大きく貢献したとか。



■"人狼ヴェアウォルフ"

■人類製第一世代型神格。九尾級をドイツがライセンス生産した個体群である。性能・デザインもほぼ同等。


■"ペルセポネ"

■オリュンポス・モデル

■環境管理型神格。本編で登場したチェルノボーグに近い性質を備える。武装は槍・剣・斧・鎌。相は四季。

遺伝子戦争で人類が入手に成功した、利用可能な状態の神格である。放射性物質汚染によって荒廃したドイツの国土を復活させるために思考制御機能を停止された上で、人狼ヴェアウォルフ級の1体"ケルン"に移植された。


■"ブラックドッグ"

■人類製第二世代型神格。ケルピーの後継機としてイギリスを中心に開発された。肉体のベースは犬。陸戦性能及び強襲揚陸能力を重視した重量級の高機動型神格である。武装は牙、爪、尻尾、矢、電撃。三つに分かれた尻尾の射程は最大で六百メートルにも及び、そこからも雷撃を投射可能。その発電能力を用いた電磁流体制御能力が優秀な他、歩行時の静粛性、流体のエネルギー吸収機能と相まって優れたステルス性を発揮する。



■九曜

■スーパーコンピュータ。神格及び巨神のチェック用で、機能的に完全な巨神の構築及び稼働が可能である。用途上特定の巨神・神格は持たず、試験に合わせた機材を用意される。

■自意識を持つ極めて高度な知性機械。ただし人間性は備えず人権も持たない。人間とは異なる論理で稼働する。その行動原理は人間の価値観の最大化であるが、人間の価値観への理解が完全とはならないように設計されている。

■建造した国家は日本。人類初となる、真に知性を備えた機械である。

■試験用という性質上戦闘に従事する機能は与えられていない。責任能力を持たないためである。



■"大日如来"

■ブッダ・モデル。

重量級にもかかわらず高い機動性を備え、圧倒的な攻撃力をも発揮する銀の仏像を巨神とする。全高五十四メートル。重量一万三千トン。翼を持たず航空戦能力は見劣りするが、それを補って有り余るほど強力である。

武装は棍、光背、金剛杵。相は閃光。光背はカッターとして投射可能。誘導性能を持ち凄まじい切断力。

■肉体となったのは高名な七十歳の俳優。著名な特撮テレビドラマで改造人間の主人公を演じた。ドラマでの役とはいえ人類側神格中唯一、遺伝子戦争以前に「洗脳・改造処置を受けた人間との交戦」を経験していた人物である。それは遺伝子戦争においても最大限に生かされ、驚異的な戦闘能力を発揮した。眷属撃破数九十六体。巨神の形態が別の著名な特撮作品に登場する主人公を彷彿とさせる事から、偶然にしても出来すぎだろうという声も多いほどである。

■重金属粒子を投射する能力を備えるが、遠隔攻撃ばかりでなく反動で緊急避難的に加速したり、格闘戦の威力を向上させる目的でも多様した。

■外伝でも名前がたびたび上がっているが、本編でもちらりと登場している。



■"スティールコング"

■人類製第二世代型神格。知性強化動物のベースは類人猿。巨神は全高五十メートル質量一万トン。エンタープライズ級の後継機である。2・5世代型ともいわれる高性能を発揮し、その戦闘力はほぼ第三世代型に匹敵する。武装は四一式神対神ミサイル八発。理論上はアスタロトを含むすべての眷属を撃破可能。

■史上初めて実戦投入された人類製神格三機種のうちのひとつ。武装の四一式は小柴博士が中心となって開発されており、実戦証明が為されたことでその後の神格にも余裕があれば搭載されるようになった。

格闘用に伸びる腕とプラズマ火球の投射機能も装備されており遠近共に凄まじい攻撃力を誇る。

後期型は腕にガン・ランチャーも装備。



■"グルヴェイグ"

■ギュルヴィ・モデル

■環境管理型神格。武装は槍・剣・弓矢・盾。盾以外は投射可能。相は死。宇宙戦闘形態では重量二十万トン、全幅二百メートル。陸上戦闘モードでは重量一万トン、全高五十メートル。甲冑と槍で武装し、戦衣をまとった骨色の女神像である。

■環境管理型神格はその名の通り、生態系をはじめとする惑星環境の管理を目的とする。数十キロメートルから数百キロメートル圏内に偏在させた流体の余剰質量によって微細な操作を行うのである。限定的な気象制御や海流制御と言ったことのほか、多数の生物に直接手を加えたり、あるいは拡散した放射性物質や化学物質を選別して回収・除去すると言った作業が可能。物理的なパワーは皆無だが極めて有用な神格である。

また、その機能を用いることで負傷者の治療や、より突っ込んだ作業も可能。一例を挙げれば破壊された脳を記憶ごと復元したり、脳から記憶を読み取ったり、樹木の自己組織化機能を改変・暴走させて短時間で生体爆薬を作り上げたり。と言ったことができる。遺伝子戦争中はその機能を最大限に発揮し、人間の死体を再生・改造することで強化歩兵部隊を作り上げ、活躍していた。

■倫理的に非常に大きな問題を抱えた神格である。死体を再生したいわばゾンビ部隊を構築・指揮し続けた代償としてグルヴェイグの肉体は精神を病んでしまった。



■"チェシャ猫"

史上初の人類製第三世代型神格。知性強化動物は猫。イギリスで建造された。

本体性能は輸送型。積載量は高く巨神一柱を搭載可能。戦闘力はさほど重視されていないが、それでも眷属を圧倒する能力を発揮する。

武装は爪、牙、尻尾。相は転移。

■遠隔地への瞬間移動能力を実現した最初の人類製神格である。1万トン以上の貨物を搭載可能な性能と相まって、極めて安全かつ迅速な物資・兵員輸送を可能にする。それとは別に、背中には1万トン級の巨神二柱を搭載したまま瞬間移動ができる。

■瞬間移動能力は遠隔攻撃にも使用可能なため、初期ロットでは遠距離武装の装備は見送られた。とは言え実際の運用ではやはり装備しているのが望ましいことが判明したため、後期型では武装が追加されている。



■"フォレッティ"

■人類製第三世代型神格。イタリアで建造された。人類側神格"グルウェイグ"及び"ペルセポネ"を参考にした発展型。外観は軽装の甲冑に冠を被り、下向きの角を二本備えた小麦色の獣神像と言った姿。背面には十二本の大剣が翼のように浮遊する。宇宙戦闘形態では重量二十三万トン、全幅二百メートル。陸上戦闘モードでは重量一万トン、全高五十メートル。武装は長剣、大弓、大剣。いずれも投射可能。

■環境管理型神格としては神々の眷属と同等以上の水準に達しており極めて優秀である。戦闘能力の面でも優秀で、大剣及び弓はいずれも誘導性能を備えている。大剣の射出速度は音速の二十四倍、大弓から射出される矢は一度に四本まで、音速の六十倍で投射可能な上に命中の際プラズマ化することで極めて大きな破壊力を得ることに成功している。近接戦闘能力も高く、改良された知性強化動物の体性感覚地図と拡張された認識能力によって総計十三本の剣を同時に用いた怒涛の連続攻撃が可能となっている。カタログスペック上の接近戦能力は九天玄女に勝る。

■伝統的にイタリア製の神格は汎用性と生存性が重視され、その例にもれず優れた性能を発揮する。



■"The-G"

人類製第三世代型神格。知性強化動物のベースはイグアナ。日本で建造された水陸両用型神格。全長百メートルあまり、体重二万トンで背びれを持った暗灰色の怪獣といった外観。

本体性能はパワー型。水中及び陸上での敏捷性は凄まじく、超重量型であるにも関わらず標準型神格にも見劣りしない。一方で空中や大気圏外での戦闘は不得手。基本的には強襲揚陸用で、レーザーは上陸後の攻撃のみに絞って搭載された。運用目的上水中での静粛性・ステルス性は極めて高い。

■武装は爪、牙、尻尾。いずれも恐るべき威力で、標準型神格をたやすく破壊できる。相は光。全身の原子を励起させ、発した光をレーザーとして投射する。質量が大きいため原型となった"天照"の陸上戦闘モードより威力は勝る。

知性強化動物は直立二足歩行型の爬虫人類といった風情。人相が怖いので子供が見ると泣き出すが、本人たちは至って温和である。見た目に反して恒温動物。

■書類上の名称は単に"G"。知性強化動物を共用した強襲揚陸型と戦略級宇宙戦闘型神格の二種類の神格が存在し、本機は強襲揚陸型である。開発コスト削減のためにどちらも"天照"をベースとしており、用兵上の理由で仕様の異なる二種になった。かなりの機能は共通しているが能力特性・外見は別物と言っていいほど異なる。もちろん知性強化動物は共用なので肉体の外見だけでは判別不能。

■名称は公募されたものの、著名な映画の主役怪獣の名前が殺到したため不採用にせざるを得ず、仮称だった"2ndG玄武"(玄武級後継機)をそのまま使って"G"になったという経緯がある。それくらい強襲揚陸型は件の怪獣に外見が似ている。

■発達した体性感覚地図を備えているため、人間型の肉体の脳で非人間型の巨神を制御することに成功している。第三世代型知性強化動物の能力を最大限に生かした設計である。

■初期ロットは生産能力の関係上二年に分けて強襲揚陸型12+戦略級光学攻撃型6を二セットの計36名が生産された。



■"斉天大聖"

■人類製第三世代型神格。知性強化動物のベースは猿。台湾と中国の共同開発。

■本体性能はバランス型。武装は槍、棍、戦輪、鋲、他。投射可能。相は変化。

巨神が本来不定形の流体であるという事実に着目して設計された強力な神格。形状は神格の想像力と処理能力が許す限り無限に変形できる。その形態を自由自在に変化させながら襲い掛かる様は、演習でも無敗を誇ったほどである。近接戦闘においては最強クラスとも言われ、古株の神格でなければまともに渡り合う事はできない。

神格としてみればプラズマ制御型であり、機能的には完全なものを備える。遠距離攻撃用にプラズマ火球や核融合プラズマのビーム等を投射する能力を備えるのも同様。理論的には"不滅"も使用可能であるがそれを前提として設計されているわけではない。

基本形態はつややかな毛並みに派手な装束をまとい、額に輪がはまり、側頭部に京劇を思わせる仮面をつけた黄金の猿神である。

■"ワルフラーン"の機能をも備えており、物性を自在に変化させることも可能。理屈の上ではビームやレーザーも反射できるが質量が小さいため、荷電粒子ビームやプラズマ火炎の反射は難しい。



■“ユグドラシル”

■人類製第三世代型神格。初の知性強化植物を用いたモデルである。本体性能は拠点防衛型。全高二百四十メートル。

■余剰質量を半径数百キロメートルの範囲に偏在させ、そこを通過するエネルギーを吸収する能力を付与された神格である。原理的には気象制御型に近く、流体の第二種永久機関としての機能を用いてエネルギーを移動させることで性能を発揮する。その威力は戦略級神格のアルキメデス・ミラーすらも完全に吸収し無効化するほど。吸収したエネルギーは主武装である荷電粒子砲に再利用される。

■広域に偏在する低密度の流体にエネルギーを吸収させるという性質上、広範囲を通過した攻撃ほどエネルギーを吸収しやすい。そのため接近戦ではその防御能力を発揮できないという欠点がある。また二百四十メートルもの巨体と相まって機動性も劣悪。

■神格と知性強化生物の区分が曖昧で、生まれた時点で神格と一体化している。三・五世代型とも言える特異な人類製神格。


■"竜の大公ドラクル"

■人類製第三世代型神格。知性強化動物のベースは蝙蝠。東欧諸国を中心とする共同開発。

■本体性能は突撃型。武装は長槍及び盾。また、対神格ミサイル四発を搭載する。これは第一次門攻防戦で実戦証明された四一式神対神ミサイルの最新仕様のライセンス生産である。これらの装備によって遠近バランスの取れた戦闘力を持つに至った。

相は鳴神すなわち音響である。都市破壊能力を備え、近接戦闘では絶大な攻撃力を発揮する。外観は蝙蝠に似た頭部と背面には翼を備え、軽装の甲冑と盾、槍で武装した暗灰色の戦士といったデザイン。

■第三世代の例にもれず、性能は全体的に極めて高い。中でも音響による攻撃力は群を抜いており、第三世代中最強クラスと言っても過言ではない。音は離れれば急速に減衰するのも利点で、周囲への被害を局限しつつ大火力を発揮することができる。

■槍の性能も非常に向上しており、標準の倍の六百トンの武装を音速の三十六倍で投射可能。またこの槍は誘導性能を持つ。

■ここまでの性能をもってしても、模擬戦では蛇の女王には届かなかった。神格の戦力は性能と練度、どちらも非常に重要な要素である。



■“コシチェイ”

■人類製第三世代型神格。知性強化動物のベースはユキヒョウ。開発はロシア。

■建築及び工作を目的として建造された。巨神の外観は革鎧に身を包み、剣を腰に帯びたヒョウの獣人といった風情である。全高五十二メートル、質量一万一千トン。色はグレー。武装は槍、大鎌、剣、弓矢。戦闘力より精密動作性を追求されており、分子運動制御能力も非特化型としては極めて高い。作業能力は第三世代随一。

■機能的には巨大な3Dプリンターである。巨神の内部で物質を原子レベルまで選別・分解・構築し、それを自由自在に組み立てることができる。人類が作り出せる殆どの機械や建築物を作ることができるが、その複雑さに応じて必要な時間が変動する。

■物資の現地調達及び陣地構築を主眼に設計された。そのため戦闘に直接投入されることは少ない。燃料・弾薬・補修部品、その他国連軍で用いられているあらゆる規格の補給物資を作ることが可能。この神格を用いて作られた陣地は極めて堅固なものとなる。

■生命と身体が分離しているために不死身、というロシア伝承の怪人コシチェイにその名はちなむ。

■元素合成能力はないため希少元素が必要な場合はプラズマ制御型に頼らねばならない。元々プラズマ制御型神格は建築・工作型のために開発された側面がある。

■樹海大戦にも相当数が投入されている。




■"虹蛇ユルング"

■人類製第三世代型神格。オーストラリアで開発された。知性強化動物のベースは蛇と鳥類のキメラ。武装は尾と牙。相は虹。

■肉体は二メートルほどの女性的特徴を持つ巨人である。第三世代型としては極めて身体能力が高く、その水準はほぼ第二世代に匹敵する。頭部からごく短い角を生やし、顔は毛の生えたトカゲと言った風情。四肢は長く胴は短い。関節構造は人間とやや異なり、くびれはまるで人間の女性のようにも見える。雌雄同体。短い毛が密集しておりもふもふしている。

■巨神自体が一つの素粒子のように振る舞う相を持つ。すなわち確率的にある範囲で広がりを持つ量子となるのが相である。具体的にはある状態から別の状態に変化する時間をゼロとする。このため実時間ゼロで動作可能で、この神格の攻撃を回避するには全くの先読みが必要とされる。

また、一つの素粒子として振る舞うということは一塊の波であることを示している。これは津波が堤防を乗り越えても形状を維持するように、質量による打撃を受けても形状が変化しない=ダメージを受けないことを意味する。このため物理的攻撃手段に対してはほぼ無敵であるが、強力なエネルギー攻撃を受けるとこの状態が破れる。。

■四万トンの超重量級だが、圧倒的な敏捷性を備えている。そこに相が加わり恐るべき近接戦闘能力を発揮できる。また伸縮自在で最大で20kmまで伸びることが可能。これはそのままリーチに反映される。



■"サンダーバード"

■人類製第三世代型神格。虹蛇級知性強化動物の米国におけるライセンス生産である。神格としてみれば"スティールコング"級の神対神ミサイル母機としてのコンセプトを第三世代に発展させた航空戦仕様であるが、プラズマ制御型ベースではない。質量一万八千トン、全長は尾翼を含めて百メートル(折り畳み可)。宇宙戦闘形態に相当するものは基本的に使われることがないが、総質量28万トン。

■外観は直線的な機械を組み合わせたような航空機的な姿の、鉄色をした巨人である。全長の半分を占める巨大な尾翼とシルエットの大半を占める三角形の翼が特徴的。武装は盾と銃、銃剣、四一式神対神ミサイル改四十八発である。

■"ニケ"同様の星間通信型神格で、機能的には完全なものを備える。その実体化していない膨大な余剰質量を矢継ぎ早に神対神ミサイルとして補充できるため、実質弾切れが起きることはない。

"ニケ"同様に銃剣より大出力レーザーを投射可能だが破壊力では大幅に勝り、その火力は"G"級と同水準。

■神格の開発には日本も協力しており、星間通信用のアンテナ部分のプログラミングには都築相火も関わっている。

■一撃離脱を想定して設計されており、飛行速度では第三世代随一。驚異的な機動力と圧倒的な防御力、無尽蔵の流体ミサイルによる火力、優れたステルス性で高いパフォーマンスを発揮した。反面陸戦・海中戦は苦手。

■四十八発のミサイルを雨あられと撃ち込むだけで並大抵の眷属は撃破されてしまう。攻撃面に限ればその性能は第四世代にも匹敵する水準である。

■第三世代最高峰と言える高性能だったが第四世代開発までのつなぎのため、生産数はそれほど多くない。




■“キメラ”

■人類製第四世代型神格。神格の駆逐を目的として設計され、極めて高い防御能力を誇るがその最大の手段は、圧倒的な能力による先制攻撃での撃破である。

知性強化動物のベースは狼と複数種の偶蹄目。及び菌類、植物類。長い耳と肉食動物の特徴を持つ、女性の獣人である。

■待機形態はやや動物的な形状をした、銀の人狼。五十メートル、一万トン。駆逐形態は下半身が四本脚となり、百三十メートルの体高と八万トンの質量を備えた人馬的姿となる。武装は体毛及び長柄の大剣。形態としてはリカッソと呼ばれるものに似る。

■複合的な機能によって極めて高い防御力を実現している。"ワルフラーン"の備える物性の変化によるレーザー反射及び高出力の電磁場による粒子砲やプラズマ火球の反射。"虹蛇""ヘカテー"が備える、全体を一個の波と化すことで物理的打撃では破壊不可能となり、また実時間ゼロで形状を変化させられる機能。これらの複合によって大半の攻撃に対してはほぼ無敵を誇る。

また八万トンの巨体を軽快に操る敏捷性とそれに見合った剛力を備え、近接戦闘でもその打撃力は折り紙付き。全身の体毛は寄り集まって強力な触手様の武器となり、それが数十本、射程十五キロメートルまでの範囲をカバーする。大出力レーザーも投射可能。と、やや近距離戦に寄っているが遠近共にカバーした構成の能力を備える。

■弱点は反射の余地がない体内での強エネルギー攻撃。それを防ぐために数十本の触手が与えられているが、初陣では限界も露呈した。それでも西暦二〇六〇年現在、最強の神格のひとつであることに疑問の余地はない。

■第四世代一般の特徴として、第三世代と同水準の演算能力に加えて神格と肉体の区別がないことが挙げられる。すなわち生まれた時点で神格の機能が織り込まれており、神格組み込み手術を必要としていない。これは巨神とのインターフェイスとしての神格の性能の根本的なアップデートを可能としており、第三世代では発揮しきれなかった演算能力の優位性をフルに発揮することができる。






■"黄龍"

■人類製第四世代型神格。開発は台湾・中国が中心となって行われた。

戦略級神格であり、機能的には大規模光学砲撃用である。アルキメデス・ミラーを装備するほか極めて強力な気象制御能力を備え、そのパワーは気象制御型の眷属二十四柱を凌駕する。また、特筆すべき点として敵の戦略級神格からの攻撃を防御するための障壁バリアーを持つことが挙げられる。

宇宙戦闘形態を保持。宇宙戦闘形態では重量八十万トンの巨大な東洋の龍型となる。

陸上戦闘モード/光学砲撃形態では重量一万トン、全高五十メートルの武装した龍人である。矛と剣を装備。いずれも投射不可。色は透き通るオレンジ。

■知性強化動物のベースは爬虫類及び鳥類、菌類。角を備えた龍頭と尻尾を持つ人の形をしている。

■巨神を構成する流体を広域に"存在していながら存在していない"状態にすることで実現する機能は多数あるが、本機種はそれらを統合して単一の機種が併用できることになった点が革新的である。すなわち気象制御とアルキメデス・ミラーの併用のみならず、"ニケ"のような星間通信型神格、"ペルセポネ"等が持つ環境管理型神格の機能も発揮可能。それに伴いこれらの神格が備えていた電撃、レーザー投射等の機能も高出力で運用できる。

■本機種の装備する障壁バリアーは不可視の質量を一点に出現させることで頑強な防壁として運用する機能である。その威力は戦略級神格の攻撃ですらほぼ完全に防ぐほど。防御のみならず"振り回す"ことで近から中距離での打撃武器としても大威力を発揮し、並みの眷属であれば一撃で粉砕できる。防壁は最大で同時に四枚まで展開でき、一枚でも前方は完全にカバーできるが、互いに干渉するため全周囲を同時にカバーするのは不可能である。

障壁バリアーは原理的には、多世界を観測することでそれぞれの宇宙から仮想的に質量を引き寄せるという過程で出現する。観測を終了するのと同時に質量は元の宇宙へと戻っていくため、内部にマイクロブラックホールを閉じ込め、障壁バリアーを消去するのと同時に霧散させる。といったことが可能となる。この観測には星間通信型神格としての巨大な観測機能が用いられている。もちろん、第四世代型神格の強力な演算能力あってこそ実現できた技術である。

■知性強化動物の例にもれず高い知性と優れた社会性、繊細な心を持っている。経験の少ない若い機種なのも相まって、運用には細心の注意が必要。これは若い知性強化動物全てに当てはまる原則である。



■"ヘカトンケイル"

■人類製第四世代型神格。開発は"ドラクル"での成功を糧とした東欧諸国が行った。

汎用型神格。構成する流体はピンクがかったサンゴを思わせる外観。五十メートル・一万トンの六本腕を備えた異形の巨人像を巨神とする。この巨神は総質量二十四万トンの巨神を24体に分割したもので、同じ形状・機能の巨神を総計二十四体同時に構築し操ることができる。武装は大剣・槍で、槍は投射可能である。

■巨神そのものは高出力化・高性能化されただけのごくオーソドックスな分子運動制御型であるが、同時に二十四体を扱える点が破格である。これは"マステマ"などの二柱の巨神を操る神格の発展型で、そのすべてが通常の巨神と遜色のない水準で稼働する。そのため、知性強化動物は特別にカスタマイズされた脳構造と体性感覚地図を持っている。

■巨神の大質量にものを言わせた大パワーの分子運動制御が可能。二十四体を合わせた威力は"ティアマトー"の陸上戦闘形態と同等かそれ以上の水準であるが、人間の脳とは異なり最適化された知性強化動物にとっては余裕のある制御が可能。

そのためアルキメデス・ミラーを防ぎながら武装や分子運動制御で敵を攻撃できる。

■24体の巨神はどれも同じ外見・性能である。戦闘中はそのうちのどれかに知性強化動物が自己を偏在させているが、外見からは識別不能。当然ながら知性強化動物が無事である限りは戦闘を続行できる。撃破された巨神は再構築できるが、それは知性強化動物自身の近くでしか行えないため露見する危険はある。もっとも、実戦ではそこまで追い込むのが難しいだろう。

■巨神そのもののパワーと頑強さも第四世代中群を抜いている。

■余談であるが名前の元となった神話のヘカトンケイルが百腕五十頭の巨人であるのに対して本機種は腕が総計144本、頭部が24である。更に分子運動制御で同時に構築・制御できる"腕"が総数で1000を超えていたりする。





■"蠅の王ベルゼブブ"

■人類製第四世代型神格。ベースは蜂や蟻などの社会性昆虫。日米共同開発で、米軍、自衛隊双方で配備されている超高性能機。

巨神は体の何倍もの巨大な羽と複眼を持ち、二本の脚兼腕で体を支えるメカニカルな白銀の昆虫。武装は槍、剣。投射可能。相は不死。航空戦型の特性を備える。

■肉体は昆虫の群体。神格としては珍しく繁殖能力を持つが、それは自らの群体を維持するためのみに使われる。群れの一匹一匹が神格でもあり、群れを構成する個体が全滅しない限りは死ぬことはない。

巨神が破壊された場合神格はフィードバックを受けるが、蠅の王の場合細切れにされても、群れが細切れになるだけなので寄り集まって復活可能である。(破断部分の個体は死ぬが些細な損害)

■足は実際の所六本だが、普段使わない四本は折りたたまれている。

■マイクロブラックホール投射能力を備えた戦略級神格でもある。凄まじい破壊力と射程を備えるが、本機種の特徴はむしろ超接近戦でも使用できるように威力を十分に抑えることも可能となっている点。

■戦闘速度は音速の六十倍であり、瞬間移動を用いない大気圏内移動では神格最速である。その速度でぶつかるだけでほとんどの眷属は破壊されてしまう。自身を砕き、無数の破片を弾丸として体当たりする戦術を得手とする。複数で敵軍の陣形を乱すことを想定した機能である。

■高速度・大火力を発揮できない環境での攻撃性能は凡庸である。




■"八咫烏"

■人類製第四世代型神格。開発は日米共同。後に欧州連合EUも参加している。

■本体性能は宇宙巡航艦型。相は灼熱。リフティングボディにより大気圏内でも非常に高い機動性を発揮できる。

全長480メートル、両翼の幅は600メートル。作業モードでは全高四十八メートル、九千五百トンの人型。武装は五八式神対艦航宙ミサイル二十四発(巡航艦形態)。剣及び槍(作業モード)

■制宙権を獲得するべく投入された人類軍の代用宇宙艦艇。基本的にはプラズマ制御型で、火球を投射する能力が非常に高い他、プラズマ制御型に求められる元素合成及び余剰エネルギーを物質転換する機能が極めて優秀。後者の物質転換機能を用いて敵の攻撃を吸収、破壊力を発揮する以前に無効化するという機能を備え、その鉄壁の防御力と相まって極めて戦闘力に優れる。防御手段としては外見がそっくりな替え玉デコイを平均十二体まで作り出しコントロールする機能も優秀である。また半球睡眠による長期行動能力と母艦機能を備えており、惑星間航行及び長期の衛星軌道の占領が可能。

巨体故に近接格闘は苦手だが、実運用では必要に応じて護衛の神格部隊及び気圏戦闘機部隊が付く。

■五八式神対艦航宙ミサイルは複数のモードでの攻撃が可能。軌道交差戦モードでは最大限に加速しながら砕け散り、広範囲に破片をまき散らしてその範囲内の対象を破壊する。近宇宙戦モードではミサイルを構成する流体を励起させ、進行方向に対して収束した強力なプラズマビームを叩きつける。



■"ガルーダ"

■人類製第四世代型神格。開発はインド、朝鮮半島系国家他。

■本体性能は宇宙巡航艦型。リフティングボディにより大気圏内でも非常に高い機動性を発揮できる。八咫烏同様宇宙艦艇の代用として開発された。翼を畳んだ細長い鳥のようなフォルムで色は緑、全長五百メートル。武装は神対艦航宙ミサイル十二発及び荷電粒子砲(巡航艦形態)。

■基本的には分子運動制御型で、それらが備える物体へのエネルギー供給システムとしての電磁波照射機能を極限までカスタマイズされている。これを用いた電子戦能力は極めて高く、総計二十四基の子機を自在に操ることで通信妨害やレーダーの攪乱といった機能を発揮する。またレーダーの性能も優秀。神々の巡航艦のレーザー主砲に匹敵するパワーと射程の荷電粒子砲を主武装とし、その精度と速射性、攻撃可能回数では勝る。接近戦向けの性能の八咫烏に対して遠距離戦向けである。

■分子運動制御によってミサイルの破片を"かき分ける"ことで被弾を極限まで低減させることができるため、軌道交差戦時の対ミサイル防御にも優れる。もっとも、八咫烏とは異なり巨神そのものの強度はそこまで高くないため主に後衛へ配置される。

■作中では"たいほう"ら八咫烏主力の分艦隊において電子戦で活躍したが、"ガルーダ"主力の分艦隊では子機を用いた観測と荷電粒子砲の長射程を生かした遠距離戦で、高い戦果をあげている。






■"アールマティ"

■ゾロアスター・モデル。

戦略級神格。マイクロブラックホール投射能力を備える。惑星上での運用は不向き。本体性能は標準的。相は大地。

武装は剣、短槍、弓矢。

重量一万トン、全高五十メートル。

■遺伝子戦争期、九天玄女と天照相手に激闘を繰り広げ、中国大陸を破壊し尽くした"元始天尊"と同種のマイクロブラックホール投射能力を備える戦略級神格。

本来はテラフォーミング用で、惑星の中心核を加熱し磁場を作り出すための能力がマイクロブラックホール投射である。

マイクロブラックホールはあらゆる物体を貫通するため、十分な速度で投射すれば地殻の狙った部分に直撃させることが可能。目標地点で寿命が尽きるように調整されたマイクロブラックホールはその場でホーキング放射により質量の全てをエネルギーに転換。爆発するのである。マントルを作り出す能力ともいえ、上海市が海底に沈んだ地殻変動も元始天尊によるマイクロブラックホールによるもの。

■惑星上での運用はあまりにも危険である。元始天尊の引き起こした惨事に対する反省から、二〇五七年現在樹海の惑星では基本的にこの種の神格は戦闘に投入されていないか、あるいはマイクロブラックホールの運用を硬く戒められている。

■余談だがこの種の神格は人類側でも火星のテラフォーミング用に建造されている。





■"ヘル"

■ギュルヴィ・モデル。

戦略級神格。都市破壊型。天体破壊能力を有する。大気圏外での運用は不向き。本体性能は標準的。相は鳴神。すなわち音響。

武装は長槍、短槍、剣。

重量一万トン、全高五十メートル。

■都市攻撃のために建造された特殊な神格。ただでさえ強力な神格の中でも、まさしく戦略級の存在である。彼女同様音を操る神格は枚挙にいとまがないが、彼女ほどの攻撃力を持つ個体は他に存在しない。人類の都市を、その住民に(なるべく)ダメージを与えずに破壊するために開発されたが、想定より破壊が無差別だったために実戦投入は見送られた。

相の攻撃力は最強クラスで、重装甲の大型航宙艦や数百キロメートルサイズの天体すら単独で破壊可能。不死の権能を発動中のペレや蛇の女王を撃破できるのも、彼女を含むごくわずかな兵器と神格のみである。その代わり音は真空中では伝搬せず、大気中でも超音速の敵に作用させるのは困難なため、その攻撃力を生かすためには近接戦闘を強いられる。

■理論上は存在しうる、後天的学習によって変節、神々に反旗を翻した眷属の数少ない事例。彼女は眷属でありながら人類側神格でもある。




■"アスタロト"

■レメゲトン・モデル。

対神格型神格。通常兵器との戦闘や大規模破壊は不得手である。当時多発していた神格の反乱という事故に備えるために建造された"神格を狩る神格"。そのため精神改造は非常に念入りに行われている。どんな神格とも互角に戦えるように極限レベルの生存性を与えられた。

本体性能は防御特化。全高四十五メートル。軽量級で、本体重量が九千トンしかない。甲冑を持たず、相で代用している。凄まじく俊敏で出力も高い。相は不滅。

武装は頭部衝角及び槍。槍は投射可能。

■相は、加えられたエネルギーを相転移するもの。受けた攻撃が破壊力を発揮する前に、そのエネルギーを物質転換することで無力化する。巨神自体が粒子加速器の進歩したものと思ってよい。アインシュタインの提唱したE=MC^2方程式により、エネルギーと物質は等価であり、莫大なエネルギーも質量で表せば極わずかなものである。

神格の集中力が続く限り、標準型神格の二百倍(!)もの防御力を発揮し続ける事が可能。ただし負担が大きい。その弱点を補うために乗騎として蛇が与えられている。天照との戦闘を想定して建造されており、スペック上はアルキメデス・ミラーにも十分な余力を持って耐える事が可能。原理的にはペレのそれと同様だが、ペレがプラズマ制御型としての機能を利用した想定外応用なのに対してアスタロトの不滅は最初から組み込まれた機能である。その分プラズマ制御型としての機能は大幅に劣る。

■神格としてみればあくまでもプラズマ制御型の亜種の域を出ない。プラズマ制御型神格の本来の用途は元素合成及び大規模エネルギーの確保で、自在に核融合・光分解で元素を生み出すことが可能。余剰エネルギーは第二種永久機関としての流体の機能と粒子加速器に似た原理で物質化する。この、余剰エネルギー処理機構をカスタマイズして攻撃エネルギーの吸収機能へと昇華したのがアスタロトの"不滅"である。

このため、プラズマ火球を投射する能力を備えているが本編中は用いられることがなかった。

■遺伝子戦争中期にイスタンブールの門へと配備された。驚異的な戦闘能力を発揮したが、ヘルの反乱へ対処するため神々の世界へ戻り、交戦。そのまま終戦を迎えた。

■結局地球では人類側神格と交戦することはなかった。



■"ティアマトー"

■メソポタミア・モデル。対神格型の陸戦型神格。武装は槍。投射可能。相は混沌。基本形態では重量一万トン、全高五十メートル。マントで裸身を包み、巨大なラクダの頭骨を被って顔まで隠した緑青の女神像である。陸上戦闘形態では重量三十万トン、全長千二百メートルの巨大な竜とでもいうべき姿。長大な蛇と化した下半身と、逞しい四対の腕を備える上半身。そして頭部の代わりに女神像の上半身を備える。

■圧倒的な大質量の流体にものを言わせた分子運動制御による凄まじい攻撃・防御能力を誇る。人類側神格を狩るために生み出された対神格型神格の一柱で、設計期間を短縮するために分子運動制御型をベースに機能をより特化されている。このような既存の神格の改造型は遺伝子戦争中数十体が建造されており、アスタロトなども同様のコンセプトで設計されている。

■基本形態の能力は通常の分子運動制御特化型と大差ないが、巨神の防御力はやや劣る。陸上戦闘形態は凄まじい戦闘力を誇るが、接地面積の拡大と大出力の分子運動制御で自重を支えているため機動性は極めて劣悪で飛行も不可能である。また無理に大質量の巨神を制御しているため神格の脳への負担が極めて大きく、戦闘可能時間は非常に短い。

■これらの陸上戦闘形態の欠点を完全に解消した上でより高性能化させた人類製第四世代型神格"ヘカトンケイル"が後にバルカン諸国を中心とした開発チームによって建造されている。

■制御するべき流体が増えれば増えるほど制御の効率が落ちていくため、質量あたりの出力は低下していく。陸上戦闘形態でもし基本形態と同水準の制御が可能であれば想像を絶する性能を発揮したであろう。それを可能とするだけの演算能力の獲得には第三世代、実際に制御を実現するためのインターフェースまで獲得するには第四世代型知性強化動物を待たねばならない。



機械生命体マシンヘッド

■最終話に登場。第五世代型神格と同等の能力を備えた強力な人型兵器である。全高35メートル。完全な機械式であり、機体全体が転換装甲、と呼ばれる量子コンピューティングシステムによって構築されている。

■その内部構造は宇宙開闢直後、まだ質量が存在せず、光が直進せず、物質とエネルギーが等価だった時代を再現している。すなわち機体そのものが宇宙といってよい。また、機体全体に重なるように存在する量子機械は確率を偏向させることで元素転換すら可能とする。

■量子機械はボース=アインシュタイン凝縮し一個の量子と化した巨大な"物体"である。転換装甲と量子機械は一対の存在と言える。

■粒子加速器を主体としたワームホール生成機器と、負のエネルギーを生み出す器官をセットにした超光速機器を備え、幾通りもの空間制御機能を発揮する。

■質量を自在に制御することで光速の99・98%で近接戦闘可能。またその驚異的な防御力は小天体破壊攻撃に耐え、体内でマイクロブラックホールを生成することをも実現する。ほぼ不死であり、同等の戦闘力を持つ兵器システムによって破壊されない限りはその強力な自己再生能力によって生き続ける。自発的な意思と超高度知能機械の知性で自ら判断しながら、何万年。いや、何億年であっても。

■別作品、"銀河縦断ふたりぼっち"に全く同じ兵器システムが多数登場するので参考までに。

■ちなみに年表にある"金属生命体群"は銀河縦断ふたりぼっちで登場したのと同じ個体である。神々の樹海世界では人類が十分な実力をつけた後に遭遇したため、死闘の末に下している。こちらの金属生命体群も機械生命体とほぼ互換の機能と性能を備える指揮個体が主力兵器。というか神格を主力兵器とした神々や人類の方が宇宙では少数派。



■"九頭竜ナインヘッド"

■人類製第五世代型神格。人類が生み出した、テュポンに続く二番目の第五世代。宇宙最強の超生命体のひとつ。

■光速の99・98%で動き回り、秒速三百キロメートルの航宙対艦ミサイルを受けても無傷で、二百キロメートルの小天体も一撃で破壊できる超絶的な戦闘能力を持つ。また第四世代までの神格に可能なあらゆる機能を再現する。第五世代型神格以外のありとあらゆる兵器は対抗できる余地が全くない。

■外観を目視した知的生命体の認識を介し、脳神経系に直接攻撃する能力を備える。すなわち完全な戦闘形態をとった第五世代型神格の姿を視認したが最後、脳に致命的なダメージを受けて狂死するのである。視線のあった者だけを標的としたりあるいは味方や非戦闘員など、任意の対象を除外することや逆にコンピュータシステムへの攻撃も可能。もはや神々の科学の遥か先を行く超テクノロジーである。

■自力で門を開き、世界間移動が可能である。樹海の惑星グ=ラスへの侵攻を念頭に置いたものだが、太陽系内や恒星間の移動にも利用できる。

■テュポン他の第五世代との差異は手持ち武器の形態やデザインくらいのもの。スペック上はほぼ同一と言ってよい。

■テュポンがゴールドマン最後の傑作ならば、九頭竜は九尾から続く都築の名と知性強化動物との関わりの歴史の果てである。名に九尾と同じ"九"が含まれていることからも、大きな期待と共に生み出されたことが伺える。

■文明が進歩すれば神格に限らずあらゆる兵器はこの形態に収束する。この水準に達した兵器を機械神マシンヘッドと呼ぶ。



■"テュポン"

■人類製第五世代型神格。相は神狩り。

神格という名の何か。もはや人造神の領域に踏み込んだ最強の神格である。第一から第四世代までの知性強化動物開発で得られた知見の全てが注ぎ込まれ、極めて高い情報処理能力と肉体的能力によって支えられた驚異的な戦闘力を発揮する。

■第五世代一般の特徴として、無限の情報処理能力と無限のエネルギーを扱う能力を備える。その性能を制約するものはもはや物理法則のみである。

■ウィリアム・ゴールドマン最後にして最高の傑作。都築博士が生み出した知性強化動物という種の到達点のひとつ。この神格が実戦投入されることで人類と神々の長きにわたる戦いには幕が下りる。

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