うちの嫁さんが魔法少女(仮)だったんだが

秀吉彰

0-1

今から三年前、僕たちはおしゃれなバーで出会った。すっかり意気投合して連絡先を交換して、そこからちょくちょく会ったりして……気がつけば恋人という関係に進展していた。

そんな僕たちは一ヶ月前、結婚した。


多田ただ奏多かなた。それが僕の名前。

そして……


「かなくん! 朝だよ。早く起きなきゃ」


クリーム色の長い髪を揺らしながら、僕の肩を軽く叩くやたらと美人なこの女性。肌は白く、目もくりっとしていてまるで人形のようだ。

そんな彼女の名前は多田ただ愛花まなか。僕のお嫁さんだ。


「起きてるよ。ちょっと考えごとしてたんだ」


ダブルベッドから体を起こし、んっと伸びをする。すると愛花は不思議そうに首をかしげながら、こちらを覗きこんできた。


「考えごと? なにか悩んでるの?」


「そういうわけじゃないよ。ただこの日常が幸せだなって」


なんて言ってみせると、愛花の顔がぼんっと一気に赤くなってしまった。付きあいが長いというのに、こう初々しい反応をされるとこちらまで照れてしまう。

自分から言いだしておいてなんだが、恥ずかしくなったので咳払いをしておいた。


「おはよう、愛花」


「おはよ、かなくん」


見ての通り僕たちはラブラブだ。これまで大きな喧嘩をしたことがないし、結婚してからもこの熱は冷めていない。もちろん、やることもやっている。完璧な夫婦……に違いない。


ただ最近、少し気になることがある。

僕が仕事から帰ってきたとき、彼女はどこか疲れているような表情を見せる。それもほとんど毎日。

所謂彼女は専業主婦というやつで、働いてはいない。家事は全て任せてしまっているけれど、とてもそれで疲れがたまっているとは思えないのだ。

理由としては愛花の表情。疲れている顔ではあるのだが、なにか裏があるような。どこか艶っぽいものを感じる。……例えばほんのり頬が赤くなって、熱があるような。そんな感じ。


「今日のお弁当にはかなくんが大好きなものをいっぱい詰めてみました! 今日もお仕事頑張ってね」


太陽のように眩しい笑顔。そう、僕が仕事に行く前は元気なんだ。つまり、僕が家にいない間に愛花になにかが起こっている……。

べつに彼女がやましいことをしているのでは? なんて思っちゃいない。ただ心配なだけだ。あまり弱いところを見せたがらないから、余計に。


「いつもありがとう。……あのさ、愛花」


「なあに?」


小さく微笑んで僕の言葉を待つ。そんな愛花の顔を見ていると穏やかな気持ちになってくる……ので、毎回なにも聞けずにいた。なにをどう聞けばいいかもわからないし、変なことを言って困らせたくはない。けど気になる。もどかしい。

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