第12話 男と薔薇とロマンと信念

 私は自分のお金以外ではモノを買わない。いや、正確には服限定なのだが…自分を着飾るモノを人に買ってもらう等というのはファッションへの冒涜だと思っている。さて、そのファッションの話である。

 私は薔薇が好きだ。その理由は私自身もよく分からない。思春期に親に色眼鏡を使うんじゃない!と叱られたのが原因なのか、薔薇の美しくもトゲのあるところが魅力なのか、自分でもよく分からないのである。しかし私は薔薇が大好きである。もちろん薔薇のシャツもネクタイも持っている。それほどまでに薔薇が好きなのである。私の名刺は薔薇がモチーフのものだ。渡すとインパクトが強いらしくすぐに名前を覚えてもらえる。なので薔薇には良い事だらけではないか。と私は思うのだが、周りの大人は皮肉を言ってくる。薔薇=下品などというステレオタイプ的日本人基質はいつ誰が作ってしまったのか?と考えてしまうくらいに薔薇の受けは良くも悪くもあるのである。それでも私は薔薇が好きだ。もしかしたら私の今後の人生はこれにかかっているのかもしれない。出来れば薔薇色の素敵な人生を歩みたいものである。薔薇色じゃなくても良い。たまには黒があっても良いのだ。ダークローズがあっても良いじゃないか。ただ、最後だけは美しいローズレッドの人間でありたい。それはもちろん内面的に美しくありたいという意味である。果たしてこの薔薇が私の今後を左右するかは、また別の話だが、今の私にとっての薔薇の花束は絵里である。今の私には絵里が薔薇なのだ。それはそうである。将来性も考えれば薔薇という比喩は決して間違ってないはずである。ただ、薔薇にはトゲがある。そのトゲは人生でいつかは刺さるトゲなのだろう。その時はその時である。結局人はなるようになるしかないのである。つまり私が薔薇だと思っているモノも、もしかしたら絵里から見たらパンジーの花かチューリップだったりするのかもしれない。それでも私は薔薇が好きだ。エレガントなものにはリスクなど付いて当然である。問題はそのトゲをどう処理するか。なのである。私はそのトゲの処理の方法は知っている。知っているが、トゲは刺さったままがいいのだ。人間は痛みを知って初めて人を知るのである。1回トゲに刺されないと分からないじゃないか。トゲだから嫌だ。などと言っていたら、薔薇=下品という荒唐無稽で短絡的などうしようもない方程式を生み出してしまうのが事の顛末である。だから皆にも好きな花を持ってもらいたい。別に育てなくても良い。どの花も美しく魅力があるからである。別に薔薇以外でもチューリップなどでも良いのである。それで少しでもプラス思考になればそれで良いである。ちなみにトゲの話が出たから話に出すがキュウリにもトゲがあるのに、なぜキュウリは良いのだろう?やはりトゲ=悪い。ではなく、薔薇=下品の方程式なのだろう。そんな事でいちいち下品などと言っていたらお金は回ってこないと思うが敢えて私は口を開かないでいる。パンドラの箱を開けないのと同じように…

 薔薇は男のロマンだと私は思っている。美しいモノにはトゲが付き物だ。だが、それがいい、これもパンドラの箱と同じ理屈だ。開けたらどうなるか容易に想像できる。むしろ容易いだろう。なのにも関わらず開けてしまいたくなる。男のロマンとはそのようなものだ。だがもしかするとこれも私のステレオタイプなのかもしれない。だから言い換えるとしよう。私にとってのロマンは薔薇のように刺激的な人生を送ることだ。今のキャンパスライフはまさにそれを体現しているであろう。しかし一つ現れてないものがある。そう、トゲである。絵里には今の所トゲが一つも見つからない。彼女は薔薇なのかそれとも野原に咲く向日葵のような優しい人なのか。それはまだ私には分からない。だが一つだけ言える事がある。それは彼女が薔薇であろうが、向日葵であろうが、私にはどっちもロマンを与えてくれる存在であるということである。私はどちらかと言えば彼女には綺麗な薔薇となってほしいと願っている。トゲが無ければもっと良いだろう。そんな事を考えながら今日も絵里のいるアパートへと帰宅する。きっと明日も薔薇色のキャンパスライフが待っているだろう…

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