第4章 未来との盟約

第44話 魔界道中膝栗毛



「えっ?! えっ?! えっ?! 魔王さんそんな事は一言も…リタさんだって……」


ウィズが驚いてる。まぁみんなそんなもんだ。唖然としてターニャを見てる。

ターニャは微笑んで


「驚いた?ふふふ。お父様とお姉ちゃんしか知らないもの。」


私も、何となくそうじゃないかと思っていたけれど、まさか悪魔の王の娘だなんて思いもしなかった。


「すげぇターニャさん!俺、そんな大物と友達になれたんだ‼ やべぇな!おい。最高だ!」


ひとり驚きのベクトル違う人が居た。カズマだ。

カズマはターニャの手をとりぶんぶん振り回して喜んでいる。


「えっ?! えっ?! えっ?! ………か カズマさんっ?! ……その…恐くないの…?」


明らかに困惑してるターニャはカズマに手を振られるに委せながら聞く。

カズマはきょとんとして


「なんで? なんでターニャさんを恐がんなきゃいけないんだ?」


「…だって……私、サタンの娘……」


「だから?! なんで?ターニャさんすげぇ優しいし綺麗じゃん。なんで恐がんなきゃいけないんだ?」


とたんにターニャが真っ赤になる。


「え……と。だって……恐くないの…?」


「恐くないってば。ウチのみんなも別にターニャさん恐がってないぜ? なぁ?」


「驚きはしたが、別に恐くはないな。あなたは素晴らしい女性だ。」


ダクネスが即答する。


「私はめぐみんさんのほうがずっと恐いです。あとアクア様。あの方は私の中では神より恐いです。」


ウィズが手を合わせてにこやかに答える。

なんだとクソアンデッド?!


「私があなたを恐がるわけがないでしょう?あなたは親友ですよ?仲間以外で初めて出来た親友です。言ったでしょう?私はあなたを信じています。あなたも私を信じて下さい。」


私は、ぼろぼろと溢れ出すターニャの涙を拭いてやりながら答える。

カズマがターニャにウィンクしながら


「ほら。な?

ずっと話して思ったよ。ターニャさんはすげぇ心の綺麗なひとなんだって。100人が100人そう言うぜ?もっと人間を信じなよ? ウチの奥さんが選んだんだ。絶対に間違いないよ。君は誰よりも綺麗だよ。」


「カズマさん……。」


ターニャは私に向かって


「めぐみん?私も旦那様のファンになっちゃったかも。許して。お願い。」


と手を合わせてウィンク。


「いやいやいや‼ターニャ?! それはあんまりよ?! 言ったでしょ?! このひとおっぱい星人なんだって!ターニャんとこに行ったっきり帰って来なくなっちゃう‼ やめてね?! 」


「うーん。それは大変だな。確かにターニャさんはグラマラスだ。これでチャームなんてかけられたらこいつは二度と帰らなくなる。本当におっぱい星人だからな。」


「ひとを鬼畜みたいに呼びやがってこいつらは…失礼な!」


「カズマさんほら? 私のほうがターニャさんより大きいですよー?今なら揉み放題ですっ!こっち来ーい。」


「ふらふら~っと危ねぇな?! あとで…な?」


「何言っちゃってんです?! そんな腐ったアンデッドのおっぱいより私のおっぱいのほうが、張りがあって感度もよくて気持ちいいです‼ 許しませんよ?! クソアンデッド?! 」


「うそうそ。本当にこのパーティ最高ね?! 大好き‼」


泣き笑いするターニャ。

当たり前よ!私の世界一大好きなパーティなんだから。


「行きましょうカズマさん!

あのクソ親父のとこまで無事に連れてったげる!

めぐみん?私が責任持ってウィズを見張っとくから安心してね?ふふふ。」


「ターニャなら安心して任せれるわ。お願いします。」


「決まりね‼

善は急げだわ。すぐに出ましょうカズマさん‼

ちょっと着替えるわね。」


とその場でくるっと回ると……


胸元と肩が大きく開いた黒革の編み上げスリーインワンビスチェに、大きくスリットの入った黒革の軽くタイトなミニスカート。

絶対領域から見える細い脚には、赤いガーターベルトが黒のニーハイを艶かしく吊っている。


腰どんだけ細いの?!内臓ちゃんと入ってる?!

左右ぱっくり割れて剥き出しの白い腰を編み上げるビスチェは、大きく形の良い胸をいっそう際立たせている。ってか、ほとんどおっぱい見えてるよ?!

そして背中には大きな美しい黒い羽根。凄い綺麗‼


ターニャは長く濡れた様に艶めいた赤髪を後ろで束ね、いつも手首につけていた黒革のバンドで縛り、カズマに向かって言った。


「よし…っと。カズマさん?お待たせしました。じゃぁ行きましょうか?………カズマさん?」


カズマは言葉もなくただただターニャを見てる。…むっ?!


「カズマ?何見とれてんですか?!

ターニャが行きましょうって言ってますよ?! 」


「あ…あぁ。やべぇな。思わずチャームかかっちまった。目が…離せない。」


ターニャは真っ赤になって


「やだカズマさん?私チャームなんて使ってないですよ?あんまり見ないで…?」


「ターニャ?無理もないですよ。

あなたは本当に美し過ぎる。私だって見とれてたし…ほら?ウィズやダクネスだって…」


ウィズもダクネスも口を開けて見とれていた。


「いやいや…。本当に綺麗だよターニャさん…。俺の中の世界美女ベスト5に確実に入ってるぜ…。」


「そんな……めっそうもない…。素直に嬉しいですけど…。」


むむ?! 聞き捨てならんな?!


「おいコラ?! ちなみに私は何位だ?! 」


「へっ?! めぐみん?!

一位に決まってんだろ?! 何バカなこと言ってんだ。次席がアクアとダクネス。三位はエリス。四位がターニャさん。五位がアイリスだ。」


ボッと真っ赤になる。

ふわー!直球だー!

ダクネスとウィズもうんうん頷いてる。

なんだよお前ら?


「あら愛されてるわね~?羨ましいな~。」


ターニャ楽しそう。


魔界行に最高の助っ人ターニャが加わった。


「さぁ!ぶっ飛ばしてクソ親父のとこに行くわよ~‼

カズマさん。ウィズ。用意はいい?」


「「へっ?! あっはいっ!」」


「カズマさんは私が抱っこ。ウィズは足に掴まってて?行くわよ‼えいっ!」


と指を鳴らすと真上の空間が歪み、ターニャは大きく一度羽ばたいてから宙に浮いた。


「めぐみんごめんね。旦那様抱っこします。はいカズマさん?しっかり私を抱いて?」


「えっ!はい‼むぎゅぅ!ふえ~。気持ちいい~。いいにおい~。甘~い。」


ターニャの胸にカズマの顔が埋もれてる。コラお前?!


「やん! 顔動かさないでカズマさん?! あん。もぉ。」


「コラ?! カズマ!動くなっ!ターニャに触るなボケ‼」


「触らないでどうやって掴まんだよ?! ターニャさん?思ったよりヤバいぜ?! 俺の男の子が反応しちゃってる?! 」


「やーん!ウィズ早く掴まって!行くわよ‼」


「はっはい‼どうぞ~!」


「じゃぁめぐみん!行ってきま~す!」


ターニャがバサバサと羽ばたいて一行は空間の歪みに消えた。



*************



カズマたちを見送ってからキョウヤと合流し、事情を説明してから、ダクネスとえいみーと子供たちの夕食の準備を済ませた。


私は一刻も早くしたいことが……。


「キョウヤ。私は一刻も早くえいみーをウチの妹に逢わせてあげたい。

良いですか?」


「望むところだよ!君さえ構わなければって、僕から頼もうと思ってた。こちらからお願いするよ。えいみーを宜しくね。」


ずっと何かを言いたそうに私をチラチラ見ていたえいみーの顔が、ぱっと紅くなる。嬉しそう。


「と、言うことなのでえいみー?

しあのんの分とあなたの分の荷物をまとめて来なさい。

一晩お泊まりの用意で大丈夫です。

夕食はあちらでこめっこと食べましょう。」


「はい‼お師様‼ やった‼ やった~‼」


と大はしゃぎで駆けてくえいみー。

良かったね。

でも心配なのは、こめっこがちゃんとえいみーを覚えているのかって事。

あの子。けっこうドライだからなぁ。

私に護られてぬくぬくと育ってるから、苦労もあんまりしてないし、わりと情に薄い感が否めない。

えいみーがこんなに苦労して育ってるから、余計にギャップがあるように思える。

えへ。忘れてた。

なんて事になったらえいみー哀しむだろうなぁ…。


「ダクネス?今夜は実家に泊まります。

もしもあなたの時間が許されるのであれば、出来るだけ子供たちを見ていては貰えませんか?キョウヤだけでは大変だと思うので…」


ダクネスはにっこりと


「易い用だめぐみん。私の執務は代理の者に頼んである。だから気にせず帰って来い。いい話になるように祈っている。」


「ありがとう。お願いします。

キョウヤ?ダクネスを宜しくね。」


「あぁ。ダクネスが居てくれるなら僕も本当に心強いよ。」


「お師様~‼準備出来ました!」


えいみーが二つリュックを背負って降りてきた。

一個をしあのんに背負わせる。


「良いです。じゃぁ帰りましょう。」


えいみーがしあのんの手を取って、私の後ろに続く。

こめっこの記憶力に一抹の不安を覚えながら、私はホームをあとにした



****************




「うへー。あんだけ苦労してウィズと渡ったとこをひとっ飛びだぜ‼すげぇな!」


真下を見ると、血で真っ赤に染まった針の山に人が蟻の様にたかってる。


「ぁん!もぉ!カズマさん?! なんだか指がブラに入ってる‼ これ以上刺激されたら落ちちゃう‼」


「カズマさん?私の触って貰ったら良いですから!ターニャさんは危ないですよ?! 」


「だって掴むとこないんだもん‼

ウィズの身体遠いし…」


「あぁん…動かないでってば!

やだ。私。本当に感じてきちゃった‼やーん!」


「こっ 高度高度‼下がってるよ?! 」


「だってー!私もぅ何年も男の人に抱かれてないんだもん‼身体が痺れて来ちゃった…ぁん…もぉお。カズマさん! 」


「ターニャさん?! カズマさん?! 落ちるー!落ちるー‼きゃぁぁぁぁあ!」


三人は血の色をした海に落ちた。


ヌメヌメと身体にまとわりつくのはまさしく血液のようだ。

三人が水面に顔を出した瞬間、大きな水柱が立った。


「な 何だよあれ?! 」


カズマが指差すほうにそびえ立つそれは、ゆっくりとその鎌首をカズマに向けた。


「水龍?! ヤバいです‼ヤバいですよカズマさん?! 」


「ドラゴンなのか?! ってかやべぇなおぃ!岸はどっちだ?! 逃げるぜ‼」


「二人とも落ち着いて!私に任せて。」


ターニャが楽しそうにウィンクひとつ。

カズマもウィズもあたふたするのをやめ、訝しげにターニャを見る。


「ターニャさん?! どうするんだ?」


「きゃぁぁぁぁあ!食べられる~‼私は美味しくないですよー?! 」


ターニャが大きく息をする。


「レヴィ!レヴィ?! 居るー?!」


大きく口を開けた水龍が今まさにカズマたちを呑み込もうとした瞬間。


水龍の横から凄まじい勢いで渦を巻いた水の塊が、水龍を一瞬で肉塊に変えた。

直後低くくぐもった声が響く。


「……我をその名で呼ぶのはただひとり。

………まさか…姫…?」


突如

海が盛り上がり、真っ黒の巨大な島が現れる。いや。島じゃない。とてつもなく巨大な黒蛇。

その双眸は血のように紅く、身体は黒く光沢のある頑強そうな鱗に覆われ、その口はゆうに50mは超えている。

その紅い目が真っ直ぐにカズマたちを見下ろした。


「久しぶりね。レヴィ。元気だった?」


血の海に揺蕩いながら、ターニャは微笑んでそれを見つめる。


とたんに黒蛇はその鎌首を一気にターニャへと降り下ろす。

カズマとウィズが叫んでターニャを引き寄せようとするが間に合わない。


「ターニャさんっ!」


時すでに遅く、黒蛇はターニャの居た海面に突っ込み、水爆のような水柱がカズマとウィズをも呑み込んだ。


「ぶへっ!ウィズ!無事か?! ウィズー!」


「きゃぁぁぁ?! ターニャさんが食べられちゃった!ど ど ど ど どうします?! か か か カズマさん?! 」


「どうもこうもねぇよ?! 助けなきゃ‼ どこだ?! どこ行った?! 蛇野郎?! 」


「ここよ?お二人とも!無事ですか?」


と、ターニャの声が真下から聞こえて来ると、また海面に水柱が立った。

水柱のてっぺんにはターニャが微笑んでこちらをのぞき込んでいる。


「えっ?! ターニャさん?! 無事なのか?! 」


よくよく見れば先ほどの黒蛇が小さくなっていて、ターニャを頭に掴まらせていた。


「ごめんなさいね。レヴィが喜んじゃって抱きついて来たの。ふふ。びっくりしたでしょ?」


と悪戯っぽく笑うターニャ。


「……びっくり…したぁ…。どうしようかと思ったよ…。は…は。心臓何個あっても足りないよ…ったく。」


「か か か 咬んだりしません?! 大丈夫なんですか?! 」


「大丈夫。レヴィは優しいの。

絶対に大丈夫。

さぁ。レヴィ?私の友人を助けてあげて。」


「御意。」


そう言うと黒蛇は、カズマとウィズを口ですくいあげ、自分の背に乗せた。

ターニャが笑う。


「そんなに警戒しなくても大丈夫よウィズ?

レヴィは私の絶対の味方だから。

安心していいわよ。

レヴィより強い生物なんて天界にも悪魔界にも人間界にも存在しないわ。」


カズマが驚く。


「まさか?! 世界最強生物ってもしかして……リヴァイアサン?! 」


「えぇぇぇぇえ?! 」


その名前にウィズもおののきをあげる。


「そうよ?

よく知ってますねカズマさん。

彼の名前はリヴァイアサン。海を統べる者。

悪魔界ではクソ親父とベルゼブブの次、第三位の大悪魔なの。」


「…いやいやいやいや…軽くヒくぜ。あの伝説のリヴァイアサンを今まさに目の前にしてんだぜ?! しかも背中に乗せて貰ったりなんかしちゃったり……あり得ねぇ…。」


ターニャはリヴァイアサンの頭を撫でて


「そんなに恐い子じゃないんだけどなぁ。私は物心ついた時にはもぅレヴィがそばに居たから…。」


「それが軽くヒくって。ターニャさんの壮絶な人生が垣間見えてくるぜ…。」


「…人間よ。

あまり姫を愚弄するのであれば我は容赦はせんぞ?努々胆に置いておけ。」


リヴァイアサンがカズマに語りかける。

カズマもリヴァイアサンの紅い瞳を真っ直ぐに見て


「恐ぇな?! 充分分かったよ!

でもな。

ターニャさんはターニャさんだ。

俺たちの信頼する大切な友人だ。

それで態度を変えたりなんてしねぇ。

たとえ、お前に喰われても。な。」


「カズマさん…。」


ターニャが嬉しそうに呟く。

が、ウィズは大焦り。


「いやいやいやいや?! カズマさん?!

なーにリヴァイアサンさんに喧嘩売っちゃうようなこと言っちゃってんですか?! 謝って?! ほら謝って?! まだ間に合いますから?! 」


「謝る理由がねぇよ。なんで謝んなきゃいけねぇんだよ?この黒蛇もターニャさんを好きなんだろ?俺たちと一緒じゃねーか。仲良くしよーぜ?クロ?」


カズマがニカっと笑って言う。

ウィズが青ざめる。


「あぁぁぁぁあ…?! 死んだ‼もぅぅ死にました私たち!カズマさーん?! 最後に一度だけ私にあなたのおっきいのください~!」


「な な な 何バカ言ってんだ?! お前?!

サカリつき過ぎだぞ?! 」


「だってだってー!もぅぅ何年もヤってないのに~!」


大きな地鳴りが水面を揺るがす。

ウィズが叫ぶ。


「ほら?! 怒っちゃった‼ リヴァイアサンさんさん怒っちゃいましたよ?!

どうすんですか?! 早く脱いで起たせて下さい!私はいつでも準備OKです‼ 早く?! 早く~‼」


「……ふふふはははははははは!!!」


大きな大きな笑い声が水面と大気を揺らす。

地鳴りはリヴァイアサンの笑い声だ。


「はははははははははははははははは!!こいつは愉快!!我と仲良くしろだと?! こんな人間初めてだ!!ふふふはははははははは!!愉快愉快!!」


リヴァイアサンは大口を開けて笑う。

ターニャも嬉しそうに彼を撫でる。


「ね?凄いでしょ?私の友達。

気に入った?レヴィ?」


「気に入った!気に入ったとも。姫よ!

こんなに愉快な想いをしたのは200年ぶりぐらいだ!ふふふはははははははは!!愉快!!」


「彼はね。あの世界の最強冒険者でね?魔王を独りで討ち果たして、今度は最高女神ヘラに喧嘩売っちゃったの。あの世界を創り変える気なのよ?凄いでしょ?

それでクソ親父と手を結びたいってここに来たのよ。」


「なんと……ヘラに喧嘩を…?

それは本当に…くくくっ……頭おかしいですな?…ふふはははははははは!!これは愉快な小僧だ!!」


「おぅ?お前失礼だな?!

仲良くすんのがどこが悪いんだ!

クソ女神なんて知らねぇよ!あのバカ女神ぶっ飛ばして、さっさと俺たちはターニャさんと幸せに暮らしてぇんだ!

お前は味方すんのか?敵に回んのか?

どっちだ?! 」


ウィズの顔色が土気色になってどんどん薄くなってく。


「ひぇぇぇぇえ…!もぅぅ!私は消えます‼ご苦労さまでした~‼涅槃で待ってます‼」


「死ぬなよ?! ウィズ?! 死ぬ前にちゃんとヤらせろ!」


「はい‼ 生きました!

言質取りましたからねー!やった~‼」


「あっ!てめぇえ!

めぐみんには内緒だぜ?! 頼むから?! 」


「……カズマさん?……私 聞いちゃってますよ?…」


「あぁぁぁぁ。ターニャさん居た?!

極秘で‼ 極秘でお願いします‼」


「……ふふはははははははは!我の前でこんなに緊張感の無い奴は初めてだ!

良い。了承した。勇者よ!

姫の名において、お前を我の友として認めよう。

今後、お前に何か困難があれば我を呼ぶがいい。

この鱗を授けよう。左手を出せ。」


リヴァイアサンは口で、身体の鱗を一枚剥がすと、カズマの左手に渡した。

その黒鱗は黒い光を放ち、カズマの左手に吸収される。


「うわぁぁぁぁぁあ!痛ぇ痛ぇ!

がぁぁぁああああ!!」


黒光は脈打ち、黒く染まった左腕は徐々に元の色を取り戻していく。


「あぁぁぁぁあ…あ?あぁ…。やっと痛みが治まって来たぜ…?

何したんだ?クロ?」


「お前の左腕に、我の権能を授けた。

これでお前の左腕を切ることは何を持ってしても敵わず。たとえ聖剣であろうと、その刃は崩れ落ちるだろう。」


「マジか?! すげぇじゃん!

クロさんきゅ! 助かるぜ!」


「そして、危急の時はその腕を姫の名においてかざすが良い。我が必ずやお前の敵を討ち滅ぼそう。」


「至れり尽くせりだなクロ!さすが世界最強生物だぜ!今度ウチに遊びに来いよ!一緒に呑もうぜ?! 」


「ほう。お前の家にとな?

ふふはははははははは!それは面白い‼ よし!ぜひとも参じよう!

姫もご一緒されるのであれば尚良し!そこなリッチーもだぞ?

見ればお前?ベルフェゴールの性気にあてられておるみたいだな? ならば我の巨根を馳走してやろう。」


「な なんですか?! そのベル何とかって?! 」


「お前たちベルフェゴールに逢ったのだろう?髭を蓄えた醜悪な奴よ。

ケルベロスと共に魔界の検問をしておるはずだ。」


「あぁぁ!あの恐い犬連れた胡散臭いおっさんかよ!逢ったよ!通してくんなかったんだ!」


「あやつは好色を司る卑しい悪魔だ。女と見れば、その性気をあてて発情をさせるのだ。あてられた女は身体が疼いて疼いてたまらず、一度男根により絶頂を迎えなければそれは一生治まらない。」


「あ あのおっさん…?! 私に何してくれてんですかー!!殺す‼‼」


「まぁまぁまてリッチーよ。

早い話が、誰でも良いからお前の中にぶち込んで絶頂を迎えればよいのだ。我が相手しよう。」


「いやいやいやいや!リヴァイアサンさんさんさんのなんて入れたら私死んじゃいますよ?! せめてカズマさ~ん?! お願いします~?! イかせてくれるだけで良いですから~‼」


「めぐみんに聞け?! 俺は無理だ!」


「えぇぇぇぇえっ!そんなぁ~?!

ちょこっとだけ‼先っちょだけでイけますから~!」


「知らねぇよ?! あとでゆっくりと話しようぜ?」


「……カズマさん?聞いちゃってますよ…?」


「あぁぁぁぁあ!ターニャさん?! 」


「めぐみんに言いつけちゃおっと♪」


「や~め~て~‼‼」



「…姫よ?楽しそうで何よりです。

姫の身は、こやつらに任せておいたほうが大丈夫な様ですな?」


「うん♪今すごく楽しいわ。

レヴィも時々遊びに来てね?

ジズやバハムートも連れてね。」


「御意に。

それでは王の城までお送り致しましょう。

きっと御尊父もお喜びでしょう。」


「…あのクソ親父が喜ぶもんですか!

お母様を捨て私を捨てた、あのクソ親父が……!」


吐き捨てる様にターニャは言う。

リヴァイアサンは哀しげにそれを見つめる。


「…姫……。」



「や~め~ろ~ウィ~ズ~?! 」



****************




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