第23話 あくまでもの話
-Evan-
「お初にお目にかかります。私はワイアット騎士団中級、アイビーと申します。
既に伝達されているかとは思いますから、細かい説明は省かせて頂きます」
女王の謁見を許可された俺たちは、何とも不思議な大広間にいる。
何が不思議かっていうと多分わんさかいるって話の精霊たちの影響だと思われる。
俺達魔族とは仲が悪く、お互いの気配には敏感だ。
しかし俺の場合はヒトに見せかけているおかげで今のところは気づかれていないようだが、俺にとっては居心地がいい場所ではない。
「えぇ、先程警備団から通達がありました。謎の生物の発生により各騎士団はその対応に当たり、必要最低限の街の外への外出は控えるように、とのことですね。
ご存知の通り、我がニコラスには騎士団がありません。
精霊はこの街に沢山いますが、彼らは戦いを望みません。
…どうか、この街をお守りください」
女王は頭を下げるようなことはしなかったが、この街で自由に動くことを許可してくれた。精霊たちも力を貸してくれるそうだ。
四方に散っていた団員も集合し、俺たち以外は騎士団本部へ帰還。
俺とアイビーは警護を続行すべく、宿屋に向かっていた。
ついでだと思い、ウィルとパンジーの待つ、あの酒場へ。
-Will-
つい先日行われた隣町の騎士団の入団試験。
沢山の志願者の中でもひときわ目立つ、その人はいた。
見たこともないような大きい
観客席から見てたあの時は名前なんてわからなかったけどニコラスの酒場で運命的な出会いを果たした。
「ねぇパンジー、エヴァンさんいつ戻ってくるかな?」
パンジーは俺より一つ下の幼馴染の女の子。
おどおどしたような第一印象な子だけど実はとっても〈水〉の魔力が強いんだ!
僕は〈炎〉の魔力遣いで、祖父譲り。
僕の祖父は100年前に魔王と対峙してその時受けた傷が原因で僕が10の時に亡くなった。魔力が人にしては強かったこともあって長寿だったから、寿命だって言う人もいるけどね。
僕は祖父に育てられてきたから、祖父が亡くなった時は思わず魔王を恨んだよ。
寿命だったにしろ、魔王から受けた呪詛が寿命を縮めたことは紛れもない事実。
だから僕は魔王を探してる。祖父の、じいちゃんの敵を討つために。
「(仮)って言っても騎士団の人なんだし、任務とかあるだろうし…。
夜とか、あ、明日の朝とかなんじゃない?」
「夜だといいけどな~…っていうか、さっきから外が騒がしくない?」
酒場の一番奥に席を取っているのにも関わらず、何やら店の外ががやがやと騒がしくなってきた。
「何か外であったんですか?」
とりあえず店の主人に尋ねてみる。
「あぁ、外で隣の騎士団の団員たちが街の外への外出を控えろって言いまわっているらしい。いったい何が起こっているんだか…」
「騎士団の団員さんたちが言いまわってる?」
主人の言葉を繰り返して、様子を見に店の外へ飛び出した。
緑で覆われた精霊たちの多く住むこの街には少し珍しい
「どういうことだ…?一部隊程の
まさか、魔王の攻撃なのか…?」
騎士団がこんなに大きく動くなんて、魔王に関わっているか何か大きな災いでも起こるのか、どちらかと考えてしまう。
魔王からの攻撃か、なんて思わず口からぽろっと零れた言葉を聞いた酒場にいた商人たちが席に戻った僕らの周りを囲んだ。
「なぁ兄ちゃん、今”魔王”って言ったか?
魔王は随分前に滅んだんじゃないのか?」
「いや、あくまで仮説ですよ。詳しいことは騎士団の人にでも聞いてみないことにはなんとも…」
そうだ、その内エヴァンさんがここに戻ってくるはずだし、その時聞いてみればいいよな?
「その内此処に先日入団された団員さんが僕のところに来るんです。
その時聞いてみますね。今外で何が起こっているのか…」
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