現代転移物語

方 久太

第1話

 ────此処はある森の中。その森の中に小さな家は立っていた。

 その中からは、老婆の声と、幼い少女の声が聞こえる。

「おばーちゃーん!」

「はいはい、なんだい?」

「えーっとねえ!きょうはもりでセシカのみとれれた!」

「ほお、よかったねえ。今日は昼ごはんにそれを食べようか?」

「うん!」

なんともつつましい生活である。



 ────そんな平穏は、今日、終わる。


 少女と老婆が昼ごはんを食べおわった後。

 少女の耳に何かが崩れさる音がした。振り向けば、老婆が倒れ込んでいた。

「おばあちゃん、どうしたの!?」

返事はない。

少女は賢かった。

だから分ってしまった。少女の顔が恐怖に彩られる。

一度見た、光景と重ねて。

「どうして。」


 老婆に触れることなく、少女はその場に膝をつく。

 耐えられないとばかりに、少女の喉から悲痛な叫び声が上がった。


「どうしてみんな、わたしをおいていくの。

 どうしていつもひとりぼっちになるの。

 そんなことなら、わたしは、いらないんじゃないの、」


少女はいた。


叫ぶ少女の視界は光で染め上げられ、意識を遮断した。

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