家具職人、うっかり剣聖はじめました。

北塚

第一部

プロローグ

プロローグ



――ディスペル。


 たいていの魔法使いが習得している、解呪の魔法。


 呪いや封印を解くだけでなく、開かなくなった引き出しや立て付けの悪い扉にも効果があるので、大工や家具職人の間でも重宝がられる魔法だ。


 かくいうわたし、フレデリシア・スバントラも家具職人のはしくれとして、普段からそれなりにディスペルを使ってきたし、妖精の森では一番のディスペル使いだという自負もあった。

 ディスペルは基本技能ではないから個別のスキルレベルを確認できないけれど、たぶん本業の木工や彫金と同じくらい熟達しているはずだと思っていた。


 思っていたのだ、けれど。


――いま、わたしは五百年くらい封印されていたらしい聖剣を握っている。


 五百年も放置されていたわりに錆びはなく、持った感じは普段使いのハンマーよりも軽い。魔法に疎いわたしでも分かるぐらいに強烈な魔力を発しているから、たぶん本物だろう。


 目の前には苔むした石の台座があって、さっきまでこの剣は台座にまっすぐ刺さっていた。


ついさっき……わたしがディスペルを唱えるまでは。

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