Before death makes me live.

オノマトペとぺ

第1話

 私が息をするうちは、鼓動を刻むうちは、私はまだ「生きて」いないのだ。


 私が最後の鼓動を刻む時、あるいは自分の意思に気づけなくなったとき、すなわち「死」というものが、何かしらの形で私に降り注いた時に、私は「生きた」のだ。


 生は死によって完成される。


 生と死は別の何かではなく、死はあくまで生の一部分なのだ。死が訪れるまで、私は私を証明できない。私は、私の生きた世界を知ることができないのだ。


 それは死が、生の一部分であるそれが、私が私の生きる世界を見ることを不可能にするからだ。私は死ぬ。その時から私は「生きた」のだ。


 いや、死だけではきっと足りない。私は死ぬ、そして私がいた世界で私が死んだ後、つまり「生きた」世界のどこかの誰かが私の存在をその脳裏に思い浮かべなくてはならない。


 私はいない。私は死んだ。それでも誰のなかに私がいた。そうしてようやく私は「生きた」のだ。


 いまこの言葉たちをカタカタと打ち込んでいる私は、まだ生きていない。まだ私という存在を証明できない。私の死と誰かの中の私の記憶を持ってしてはじめて、私の存在は確かなものになる。


 だから私は私が「生きた」世界を知りえない。死がこの世界と私を別つまで、私も私の触れているこの世界も、その存在を証明しえない。だから私はまだ「生きて」いない。


 ただ、いつか「生きる」であろう自分のために、いつか「生きた」ことになるように、この世界のいろんな誰かと同じ時を重ねよう。そんな風に思うのだ。

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