第30話 Honest moon



結局

宴は朝方まで続き

今は屋敷に帰り、私はお風呂に入っている。


「ふぅぅ。楽しかったですね。」


久しぶりに落ち着いてお風呂に入ってる気がする…

考えたら昨日はやりっ放しで――


とたんに顔が燃える。


うゎーほんとだ。身体中キスマークだらけ……

……こんなとこにも…


内股の付け根や下腹におびただしくキスマークがついていた。


「あのひと…ほんとに私の身体好きなんですね…」


大事そうに大事そうにつけてくれた

紅いしるしを、ひとつずつ愛おしく撫でていく。


「………ん……」


だんだんとその時の情景が浮かび身体中が熱くなる

じんじんと子宮のあたりが疼いて苦しい。


形がすごく綺麗だって何度も褒めてくれた乳房…

ふっくらと小さく淡い桃色をした乳首…

華奢で捻り切ってしまいそうだと優しく抱いてくれた細くくびれた腰…

顔を埋めて何度も何度も優しく吸って舐めてくれたこの……


「………ぁぁぁああああ…んん…」


だめだめ…いっちゃう…


身体が痙攣してる。

ちょっと触っただけなのに…。


早くあがっちゃおう。


カズマは

ベロベロでベッドに寝かせてある。

アクアとエリスは

一度天界に帰ると言い行ってしまった。

ダクネスは

妹の初夜だからと真っ赤な顔でぜぇぜぇしながら帰った。怖かった。


二人きり……。


ベロベロでも構うもんか

この火照ってしまった身体を何とかしてもらおう。


「ふんふんふ~ん♪」


身体だけ拭いて裸でいこうっと。


もう止めどなく内ももを伝って愛液が漏れてる。

もぅ無理。死んじゃう。


早く早く旦那様の元へ。


なんせ私は

世界一の祝福をうけた花嫁なんですから。


骨の髄まで愛して下さいね。

旦那様。



****************




「おい。」



「……………………」



「おいってば。」



「………………………」



「おーい。奥さーん。」



「は…い… 旦…那様………」



「お前ひょっとしてバカだろう?」



「相変わらず失礼なひとですねあなたは?! 起きて第一声がそれですか?! 新婚初日の嫁にもうちょっと気の効いた言葉は思いつかないんですかね?!――ってか……ぁん……だめ……ですって……ぁん…ぁん…ぁん…ぁん…突かな…いで…ぁん…ぁん…ぁんすぐ…いっちゃうか…らぁぁん…だめ…ぁん…ぁん…いく…いく…ぁぁぁああああ……」


音をたてて愛液が噴き出していってしまった。


「お前は朝からなにやってんだ?!

俺のベッドまでびしょびしょで使いもんにならなくする気か?!」


「えへ。可愛い奥さんでしょ?」


「ほんとに目覚めるさっきまでまったく気づかなかったよ。びっくりだ。ってか今何時だよ?」


「今は12時前ですよ?

朝方ベロベロのあなたと帰って来てあなたを寝かせて、私がお風呂からあがってあなたの隣に潜り込んだのが6時くらいで…

すると突然、あなたが私の胸を揉みながら後ろからすぐに挿れたんです。

あれからずーっと挿れたまんまで離れなかったですよ?幸せでした。

何回いかされたか…」


「それで俺のベッドはこんなにもぐちょぐちょなんですね?!」


「今夜からはアクアからいただいた防水シーツしときますね。」


「今夜もですね?!」


「ちっ」


「また舌打ち?! もう痴女ネス?!」


…カズマのいけず……。



「私はエロネスみたいに自分ですることはありませんでしたが、我慢はしてましたよ。私の家での時や、魔王討伐直前なんてもう…言葉に出来ないくらい疼いて疼いて苦しかったです。あなたは出せば終わりでしょうけどね?」


「う…面目ない…。」


「だからその分のツケを今から払って下さいね。いっぱいいっぱい愛して下さい。

この身体はあなただけのものなんですから。

どんな凄いことしてもいいですよ?」


「それはちょっと…萌えた。」


「…ぁん……私の中にいっぱい下さいな。お腹いっぱいにして?」


「よし。もう許さん。可愛過ぎる俺の嫁。」


「ぁん…ぁん…ぁん…ぁん…ちょっ…激し……ぁん…ぁんいっちゃ…う…ぁん…だめって…ば…ぁん…ぁん…すぐ…いっちゃ…う…か…ら…ぁん…ぁんいく…いくぅ―ぁぁぁああああ―――――――




****************



「で?」



「15時ですね。

およそ9時間経過していますよカズマ。私は幸せです。」


「もぉぉう 良いだろうさ?!」


「ちっ」


「奥さん?! ごはんは?!」


「私じゃぁだめですか…?」


「……可愛いんですけど僕の嫁。」


「じゃぁ食べて?」


「いやぁぁぁぁああ‼ 抗えねぇ‼」



****************



「お腹ちゃっぷんちゃっぷんです。

カズマのでいっぱい。どんどん出てきます。」


「あぁもうこのベッドもおしまいだろうさ。よし。風呂入るぞ。風呂。」


と言ってカズマは出ていった。


私も起きよう…と…



…腰が


足腰が立たない…。


ほんとにあるんだ…

やり過ぎて足腰が立たないって凄い‼


変なとこにすごく感動して

だめだめ。私もちょっと身体を流してごはんしなきゃ。

と頑張る。


この股関節が開いたまんまな感じのじんじんとした軽い痛み。

膣口から子宮までの痺れたような痛み。


なんだか幸せで泣けてくる。


女に生まれてよかった。

って思う。


その幸せを噛みしめながらのガニマタで歩く姿はとうてい15歳の女の子には見えないだろう。


なんて思いながらお風呂に到着。

カズマに身体を流して貰って、名残惜しくすぐにワンピースに着替えて台所へ。


今日は二人だけなので簡単にニホンの伝統料理だという[スキヤキ]にした。

甘辛く味付けした具材に、生卵をつけて食べるという斬新な料理だ。

これは私とアクアが大好物。

アクアはどうやらスキヤキには一家言持っているらしく、[ワリシタ]と呼ばれる煮汁は多目で、具材には必ず[おふ]というふにゃふにゃのグルテンを大量に入れるのがアクア流らしい。


私もその[おふ]とやらにかなりハマった。かなりの美味さだ。

カズマとダクネスは肉さえあればいい感じだから、スキヤキの具材に凝るのはもっぱら私とアクアだけ。

ニホン料理は奥が深くて好きだ。


叶うならば、カズマのお母様にカズマの好物料理をたくさん教わりたい。

またいつか相談してみよう。


「カズマー? もう食べますかー?」


台所から叫ぶと


「出来たんならすぐ食おーぜ。」


と返る。

私は鍋を抱えて居間へ移動し、


「今日はゆっくりここで食べましょうね。」


とソファの前にスキヤキをでんっと置いた。


「おー!スキヤキじゃん?!」


とカズマは大喜び。

かわいいやつめ。


「カズマ?あれ出して下さいな。最近の発明。」


「あぁ。マナコンロか?OK♪」


カズマが工房から小さな薄い箱を持ってくる。

これはマナタイトの熱を利用した調理器具で、鋼板製の箱の上に取り付けられた三つの足の上に鍋やフライパンを乗せると、調理に充分な熱が自由自在に得られる優れものだ。


旅先にも軽々と持って行けるし、雨でも雪でも問題なく使える。

今はまだ火加減の調節と、連続使用時間の調整中だが、近々実用新案登録する予定で、バニル曰く、市場見込みで年間40億エリス、知的財産権買い取りで200億エリスは下らないそうだ。

カズマは早々にバニルへの売却を決めており、そのお金でアクセルに学校を造る予定だそうだ。


聞けば、紅魔族の様な高い知力を持った子供を育てれば、将来的に街は潤い、貧富の差も無くなり、人々の生活も豊かになり、争いも無くなり、ひょっとしたら、モンスターや魔王とだって上手くやって行けるかもしんねーぜ?

だということだ。


私は寝耳に水というか、このひとの発想力の素晴らしさに度肝を抜かれた。

私たちの常識では一ミリだって計れないこの自由で広大な発想力。

本当に広い男。

このひとにはどこまで見えてるんだろう。

そう想うと、自分の矮小さが嫌になる。

でも、精いっぱい、私はこのひとについていくんだ。

このひとの邪魔をしないように、出来る限りのフォローをして、後ろを歩かせてもらうんだ。そう、決めたんだ。


と頷きながら

スキヤキの追加の具を用意してると、


「お前ってあれだよな? なんか日本人的な女だよな?昔から想ってたけど…」


「それは誉め言葉ですか…?どんなひとがニホン的な女になるんですか?」


「日本人ってのは元来働き者でさ。男はいつでも家族を護るために休みなく働いて、家族の顔すらずーっと見れなかったり…でも、家族のために歯をくいしばって働くんだ。毎日毎日さ。」


「…それは…本末転倒というか…家族のために家族と会えないって淋しくないですか…?」


「まぁ聞けよ。

んで、男はギリギリまで頑張って頑張って働いて、家族を養う為の僅かなお金を手に入れるんだよな。

自分以外の家族の幸せの為に。

そこに頑張れるんだよ。日本男児って生き物はな。それが美徳とされてんだ。」


「はい。解る気がしますが…」


「だろ?んで、

日本女子ってのはな。

そんな男に心底惚れて、理解して、添い遂げると決めて自分の家を出て嫁に来た訳だから、男の言うことにいちいち口を出さず、いつでも一歩退いて男を立てて黙って甲斐甲斐しく世話したり、手助けする。

それが日本女子の古くからの美徳だとされてるんだ。

お前、それって、凄く理解出来るだろ?」


「…はい。私がおよそ一般的ではないと諦めていましたが……まさかそんなところに似たような考え方の女の方が居られるとは……驚きました…。」


凄い。

押しの強い紅魔族では非常にマイノリティなので黙っていたけど…


カズマの国の女のひとに近いんだ‼

嬉しすぎる―。


「そうだろうな。

めぐみんと暮らしてみて判ったけど、お前は自分の欲よりひとの欲を優先するんだ。

んで、それを優先してることだけで自分もちゃんと満たされる。

これぞ手弱女、貞淑、古きよき日本女子の鑑ってやつだぜ?

お袋がよく言ってたよ。そんな女の子見つけたら土下座してでも結婚して貰えってな。

お前見せたら、お袋泣いて喜ぶぜ。」


嬉しい…

カズマはちゃんと見ててくれてるんだ…

お母様の話も初めて出してくれた!



「私には…足りないものが多すぎます…。

まだまだ…ですが、あなたの足手まといにだけはならないように努力します。

あなたが精いっぱいやれるように、私は精いっぱい尽くしたいです。」


「お前はお前でいいんだよ。

変わる必要はないし、そんなお前が好きなんだからさ。

まぁゆっくりいこう まだまだ始まったばかりだしな。」


「はい。旦那様。

あなたは私の一番の望みです。」


「嫁が可愛すぎて悶絶死しそう‼」


もぅ…

そんなこと言うからチャラけて見られるんだってば。


まぁ世の中の女の子たちに解られても困るんですけど。


これは私たち三人の秘密でいいの。


でも…


「ねぇカズマ? 私、カズマのご両親に逢いたいんですけど…無理ですか?」


「両親かぁ……難しいだろうなぁ……」


カズマは腕を組んで考えこむ。


「私、お母様にカズマの好きなニホン料理とか教わりたいし…。

お父様にもちゃんとご挨拶したいです。」


「そうなんだろうけどなぁ……俺は日本で死んでこっちに転生したから…。」


そっか。

死んだことになってるんだった……


「ごめんなさいカズマ……私…そんなつもりじゃなくて…ごめんなさい……」


慌ててカズマが手を振り


「いやいや。気にするなよ。

日本の俺はどうしようもないバカだったんだから。親父もお袋もダメ息子減ってせいせいしてんじゃね?ははは。」


もぅ…

カズマ…


「それに、俺が死んでからもうずいぶん経つぜ?みんな忘れてるって。

ほんと引きこもりのどーしょーもないニートだったんだから俺。」


カズマ…


「先生もさ。三学期にちらっと顔だしたら名前忘れてんの。同級生もだぜ? 転校生かってずいぶん騒ぎになったよ。笑えるよな。」


カズマ……


「したら、突然あんな死に方しただろ?もぅみんな笑い堪えるの必死だったらしくってさ。ほんと…爆笑だぜまったく…。」


カズマ…もぅいいよ…。


「俺は人助けだって飛び込んだんだけどさ…アクアが言ってたよ。俺が飛び込んだせいで、ケガすらするはずじゃない女の子はケガをして、飛び込んだ俺はクルマにひかれたってショックで死んだんだってさ。結局、無駄死にってやつさ。…俺みたいなやつにはお似合いの死に方だろ?親父もお袋も恥ずかしくて外出歩けねぇ……」


「もぅいいよカズマ‼


……もぅ良いから…。

…カズマが優しいの…分かったから…。ごめんなさい。

だから…泣かないで……。

お願い…。分かったから。」



堪らなかった。


カズマを胸にぎゅぅっと抱きしめる。


こんなに優しいひと知らない……。


なんで…?


なんでニホンは…ここまでカズマを?


なんでカズマは…自分を…?



「なんで…そんなに自分を痛めつけるの…?カズマはなにも悪くない!


なんで…?

お父様もお母様もきっとあなたを誇りに想ってる……。

大切な我が子ですよ?!

悲しくないわけないじゃない‼


きっと毎日毎日あなたに話しかけてる…。

あなたの為に毎日ごはんも作ってる。

親子としてやり残したことを、

あなたが人生でやり残したたくさんのことを、嘆いて苦しんでるんですよ‼

今も。今でも。


あなたの友達にも居たかもしれない…。

あなたとこれからたくさんの経験を共に乗り越えて、共に年老いて…

それを願っていた誰かが。


そんなことも叶わずに

見ず知らずの女の子を助ける為に

あなたは逝ってしまったんですよ?!


私なら…私なら耐えられない…。


もしもあなたが今、そんなことをしたら、私なら絶対にあなたを許さない‼


自分が何もしなかったって…

何もしてなかったって…

あなたは言いますけど。


あなたが無事で…ただただ無事で生きていてくれるだけで…

どれほど助かったひとが居たか……。


もぅ

そんなに自分を責めないでください。


ニホンであなたが出来なかったこと。

ニホンで誰かがあなたと出来なかったことを、これからは私としてください。


あなたがこの世界に生まれかわって


あなたがあなたのその手で、優しさで、救い出してくれたくれた私がここに居ます。


15年もの月日を、紅魔の見えない鎖にがんじがらめにされていた私を、あなたがその手で助け出してくれたんです。


あなたは自らを犠牲にして

この世界をも救ったんですよ?


私はこんなに優しいひと知らない。



あなたは、私の一番の勇気で、私の一番の望みで、私の一番の誇り。


私の世界で一番自慢の旦那様です‼


あなたを蔑み、苦しめるものは、例えあなただって絶対に許さない‼


だから…もぅ……自分を虐めないでください…。


もぅ…自分を…赦してあげて…?


お願い…

お願いします。」



声を殺して泣いてるカズマを

きつくきつく抱きしめる。


私にも泣いているところを

見せたくないだろうから。



あぁ。きっとこのひとは

こうやって生きてきたんだろうな。


誰よりも優しいくせに

つっぱって。

誰かを助けても手を挙げずに。


ずーっとこうやって独りで泣いてきたんだろうな。


私も、アクアも、ダクネスの時も、


そうやって独りで頑張って

手を伸ばしてくれてたんだろうな。


ごめんね。

気づいてあげられなくて。


ごめんね。

今は解るからね。


今はもう

独りじゃないからね。


この世界では

あなたのその優しさが

ちゃんと報われますように。


だからこれからは

私が護ります。


あなたの優しさが報われるように。


ちゃんと伝わりますように。




****************


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