第19話 Topaz
タケルは、おそらくは
探しに行った若いドライバーが、タケルの呻き声に気づき事務所に連れ帰ったらしい。
病院へすぐ連れて行かないのは、好判断だったといえよう。
あまり、公に身分を明かせない人間もいるため、警察や病院に行く前に事務所の判断を仰いだらしい。
タケル自身も病院は嫌がったらしい、意識があったので、事務所で免許の所持も怪しい闇医師に治療を頼んでもらった。
あばらに2本ヒビが入り、頭を数針縫った。
あとは打撲が数か所…。
バットかなにかで殴られたのだろうということだった。
「どこにも行かないから…大丈夫だよ、店に行っても」
そういうタケルに、フルフルと首を横に振る
デリバリーで食事を頼み食べ終えた後、
窓から月を眺めながらタケルは安堵していた。
(施設の追手じゃなくて良かった…)
タケルが産まれた施設…N県にある表向き精神障害者の受け入れ施設。
依存症治療なども行う施設、その地下でタケルは、この身体を手に入れた。
アルコール依存で自暴自棄…ここに預けられた天涯孤独の若い男。
死を望み続けて…やがてタケルと入れ替わった。
その後、およそ2年間、タケルはその施設で過ごした。
『サード』
それが施設での呼称。
手に入れたと思ったら、今度は手放せという…。
もともと高圧的な白衣の連中に嫌気がさしていた。
同じような環境の『ファースト』と脱走したのだ…。
登るエレベーターの中で、気持ちの高揚は抑えられない、2人は初めて見た月に興奮した。
山を下りて街へ出て、しばらくは2人で行動を共にした。
『ファースト』は、おだやかな性格だった、猫や犬を可愛がり、鳥の声を好んだ。
彼は宿主の名前をそのまま使っていた『
東京へ来たのは、紛れるため。
人ごみに紛れるため…必ず追手は来る…そんな予感が拭えなかったから。
そして…ソレは来たのだ…。
その夜から、逃げた…逃げた…そして傷を負って、
「サード…見~つけた…」
Topaz…『11月の誕生石で、カラーバリエーションが豊富な宝石。古代エジプトでは太陽神ラーの化身とされていた。石言葉は友情』
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