我等下町探偵社

@iisan

case1 我等下町探偵社!

誰も通らない、猫の子一匹いやしないそんな場所に、一軒の古ぼけた建物が有ります。

看板には、村沢(むらかわ)探偵事務所と、薄く書いてありました。


事務所の扉を開けると、閑古鳥が鳴きそうです。

階段を登るとミシミシと音がして、今にも底が抜けそうです。


階段を登りきり部屋へのドアを開けると独りの男性が外の窓越しに佇んでいました。


彼こそがそう、ここの所長、村沢滋(むらかわしげる)なのでした。

「所長、今日も、誰も来ませんね。」


「まあ、そう焦るなよ!かず、そのうち誰かくるさー。助けてくださーい。って。」


「でも、明日、家賃払う日なんでしょ?又あの大家が取り立てに来ますよ。」


「大丈夫、大丈夫。知り合いの所だから。成るようになるさ。」


「本当に、大丈夫なんですか?なんぼなんでも3ヶ月も家賃滞納してたら、訴えられますよ。」


僕は、この事務所の見習い探偵件、事務員をしている

中山和頼(なかやまかずより)なのでした。


「僕、もう少ししたら又チラシを配って来ますよ。頼みますよ所長、僕の給料も払ってくださいね。」


「給料?仕事が入んないんだから払える訳無いだろう。いくらいるんだ、一万かっ?あっ今一万ならあるぞ。ほら?」


村沢は、お札をヒラヒラさしています。

「要りませんよ。それ捕ったら所長、今月暮らせないでしょ?」


「そうか、要らないなら、やらないよ。貯金ならまだ、前の仕事で稼いだ金が少しは有るから当分暮らせるよ。」

そう言って、すぐ様財布にしまいました。


「えー、貯金有るんですか?なら貰っとけば良かった。」


かずは、今にも泣きそうです。


「じゃ、所長、チラシを配って来ますね。」

そう言って、かずは、ふて腐れた顔をして階段を降りて行きました。


所長こと、村沢滋は、この街では、名の知れた刑事でした。

歳も43と中々のやり手でした。


ある事件で親友を無くして依頼、突然刑事をやめたそうです。


その事件は、いまだに未解決だと聞きました。


この事務所は、先代の所長の父さんから譲り受けたもので、かなりの年期が有ります。


新たに事務所の看板を掲げて1年半になりますが、たいした仕事も入らず、今にも事務所が転げ落ちそうです。


先代の所長の父さんは、有る依頼をした時に腰をかなりやって、去年引退しました。

今は、家で休養を取りながら、母さんと二人、ほのぼのと暮らしています。


そう、あと二人探偵が要るのですが、仕事がないぶん先代のつてで他の事務所に派遣で行っています。


その二人は、又紹介しますね。


そんなわけで、この事務所の紹介は、終わります。


これから、この今にも潰れそうな事務所にどんな事件が飛び込んで来るのでしょうか?


少し期待して、待ちましょうか?(笑)



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