第3話 アクセルの街にて




「あら めあねすちゃん。また今日もひとりで来てるんだ?」




ギルドでいつものように、パーティー募集の貼り紙をチェックしてから、自分でも出来そうなクエストの依頼を見逃さない様に念入りに品定めしてると、受付のおばさまに声をかけられた。

相変わらず、なんというか、年齢不詳のダイナマイトな美人だ。


「はい。少しでも早くレベルあげたいし、新しいスキルを覚えたくて…」


14歳の誕生日を迎えた先日、

念願の冒険者カードを貰った。


ダクネスかあさまと、ゆんゆんおばさまからはすごく猛反対されたけど、とうさまとかあさまは、どうやら昔から14歳の誕生日にって決めてたみたい。

私としては、小さい頃から何度も聞いてきた、夢物語の様なとうさまたちの凄い冒険譚の数々に憧れていたので、出来ることならかあさまが冒険者として初めて立った13歳で、同じようにスタートしたかったのに。


「ダクネスかあさま、私のことになるととたんに心配性になるからなぁ…」


放任主義なとうさまとかあさまをもっと見習って欲しい!


ダクネスかあさま、冒険者時代は、どんな強いモンスターでも躊躇ちゅいちょなく、誰よりも早く前に駆け出してってみんなを護ってきた、[世界最強の盾]としてその名を響かせたクルセイダーだったと、ゆんゆんおばさまやウィズおばさまが言ってた。


とうさまやかあさまは何だか微妙な顔をしてたのが気になるけど…。


だけど

それだけに冒険者が危険を顧みず冒険することの意義を、誰よりも分かってるでしょ?と言いたいの!

私を心配して、心から愛してくれているのは分かってる。

だけど

私だってもう立派な大人なの!

こうして冒険者カード貰ったし、ひとり旅だってもう楽に出来るはずなのよ。


「めあねすちゃんのお眼鏡にかなうクエストはあったかしら?

あなたなら多少危険なクエストでも楽々独りでクリアして来るでしょうからねぇ…。ほんと、良いとこ取りってこのことよね」


受付のおばさまがため息混じりにそう言った。

とうさまとかあさまに連れられて初めてギルドに来た日を想い出す。

あの日はアクセルの街が、軽くパニックになった。

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