第13話 再会

今日はお母様がずっと私と遊んでくれてる。


「ねえ、お母様。」

「…なあに?」

「シーナはどこへ行ったの?」

「………。」


少し時間があいて、シェリには内緒のところよ、と呟くように言った。


「内緒って?いつ戻ってくるの?」


私はなんとなく戻ってこないだろうと思いながらも、お母様に聞いた。



「さあ……どうかしら…。」



何も言わせない、って空気がお母様から感じる。これ以上聞いちゃいけないんだ。

だから私は黙った。




私はシーナを失った。

これはなんとなくだけど、間違いないはずだ。あれから姿も表さない。

だって、シーナは鏡に映った私。


お母様は何も教えてくれないんだと思う。

じゃあ誰に聞いたら教えてくれる?




カサカサッ…


「シ…。起きてる…?」

「だれ?」

「…マ、ソーマだよ。」

「ソーマ!」



白い扉が開かれると、そこから現れたのはソーマだった。黒い髪に、黒い目。誕生日を祝ってくれたあのソーマだ。


「久しぶり。元気だった?」

「うん、元気よ!」


ぱあっと世界が明るくなるようだ。

嬉しい。来てくれるなんて。


「なにして遊ぶ?」

「遊んでくれるの!?んーじゃあ……あ、あの外の水は何味?」

「えっ…」


ビックリしたような顔をして、ちょっと腕を組んで悩んでいる。今日はふわふわした薄茶色の上着に、また違うチェックのシャツを着ている。ズボンは青だ。ちなみに今日の私のスカートも青。ソーマの青より薄い色だけど。



「あの水は雨っていうんだ。味はないかな。飲んだりする水と同じ感じ。」

「色は何色?シェリが見るときは、灰色だったり、青だったりするけど。」

「……色はないんだ。無色。…雨が落ちるところの色によって変化して見えるよ。黄色い花の上に落ちたら黄色く見える。」

「へえええ!」

「知ってることなら答えてあげる。」

「じゃあじゃあ、鳥は触ったことある?」

「あるよ。頭のところは柔らかくて、羽はすべすべしてる。儚くて可愛いかったなあ。」

「そうなんだ…いいなあ…。」




ソーマの笑顔につられて笑った。

鳥に触れるなんて羨ましい。柔らかくてすべすべ。何色の鳥だろう。


私は思いつくことをどんどん質問した。短い質問でも、丁寧に教えてくれる。ソーマはちょっと考えてから口にする。私の為にどうやったら伝わるか考えてくれているみたい。

私のため。それがなんだか嬉しかった。





いっぱい喋ってたら、外は暗くなっていた。黒にはまだなりきれない紺色の世界。


「また明日来るから。」

「えー!!」

「いっぱい質問考えとけよ。」

「うん!そーする!!」



また明日も来てくれるんだ。

眠ったらすぐ明日なんて来ちゃう。






こうしてソーマは5日間、毎日シェリの元を訪れた。

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