第9話1-8
紙に出力された原稿に、所々に赤字で修正とチェックがなされ、机の上に作業の途中なのか雑然と置かれていた。
机の端に置かれている、端末が点灯され、国営放送が始まる通知が流れたかと思うと、女性の声が流れ始める。
その声は、新進気鋭と謳われる女性政治家が、国民に向けて演説を行っている姿だった。
連合国の評議会で、若きリーダーであるその女性は、今の現状の正当性と、必要性を強調し、国を政治的にも経済的にも他の国よりも強く大きくして対等な立場、それ以上の立場にする事を訴え終えると同時に、議員から一斉に示し合わせたように、スタンディンオベーションと共に拍手と喝采を浴びせていた。
だがその一方で、各惑星で起こる言論弾圧、政治的軋轢、経済の不安定 デモ鎮圧問い名目による自治権の軍事介入、日々高まる国境紛争。本来平等という名の下に、政治も平等で華なければならないはずが、国と民衆の意識の格差は広がっている。
何時、どのような状況になるか分からない、この不安定で壊れやすい国の舵取りに国民は困惑していた。
そんな演説を他所に、部屋の主は留守にしていたらしく聞く事は無かった。
書斎の様子は、飾り気の無い機能だけの本棚と机、筆記用具、端末だけが置かれた簡素なものだ。
その簡素な部屋に、一つだけ机の上にフォトスタンドが置かれていた。
今では珍しくなった印紙に出力された写真は、だいぶ年月が立っているのだろう、少し色あせて来てはいるが、よほど大切にしてたのか綺麗に保存されている。
その写真には、5人の少女が中むつまじく、笑みを浮かべ各々ポーズをとっていた。
何時までも変わらないとお思われた、その時代代を謳歌しているような雰囲気を醸し出していた。
春のうららか、木漏れ日が差し、そよ風がレースのカーテンをなびかせている、主のいない書斎…。
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