見上げたら雲があったので。

はる

高積雲

高積雲———バリエーションが多くて、雲の様子が羊の群れのような雲。巻積雲よりはひとつひとつの雲(雲片)が大きく厚いから雲の底に薄灰色の影ができ、横方向から光がさす朝方・夕方には特に美しい姿を見ることができる。



「うわあ...こんなはっきりとした高積雲久しぶりに見た、綺麗」


私は足を止め、携帯を空に向けてぱしゃりと撮り、保存した。写真フォルダを見ると実は久しぶりなんかじゃなくて、一昨日も同じような写真を撮っていた。ああ...全く記憶にない。

そうこうしているといつも朝一緒に登校している友人——浅井涼香が私の肩をぽんと叩いた。


「優...あんたなにやってんの?また写真?」


「うん、あのね、ほら空見て。高積雲だよ綺麗じゃない?」


「どこがよ。ほら行くよ遅刻する」


あぁ、なんでこんなに綺麗なのにわかってくれないのか。私は止めた足を再び動かし、学校へと向かった。朝からいいものが見れて今日はいい一日が送れそう!



——教室へ入ると何人かが私の席に集まってなにかをしていた。窓側の席だからよく目立つ。


「なにしてるの?」


私が声をかけると、その何人かが一斉に顔を上げ、その中の一人の佐々木悠里が笑顔でこういった。


「優さ、彼氏欲しいって言ってたじゃん!」


「え、う、うん」


「だからこの人達どうかなーって思ってさ」


「うちら集まるの頑張ったんだよー?」


机の上を見ると、男の人の顔写真が置いてあった。もちろん全員見覚えがある顔で、他のクラスの人、部活の先輩、後輩——。

嫌気がして私は窓の方を見た。


「ちなみにこの先輩が———」


ん、あの人は?

私の目に映ったのは、空を見上げている一人の男の子。私と同じように携帯を空に向けている。きっと写真を撮っているのだろう。同じ趣味の人かもしれない、そう思うととても気になって仕方がなかった。


「んで——って優?あんた聞いてる?」


「あっ、ごめん聞いてるよ。それでこの先輩がなんだっけ?」


「聞いてないじゃん」


あきれたように笑い、悠里は私の頭をぽんと叩いた後、写真を片付けた。私は申し訳ないと思い「ごめんね」と一言謝った。もちろん悠里は笑顔で頷き、また私の頭をぽんと叩いた。もしかして子供扱いされてる?







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