朝比奈久遠のキャンパスライフ

あめのかっぱ

第1話 プロローグ

 朝比奈久遠は学校に行く準備に追われていた。といっても、毎日決まった時間に決まった事をし決まった予定調和の如く身支度をし登校しているのである。

 もちろん通学に使っている自転車がパンクしたりだとか、通学路が事故で通行止めになっていた場合なども想定して早めに登校している。そして授業を受け、放課後には部活をし帰宅をする。という彼にとっては至極普通の高校生活を送っている。

 彼は首都圏の公立高校に通っていた。彼がその高校を選んだ理由というのは、一般的な高校生と同じく願書に書く志望理由等とは掛け離れているもので、「ただ近くの普通の偏差値の高校に行けば良いだろう」という安直な考えからである。そして彼の選んだ理由の通り普通の偏差値の同級生が集まる普通のなんの変化もない、短絡的な高校生活が始まったのである。高校生活で彼はある1人の女の子と親しくなり、付き合いを始めた。もちろんここまでの過程も彼にとっては普通の高校生活の1つである。

 そして月日が経つにつれて、別れも近づく訳であり、それっぽい理由でその女の子とは別れた。ここまでも彼にとっては普通の高校生活の1つであった。そして高校3年の頃に彼の普通の高校生活を変える人物に出会った。その人物は3年次のクラス替えで初めて会った人物であった。いや、正確には初めてではないのだが、面識があった程度の人物で彼自身もこれっぽっちも気に止めてない人物であった。その人物は天野という人物であった。天野は自己紹介をする際に自分のあだ名を紹介していたのだが、このあだ名というものがとても面白いもので、天野なので「ナノ」と呼んでください。というものであった。ここまでは普通なのだが、なにが面白いのかというと彼が大柄なのである。とても見た目とは似つかないあだ名のせいで、すっかり覚えてしまった。そしてこの、天野とその周りの人物が彼の高校生活を変える事となる。もう一人は鮫山という人物だった。鮫山は天野の友達であり、あだ名は「サメ」であった。

 後にこのサメが彼にアルバイトを紹介する事となる。彼等と出会ってから朝比奈は初めて友人と遊ぶという事をした。もちろんこれも普通の高校生活の一部なのかもしれないが、朝比奈にとっては普通ではなかった。そして同時にこれが青春というものなのか。と感じるようになっていた。

 その青春も過ぎるのは早く、朝比奈は進路選択を迫られていた。既に進路の方向性については決めていたので、他の生徒に比べたら遥かに簡単に決めることが出来た。

 朝比奈は都内のT大学に進学した。天野は地元の理系大学に、鮫山は地元の専門学校へ進学した。

 ここまでは朝比奈も想定内の(予想外の青春というイベントはあったが)事であった。しかし進学先の大学で彼の予想は大きく外れ、とてつもないキャンパスライフが待っていた。

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