第77話 1941年頃夏 ドイツ
――ドイツ ベルリン
ドイツは東プロイセンで行われたソ連に対する戦いを終わらせたが、再占領までもう少し時間がかかるようだと
「置き土産」とは共産党員や彼らのシンパだ。ソ連は占領期間中に大量の共産党関係の者を街に潜伏させていたようで、ドイツが再占領すると、ドイツは潜伏した大量の共産主義者関係者の逮捕に追われている。
ドイツは再占領に当たってもちろん、そういったことは想定していたが予想以上にシンパの数が多かったそうだ。
ソ連は「置き土産」でドイツが手間取ることを予想し動いていると、
ポーランドでの戦いは内陸部になるため、日本の支援が限定されるから東プロイセンで戦うより組みやすいとソ連は考えたのだろうか。
ドイツはオーストリア連邦と連携してポーランドのソ連占領地へ侵攻する予定にはなっている……
ドイツの戦争は継続しているが、フランスとの講和が成ると街の雰囲気は少し和らいだと
フランスとの講和は賠償金無し、アルザスロレーヌをドイツ領ではなく、緩衝国として独立させるなど早期講和の為、欧州大戦に比べればドイツ側が寛大な条件で講和を行った。
独仏講和条約――ロンドン講和条約の寛大なドイツの態度について、ドイツ国内で軟弱な姿勢だと批判する野党や一部市民はもちろん存在したが、多くの市民は政府を支持した。
理由はいくつかあるが、
会社経営をしている友人は商売的にいち早く講和をしてもらいフランス、ドイツともどもが荒廃しないことが望ましいと言っていた。
ベルリンで通訳を続ける
「おお。
「こんばんわ。ヨーゼフさん」
赤ら顔のヨーゼフは四十歳を少しこえたくらいの中年の男で、ドイツ人にしては非常に小柄で少し神経質そうな顔をしており痩せた体もあいまってとても小さく見える。
彼は
「ビールをいただけますか?」
「
「特にドイツのビールが好きでして」
ははは。と二人は笑い合う。
店員がジョッキに入ったビールを持って来ると、
「乾杯」「乾杯」
二人は声をそろえて乾杯し、ビールに口をつける。
「通訳の仕事お忙しそうですね」
ヨーゼフが
ヨーゼフは幼い頃の病気のせいで歩行がやや不自由で、彼自身は問題ないと言うが、移動が多いと仕事となるとやはり気になる。
「いえ。私はまだまだ元気ですよ。若い者には負けてません」
「ははは。
「ヨーゼフさんはテレビのお仕事は最近順調ですか?」
「ええ。テレビは今後大きなビジネスになりますよ。今テレビ広告を売り込んでます。これは売れますよ」
「おお。日本でも街頭にテレビが設置してあるんですよ」
「ドイツで街頭テレビがあるのは、私が日本の街頭テレビを見てこれはビジネスになると思ったからですよ」
「なんと。あれをプロデュースしたのはヨーゼフさんだったんですか!」
まさか仕掛け人がヨーゼフとは……
「
「おお。それはすごいですね」
二人はビールの追加を店員に頼むのだった。
――磯銀新聞
どうも! 日本、いや世界で一番軽いノリの磯銀新聞だぜ! 今回もエッセイストの叶健太郎が執筆するぜ! 暑い。暑いぞ。日本の夏! 冷房機が欲しいんだが、高い。もう少し安くならないものかね。
扇風機でなんとかしのいでいるけど暑さで倒れそうだぜ。テレビより冷房が欲しいんだよ。え? 夏が過ぎたらテレビが欲しいって言ってるだろって? いやいやそんなことは。
ルーマニア問題に独墺日の三者が協議を行い、ルーマニアの元政府軍である国王派を本格支援することが決定した。独墺日の三か国はソ連に占領されたポーランド領を取り戻す準備を行っており、ルーマニア情勢を先に安定させることを狙ってるってわけだな。
ルーマニアが共産党政権のままだと、後ろから刺される可能性もあり、特にオーストリア連邦は警戒を要する。独墺日で対ソ戦に集中するためルーマニア国王派に政権をとって欲しいわけだ。
次は荒ぶる東南アジア情勢に話を移そうか。フランス領インドシナはフランスが完全自治を認めたカンボジア王国、阿南王国、ラオス王国は独立を求める騒ぎがなくなり、フランスと協力して国内の共産党主義勢力の排除に当たっている。国内の共産主義勢力を完全に排除した後、フランスと協力しベトナム社会主義共和国と対決姿勢を取るとフランスが発表している。
フランス領インドシナの完全自治が認められたことにより、その他の東南アジア地域では独立を求める動きがよりいっそう強くなっている。
この動きを受け、イギリスは日本と協議を行うそうだ。日本は東南アジアに植民地を持ってはいないが、同じアジア系の民族として東南アジア植民地から好意的に見られているから日本の仲裁を期待してイギリスが声をかけたんじゃないかと噂されている。
さて、どんな会議になるんだろうなあ。
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