本番30分前

本番30分前の失楽園のみなさん。君視点。




ザワザワと空間が揺れている感覚は昔も今も変わらない。かといってピリピリしだすのは10分前くらいでまだ喋ったりはする。小さいライブハウスでやった時も懐かしい。楽しみ。ベースを拭きながら君は思った。本番30分前は麻兄さんの発声練習と兄ちゃんの小さめの軽いドラム音が響く。


星野「‥‥うー、ふー、ああああっ、はー」

麻兄さんは水を飲んだ。

俺はベースを置いて麻兄さんに近づく。


君「ねえねえ、今日もペットボトル投げるの」

ライブ中に飲み干したペットボトルを観客席に投げ込むのはお決まり。

星野「ふふ、そうだね」

麻兄さんはペットボトルの水を揺らした。

君「じゃあさ、ペットボトルに絵描こうよ!サインペンあるよ!」

星野「絵?んー、‥‥サインとかじゃ駄目?絵はあんまり自信はないなあ、描くけど」

君「あは、俺も描こ〜」

俺はサインペンでペットボトルに絵をかきだした。

描いてる途中になんとなく今井くんが後ろにきた気がした。


君「出来た!」

今井「‥‥ふ」

星野「ふふ」

君「なんで笑うのさー、しかも今井くんいるじゃん」

今井「‥またそのネコかと思って」

君「俺のオリジナルキャラクターの猫太郎だよ!」

星野「‥‥ふふふ、かして」

麻兄さんは俺からサインペンを取って自分のペットボトルにもかきだした。


カチッ

ペンのキャップをしめた

星野「‥‥」

今井「‥‥なんだこれ」

星野「‥‥‥‥俺」

見るとペットボトルには強いツリ目に愛想の悪い生き物が描かれていた。可愛くはない。

今井「‥‥こ‥れは君の勝ちだな」

君「えっへへ」

星野「っふふ、君、打ち上げ連れていかないからね」

君「えー!!」

なんてこったい


ガチャ


明「‥本番15分前だとよ、ホールの方移動するぞっ‥‥て、なにやってんだよ」

兄ちゃんは男3人が寄り集まってる光景に顔をちょっとしかめた。


君「見て見て」

星野「‥見て」

明「‥ひどい‥‥なんじゃこりゃ」

星野「‥‥天石兄弟は打ち上げ欠席ね」

今井「‥‥うひゃひゃひゃっ」


バタン


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る