第160話 楽団の人気者
突然現れたオルトルートさんに驚きつつも、俺達は門から屋敷内へと移動した。もちろん、ユリアーナから招待されたのだから突然では無いんだが、俺達は何も聞いてなかったからな。で、この人どういう人なんだ?
「さっきは少し取り乱してしまって悪かったわ。私はさっきも名乗ったけどオルトルート、「オルトルート・デ・フェオ」リバーランド出身よ」
みんなが揃ったところでオルトルートさんは改めて自己紹介をした。
「ユリアーナのお知合いなんですよね?」
彼女はユリアーナから招待を受けたと言っていたし、別に疑っているわけじゃないんだが、一体どういう知り合いなんだ?
「彼女とは
「仕事兼趣味・・・ですか?」
ユリアーナの仕事と言えば、転生者のサポートだろ?という事は、この人もそれ関係?いやでも、それならエレオノーレさんにも初めましてはおかしいだろ。
俺は全く意味が分からずにユリアーナの方を
「あー、オルトルはねえ、同じ楽団の仲間なの」
楽団・・・あ!
「あーーー!」
俺は思わず彼女を指さして声を出してしまっていた。
「もう、シンシン何大声出してるのよー!」
ルーナに怒られてしまった。でも俺は思い出したんだよ!
「オルトルートさん、以前リバーランドでの演奏会で、司会・・・って言うか、とにかくメインで話してた人ですよね!?」
以前フェルテンと一緒に行ったリバーランドの演奏会の事を俺は思い出した。あの時フェルテンが言ってたんだ、「オルトルートちゃんに話しかけられなかった」って。あの時凄いはきはきと、しかも愛想よく笑顔で話してたので、印象に残ってたんだ。まあ、すぐにユリアーナの事に気を取られて忘れてしまってはいたんだが。
「あなたもしかして、リバーランドでの演奏会に来た事があるの?」
俺の言葉を聞くや否や、オルトルートさんはずいっ!と俺の方に身を乗り出してそう聞いてきた。
「え、ええ。友人から凄い楽団がいるから僕にも教えたいと言われて、一緒に広場まで見に行ったんですよ」
「そこで私と会ったんだよねー」
俺の言葉にユリアーナが反応する。
「え?あーはい確かに、なんか不気味な人がいるな~って」
俺はユリアーナの言葉に正直に答えてやった。あの時こいつが日本のゲームの音楽なんかを演奏したもんだから、色々と疑心暗鬼になってしまって、しばらくの間よく眠れなかったんだよな。マジで最悪だったわ。もしかしてこいつ転生者なのか!?ってね。
「何よ不気味な人って!」
ユリアーナはご立腹だったが、オルトルートさんはそんなユリアーナに構わず俺に話しかけてくる。
「あなたのお友達は中々見込みがあるじゃない」
「ええ、しかもオルトルートさんの大ファンでしたよ」
「コレナガ、あなた、そのお友達大切にしてくださいね」
オルトルートさんは、それはもう上機嫌でそう言ってきた。しかし別に俺はそう言う話を聞きたいわけじゃない。彼女は何の為にこのベルストロまでやってきたのか?わざわざユリアーナが招待したくらいだから、何か意味があると思うんだが。
「それはもう、今度会う機会があったら、フェルテンにもオルトルートさんが喜んでいたと伝えておきます」
「よろしくお願いするわ」
「ところで・・・」
俺はそろそろ本題に入ることにした。
「オルトルートさんは、今回何故ベルストロまでわざわざ来られたのでしょうか?」
「・・・は?」
「へ?」
あれ?俺何か変な事聞いたかな?
「ユリアーナ、あなた、シン・コレナガに何の許可も得ずに私を呼んだの?」
「えへへ、サプライズってやつ?」
「あ、あなたねえ・・・」
オルトルートさんは眉間を指で押さえてため息をついていた。サプライズってなんだ?楽団の人気者を内緒で俺に紹介しようと思ったとか?そんな馬鹿な。
「てっきりコレナガには話を通してあるものかと思ってたわ・・・」
「えっと何の事です?」
さっぱりわけがわからん。ユリアーナと彼女が俺に話を通す・・・あ!この二人がベルストロで俺に話を通してまでやる事っていったらひとつしかねーじゃん!そういう事か!
「もしかして、ここで演奏会を開いていただけるんですか?」
「私がアリサから聞いた話では、そういう事になっていたわ。だからわざわざここまで来たんじゃない」
なるほど・・・。ユリアーナは、この屋敷のホテル化に伴い、自分たちの演奏会を行おうと計画していたって事か。
「あーもう、シンちゃんには内緒でこっそり計画建てようと思ってたんだけどなー」
「いやいや、無理があるでしょ?」
あーそういえば、以前話し合いをしていた時に、アリサとユリアーナで内緒話をしてたんだよな。聞いても内緒だと言って話してくれなかったんだが、この事だったのか。アリサまでこんないたずらみたいな事に乗っかるとは思わなかったぜ。
とは言え、この二人の演奏は間違いなく盛り上がるだろう。これはオープンがますます楽しみになってきたな。ただ、少し不安もある・・・。
「あの・・・」
俺はオルトルートさんに、俺の今考えている不安点をそのまま聞くことにした。
「今現在僕らが置かれている状況についてはどこまで把握されてるんですか?」
これは単なるホテルのオープン計画じゃない。一国の女王が自分たちの威信と尊厳を取り戻すための戦いでもある。これで全てが決まるわけじゃないが、ここでしくじったら後は無いと言っても過言じゃないと思う。
「どこまで、と言われたら「ほとんど」と答えるわ。この国で女王様が置かれている状況とかも含めてね」
まじかよ!その上でここまで来てくれたって事?
「あの、僕が言うのも何ですけど、それで構わないのですか?」
俺は我慢しきれずそう聞いてしまった。だって、普通だったらこんな危ない橋を渡りたいとは思わないだろ?
「良いに決まってるじゃない!上手くいけばバルサナの王族とのコネクションも出来る。これはどうしても手に入れたい。それにこの国への私たちの足掛かりにもなるしね」
なるほど・・・。確かに王族とのコネはでかいだろう。あれ?と言うか、ユリアーナ達の楽団って趣味でやってたんじゃ・・・?いや、それはまあいいか。とにかくやってくれると言うのなら大歓迎だ。
「それじゃあ、改めてよろしくお願いします、オルトルートさん」
「ええ、こちらこそよろしくお願いするわ」
こうしてオルトルートさんが俺達の計画に協力してくれることになった。これはオープニングイベントは盛り上がる事になりそうだ。
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