第3話 誕生!魔法剣士コレナガシン

 さて、いよいよ俺の異世界での生活が始まる。神様の話が一通り終わると、俺はいつの間にか建物(?)の外に立っていた。


 まずは、神様の言うとおりに「冒険者ギルド」に行ってみるか。そこに登録しとけば、各地にあるギルドで支援を受けられるらしいしね。仲間探しもそこで行うことになるんだって。


 冒険者ギルドとか仲間とか、すげえワクワクするワードだぜ!


 なので、とりあえずは一緒に冒険してくれる仲間を探す事が今の一番の目標だ。なんか本格的にファンタジーRPGっぽくなってきたなあ。


 神様が言うにはこの街って、「冒険者を目指す人間が一番最初に訪れる街」なんだって。なので「贅沢ぜいたく言わなきゃ仲間探しには困らないだろう」とのこと。


 よっしゃ!めっちゃ強い仲間をスカウトしまくって、有名冒険者になってやるぜ!



 そう思ってた時期が僕にもありました。



「居ません。該当者がいとうしゃゼロですね」


 受付の超が付くほどの美人のお姉さんにはっきりと言われてしまった。物凄いあわれみの眼差まなざしで!


 何がゼロって、俺の仲間になりたい奴がゼロって言われたの!


 ちょっと待ってくれよ!


 だって神様の奴、ここは冒険者が集まる場所だから絶対一人は見つかるとか言ってたじゃん!


 しかもね?こういう異世界のギルドって、レベル管理もしてくれるらしいのよ。でさ、俺はレベルいくらかな~って登録してから確認したの。そしたら


「コレナガシン様はレベル1でございます」って!


 いやいや、異世界から転生してきた人間ですよ俺。そんな訳はないでしょう。異世界からって部分は伏せて、何かの間違いではないのか問いただすも帰ってきた答えはレベル1。


 嘘だろ・・・・。


 なんか不思議システムとかで、俺の中の見えない能力を感知してレベルが決定とかじゃないの?チート能力はどこ行ったんだよ・・。


 どうも受付のお姉さんに聞いた話では、この世界のレベルって、ギルドに依頼されたクエストをこなすことで上がるらしいのよ。


 なので、ギルドに関係ない仕事をガンガンやっても、レベルには全く関連付けられないっぽい。


 じゃあレベルあげなくて良いんじゃね?って思うだろ?ところが、レベルが上がると、各都市や街にある、ギルド公認のショップやら宿屋やらの料金・宿泊料が大幅にお得になるような特典がてんこ盛りなんだと。


 なんだよ、異世界でも、ポイントサイトのクーポンみたいな事やってんのかよって、愕然としちゃったよ。


 そういえば異世界での名前、日本での名前の「是永清これながしん」=コレナガシンにした。まあ愛着湧いちゃってるし、神様が自分で付けていいって言ってたからね。


 それにしてもどうしたもんかなあ。俺はギルドに設置されていた椅子に腰かけて、頭を抱えて悩んでいた。


 ギルドに登録したはいいけど、レベル1では仲間になりたい奴はゼロと来たもんだ。一人でどうすりゃいいっていうのよ・・・。


 俺がギルドの受付横で悶々もんもんとしていると、なんかいい香りがふわっと俺の横を通り抜ける。


「あの、すみません。ギルドに登録したいんですけど」


 すっげえ可愛いエルフの女の子が冒険者ギルド登録してた。いや、初めて間近でエルフを見たけど、これは凄いわ。


 なんつーか、この世のものとは思えんくらいの美形。ゲームの世界のエルフなんか目じゃねーよ。エルフって皆こんななの?あー、こんな女の子と冒険してみてーなー。


「では、ユーディ・ビッケンバーグ様のLVは1となります。パーティメンバーの募集は致しますか?」


「あ、はい。お願いします」


 エルフと受付嬢の会話が俺のとこまで聞こえてくる。あのエルフは「ユーディ・ビッケンバーグ」というらしい。なんか舌を噛みそうな名前だな。


 それにしてもあのエルフの女の子、レベル1じゃ誰も誘ってくれなくてがっかりするだろうな~。今の俺みたいに・・。


「該当するパーティーがございました。今すぐコンタクトをお取りになりますか?」


「はい、お願いします」


 ちょーーっとまったああああああああああああああああああああああああああああ!


「ちょっとお姉さん!僕の時はレベル1だと誰も居ないって言ったじゃないですかあああああ」


 俺は慌てて涙目で受付に訴えた。だって、さっきゼロって言われたんだよ俺!もしかして見た目?この世界でも見た目で贔屓ひいきされるんすかあ!?


 受付のお姉さんは、さっきよりもさらに深みを増した憐みの眼差しで俺を見つめながら答えてくれた。


「コレナガシン様は、レベルというより職業がネックとなっておりますね」


「へ?職業?」


「コレナガシン様は、先ほど職業として魔法剣士と登録されましたが、魔法剣士での募集は、余程人員が不足してない限り少ないかと思われます」


 え?

 

 ええええええええええ?だって魔法剣士だよ?魔法と剣の両方使えるんだよ?今は魔法使えないけど!


「冒険者の間での魔法剣士評は、剣と魔法をそこそこ使える中途半端な職業・・というのが通説になっております・・」


 ぶっ!この受付の姉ちゃん、その魔法剣士様を目の前にして、中途半端って言いやがった・・。


「ちょっと、じゃあ登録の時それ言ってくださいよー」


 俺は完全に泣きながら受付嬢に訴えていた。だって、俺の第二の人生なスタートになっちゃったじゃん!


「職業選択に関してのアドバイスは当方では出来兼ねますので・・。申し訳ありません」


 ぐぬう。さっき職業決めるときにさ、「なんでもいいの?」って聞いたら、どの職業でも結構ですよ」って言われたんだよ。


 なので、俺の好きなRPGでいつも使ってる職業が魔法剣士だったんで、それに決めたんだけど、そんな理由で職業を決めなきゃ良かった!


 こんな職業選択みたいなイベントで、この世界に対する知識の無さが裏目に出るとは思わなかった。これは思った以上に慎重に物事を進めなきゃな。やっぱゲームとは違うわ。


 そんなやり取りをしている間に、エルフの女の子、ユーディ・・なんとかっていったっけか。あの子の配属先となるパーティー一行がやってきて、受付登録を始めていた。


「あの、よろしくお願いします!」


「よろしく!大丈夫!俺らと一緒に行動してれば、すぐにレベル上がるよ」


 おーおー、可愛い女の子が一緒だからって一丁前にカッコつけやがって。でも俺は知っているんだからな。今のパーティーの平均レベル、まだレベル5だったもんねさっきちらっと書類見たから間違いない!


 あー、こんな事考えている自分がむなしいぜ・・・。


 そういうわけで「魔法剣士」としての俺のスタートは、いきなりつまずきの連続で始まったのだった。

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