エピローグ

 おかしかっただろ?

 俺に必死で話しかける女の様子ったら、最高に滑稽な見世物だったぜ。


 ははははは、ははは。


 ははは、はは。


 は、は。


 笑い事じゃ無い。


 違うんだ。必死で話しかけてることがおかしいんじゃない。必死で話しかけてることもおかしい。確かにおかしいが、そうじゃないんだ。俺に話しかけてることがおかしいんだ。なあ、気づいてくれ。俺に真面目に話しかける女なんていない。男だっていないだろう。話しかける奴がいたとしたらそいつは、まごうことなき狂人で……そいつに触れるべきじゃないんだ。

 頼む、気づいてくれ。俺のことなんかどうでも良い。俺はいくらでも替えの効く取るに足らない存在だ。だけど、あんたは……。


 おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ。


 あの女が……あの狂人が……文字の壁を超えて、あんたを……。

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