第47話
『サア、愚カナル人ノ子ヨ!コレヲドウ防グ?』
エンリベルが杖を一振りすれば、闇色の魔法陣が1度に5つ展開され、そこから禍々しい槍や、剣、斧にフレイルなどの形をした魔法が発動され、最後の1つから溢れた闇色の魔力がエンリベルを包む。
「くっ!やらせるか!【ドラゴニク・ホーリー】!」
「協力するぜ【ダークエンチャント】」
「援護します【ブーストゲート】」
キョウジの放った黒の影がエンリベルにぶつかると、エンリベルの闇属性への耐性が上昇する。
その代わりに光属性の耐性を激減させた。
そして、キョウラクの放った龍を模した光がユノの生み出した門をくぐると、その体積を倍に増やしてエンリベルにその顎門で喰らいついた。
『ヌハハハハハ!ヨイ!ヨイゾ!コレハ喰イ切レヌ!』
「くっ…あれでもまだ大したダメージを与えられないだなんて…!」
『ククク…次ハ我ノ番ダ、ナッ!』
そう言ってエンリベルが消える。
すると、次の瞬間キョウラクが吹き飛び、破壊音を轟かせながら背後にあった瓦礫に激突する。
先程までキョウラクが立っていた場所を見るとそこには_
『フム?ナンダ、コノ程度ナノカ?期待外レダナ…』
そう言って自身の拳を見つめる、エンリベルの姿があった。
ここで俺達は気がついた、
高速で移動しただけだ、と。
「クソがぁあああああ!」
「おい!下手に突っ込むな!」
そんな俺の忠告を無視して1人の男性プレイヤーがエンリベルに詰め寄ってスキルによって強化された剣の一撃を放つ。
しかしそれは、いつの間にかエンリベルの側に寄せられていた、
「クソぉおお!」
『クカ、クカカ!無駄無駄ァ!』
「がふっ!」
男性プレイヤーは果敢に立ち向かったが、最終的には背後からエンリベルの黒剣に切り裂かれ、短く息を吐くと光の粒子へと変化する。
どうやってあんな化物を討伐するんだよ!
「調子に乗るんじゃないわよ!」
シラクモはそう叫ぶとスキル【龍皇化】を発動。
その身を巨大な水色の龍へと変化させる。
「その程度の手数で調子に乗らないで欲しいかな」
冷静にサイカは、鏡を掲げ幾つかの魔法スキルを発動する。
すると、鏡の力によって魔法が増殖を繰り返し、魔法の雨を生み出した。
「援護するね〜」
そんな間延びした声でリンネが歌い出す。
それだけで俺達のHP・MPが回復し、更に全ステータスが上昇した。
流石にこれなら勝てるんじゃないか?
そう思った俺がエンリベルを見ると、エンリベルは_笑った。
『クカカカ…スバラシィ…!素晴ラシイゾ!人ノ子ヨ!サア!我ト
そう言って杖を振れば、黒色の武器が3人目掛けて飛んでいく。
「甘いのよ!」
しかし、シラクモの放ったブレスによって全て凍結し、砕け散る。
それを見越していたのかエンリベルは、シラクモを直接殺そうと走り込んでいくが、唐突に横に跳ぶ、すると先程までエンリベルが走っていた辺りに稲妻が落ちる。
「チッ…避けられた。まあ、逃がさないけどね」
『クカッ!実ニイィ…!【夜蜀】!』
エンリベルが杖を掲げると、杖の先から黒がサイカの魔法を全て呑み込んでしまう。
「なっ…!くそっ!シロちゃん!」
「わかってるわよ!【エレメンタル・カノン】!」
シラクモの口から極彩色の光がエンリベルに向けて放たれる。
これをマトモにくらえば流石のエンリベルでも大ダメージを受けるだろう。
マトモに受ければ、だが。
『ククッ!【放夜】』
そうエンリベルが呟くと、黒がエンリベルの前に広がり、そこから先程呑み込んだサイカの魔法が飛び出す。
そして、光とぶつかるが一瞬動きを止める程度で終わった。
しかし、その一瞬、その一瞬が致命的な時間だった。
「キャッ!」
「ぐうっ…!」
「わわっ!」
返された魔法がそれぞれにぶつかり、シラクモのブレスも中断されてしまったのである。
『ナンダ…貴様ラ、我ヲ舐メテオルノカ?弱イ、弱スギル!脆弱ナル人間共メ!』
そうやって憤るエンリベル。
まあ、あの方法なら倒せるだろう。
「ナク、俺に協力しろ」
「わかった、どうするの?」
「あいつの動きを止めろ、それで全て終わらせる。完全に止めていいからな」
「ん、わかった」
作戦会議を終えた俺達は一歩前に出る。
それに気がついたのか、エンリベルはこちらを見つめる。
『次ノ相手ハ貴様ラカ…失望サセテクレルナヨ』
「ああ、その点に関しては心配ないぜ、予想の斜め上を行ってやるよ。ナク!」
「止まれ【空縫】」
その瞬間、エンリベルの時が止まった。
俺は即座に【法則介入】を発動し、床の岩でエンリベルを包むように加工する。
15秒の時が経ち、エンリベルの時が再び動き出した。
『ヌ!?ナンダコレハ!閉ジ込メラレテイル!?ダガコンナモノ!』
岩の中で硬質な物によって何かが弾かれる音がする。
無駄なのにな。
『ナラバフルパワーダ!【黒武器召喚】!』
岩の中で複数回、先程より強い力で何かを殴る音が聞こえるが全て弾かれていた。
「そろそろ終いにしようか?」
『ナ、ナゼダ…ナゼ壊セヌ…貴様!ナニヲシタ!』
「わからない?わからないならしょうがない、そのまま死ねよ」
そう言って俺は岩の内部を尖らせてエンリベルを貫くように動かしていく。
当然、一気にやりはしない、ゆっくり、ゆっくりとだ。
「どうだ?今、お前を貫こうと壁から棘が迫ってるぞ〜」
『フザケルナ!コノ様ナモノ、戦イデハナイダロウ!?貴様、ソレデ勝ッテ嬉シイノカ!?』
嬉しいかだって?そんなの決まってるだろ。
「超嬉しいに決まってんだろ」
あっ、自分でもわかるくらい嬉しそうな声だったな。
すると、エンリベルのライフが削られ始める。
『アァアアア!』
「お、棘が刺さったのか。じゃあ暫くこのままで」
『ヤメロ!ヌケ!』
「いや、骨で抜くのはちょっと無理かな」
流石に死者には興奮しない。たぶん、そういうことじゃないんだろうけど。
そうこうしている間にも、エンリベルのライフは削られていく。
それと同時に先程まで威勢良く噛み付いていたエンリベルの態度が変化していった。
『頼ム…頼ムカラ…殺シテクレ…』
「やだよ。もう少し俺を楽しませろよ」
『コノ…鬼畜メ…』
おっと、エンリベルのライフが消えそうだ。
俺はエンリベルのライフが尽きないように先程覚えたばかりの【回復魔法】の初級である【ヒール】を唱えまくる。
体力回復も出来て、尚且つスキルレベルも上げられるなんて一石二鳥ってやつか。
『貴様…鬼カ…』
「うるせっ、ほっとけよ」
んー、スキルレベルも十分上がったしな…殺しとくか。
トドメ、とばかりに俺は内部の棘でエンリベルを一気に貫く。
『ヨウヤク…逝ケル…』
エンリベルは苦悶の声を上げるどころか、むしろ解放された、やったぜ!
とでも言いたげな声で絶命していった。
すると、俺の目の前にリザルト画面が現れる。
そして、今回のアイテムの中に不思議なものを見つける。
◇◇◇◇◇◇
名称:
効果:特殊職【
◇◇◇◇◇◇
ジャーキーって…食いたくねえな。でも、特殊職は気になるな…
すると、アナウンスが流れ出した。
『第4界層が解放されました。以下の特典をプレイヤーの皆様に送らせていただきます。
1.経験値100%上昇アイテム(消耗品)
2.
以上です。それでは残り86界層頑張ってください』
oh…ここにきてサードジョブの解放か…いや、うーん。でもな…ノーライフキングってどんな効果があるんだ?
そう思った俺は【不死者之王】をタップする。
すると、職業の情報が表示された。
◇◇◇◇◇◇
不死者之王【ランクSS】[魔術系]
特殊効果:即死攻撃でも必ずライフが1残る。
状態異常無効。
死んだ魔物の使役。[0/3]
◇◇◇◇◇◇
どうやら、攻撃魔術なんかにも適性があるようで火力不足が解消されそうだった。
意外なことに体力や防御力も高く、誰の目から見ても優良な職業だった。
でもなあ…ぶっちゃけ、腐った干し肉なんて食べたくないよな。
その時、俺は思い出した。
アンリを救えなかった時の悔しさが。
そして、この肉を食えば状態異常無効、つまりあんなことは起こらなくなる。
「ふふっ、だったら決まってるよな?」
俺はそう呟くと、干し肉を口の中に入れる。
カビ臭い匂いが口の中に広がり、噛めば噛むほど腐臭が噴き出す。
何度も吐きそうになりながら俺はそれを飲み込む。
オェエ…クソマズ…
『特殊職【不死者之王】になれます。三職業に設定しますか?』
俺は迷いなくはいを押す。
すると、俺のステータスが爆発的に伸びていく。
すごいな!なんだこれ気持ち悪っ!だが、これでアンリを救える…はずだ。
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