第8話 再臨




『―――。』






は!?






「なんか言ったかめぐみん?」


「いえ…? 大好きですよって」


「ほんとに!? それがほんとならこうしちゃいられない! 早くここでキャンプして布団敷かなくちゃ!」

「こんなダンジョンの奥深くで何をしようってんです!? ……また挿れられてる時にモンスターに邪魔されて止めるのは、私としては身体と精神的に苦しいので勘弁してもらいたいのですが…」

「めぐみんさんってばなんか具体的で赤裸々な告白で逆に萌える発言ですね!?」




ダンジョンの奥深くの暗闇の中、めぐみんの手を取って、潜伏スキルと敵感知スキルで慎重に進んでいたカズマに、何者かが呼び掛けている。


『――――マ』


また!


やっぱり気のせいじゃない。

誰かが呼んでる。


『ミルド―めあねす――』


「めあねす?  めあねすがどうしたって?  ミルド? 森がなんだ?」



「カズマどうしました?  何でもいいから早くここぬけちゃいましょう。 私もなんだか欲しくなって来ちゃいました」

「めぐみんさん!? 最近やけにエロ発言が多いですね!?」

「本来紅魔族は性欲が非常に高いのですよ。それに…こんな身体にしたのはカズマです」


頬を赤らめ、紅い瞳をより紅く艶めかせながらそう言うめぐみんは、きっと世の中の誰よりも美しく見えた。


「えーと。結婚して15年も経つのにも関わらずなんて可愛いんだ俺の嫁はちくしょーっっ。

いやいやいやいやそうじゃなく。

さっきから誰かが俺達を呼んでるんだよ。

ミルドがどうの、めあねすがどうのってさ。ほらまた。しーっ…」


そう言ってめぐみんの口を手でふさぎ耳をすます。



『―ズマ。 早く―助けて―めあねすが――テレポートで…』


「めあねす?…めあねすになんかあったのか!?ってか、どこにテレポートしたら良いんだよ!?」


『私に。――私を想って、跳びなさい──』



この声が誰の声かなんて

とっくに分かってるさ。


ああ 忘れたことなんてなかったし

忘れることなんてあり得ない。


俺はにやっと笑うと、その声に言ってやった。


「しょうがねぇなぁぁぁぁ‼」


そしてめぐみんの手を取り

その声の先で微笑んでるであろう

この世界で最も優しい女神を浮かべながら思いっきりジャンプした。



****************




『クネス――ダクネスってば―』



「誰だ!? 」



めあねすを捜してアクセルのギルドに来てみれば、案の定あのバカ娘、数時間前にミルドの森に初クエストだと言って意気揚々と駆け出して行ったそうな。

討伐じゃなく調査だけの、大したクエストではないと受付のルナが言ってはいたが、それでも独りきりのクエストだ。親として心配しないでいるほうがどうかしている。


「無茶してないと良いんだが…」


行こうか行くまいかと悩んでいるところにさっきの声が。


『――ダクネス――めあねすが―私たちの娘が危ないの。――すぐにミルドの奥に来て――』


その声の主は 誰よりも知ってる。

忘れる訳がない。

私は一抹の疑いもなく、アクセルで一番の駿馬を借り受けミルドに向かった。



****************



―─めあねすが気を失ってからまもなく


完全に意識をなくしためあねすの身体にまとわりつく霧の触手は、およそ人の頭の高さまでめあねすを持ち上げて、ゆっくりとその四肢を広げる。


母に似て小柄なその身体に似合わない、まるで絵画に描かれた女神の様に均整の取れた美しい肢体が、霧の中でつやめかしく蹂躙されている。


まだ誰の手にも触れさせてなく、破瓜はかもしていない清らかなそのつぼみの一番敏感な突起に、霧の触手が愛おしそうにゆっくりと触れていく。


やがて

その奥から流れ出てくる清らな蜜に濡れた蕾を優しく押し開き、ひときわ大きな霧の触手がその頭を蕾の入口へと押しつけると―



「すっごく気持ちいいんですけどねー

そこまでにして貰えるかなぁ?」



「―――――!!」


その言葉が放たれた刹那

めあねすを取り巻いていた霧の触手が一瞬に霧散した。


霧の触手によって空中に浮いていた一糸まとわぬめあねすの身体が、青い光に包まれゆっくりと地面に降り立ち、そして目が開かれる。


「私たちの大切な大切な愛娘に

よくもこんな汚らわしいマネしてくれたわね。

あなたがどこの何だか知らないけど、微塵も残さないであげるわ」

「――――‼」


声ともなんとも言い様のない叫びをあげながら、復活した触手が一斉にめあねすの身体に向かう。


「セイクレット・ハイネス・エクソシズム‼」


向かってくる霧の触手に向かって

青い光に包まれためあねすが、人間には使えない退魔最上級魔法を投げつける。


とたんにまた霧散する霧の触手。

しかし次の瞬間またも幾重もの触手が形成される。


「ちっ―─やっぱ火力が必要なのね…」


そう舌打ちしためあねすのすぐ斜め後方の空間が歪む。


「――♪ ナイスタイミングよカズマめぐみん♪」


その瞬間

カズマとめぐみんがその場に現れた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る