第20話 変化



-Edward-


 無事本部に到着し、余程薬が効いているのかヤツは一向に目を覚まさない。

おかげで何の問題もなく捕獲器にいれることができた。


そして現在、腹の虫と闘いながら団長執務室前。



「団長、エドワードです。只今戻りました」


 中には副団長しかおらず、団長は不在のようだ。


「あぁ、エドか。今アーガンは警護団に呼ばれて不在でな。

代わりに私が報告を聞こう」


「では…、酒場からの警護依頼は滞りなく終了しました。

道中深緑のディフォルを通ったのですが、そこで黒いウルフ族のような獣と遭遇し、捕獲しました。

現在はティムの調合した薬によって眠っています」


「黒い、ウルフか」


 捕獲器に足音なく近寄り、中を確認する。


「あの森にいるのは白く、もう少し小さいウルフだったと記憶しているが…此奴は正反対だな。

もしかすると今団長が出払っている件に何か関係があるかもしれない」


「と、言いますと?」


「先程警備団総本部より各騎士団へ通達があった。

この黒いウルフのような特異生物が各地の森や湖、山岳地帯で発見されたそうだ。

色や躰の大きさなどがどうも違っているらしい」


 この世界、各地に特異生物が…。


「なんでまた…」


「詳しいことはまだ何もわかっていない。

各地で捕獲された生物は警備団総本部へ移送しろとの命令だ。

お前はこのまま此奴を移送してくれ。…そうだな、此奴を眠らせたというティムも連れていけ」


「承知しました。では早速ティムと合流して総本部へ向かいます」


「あぁ。それからエヴァン含め手の空いている団員にこの近くでも特異生物が発見されたことを伝え、ここと隣の街の住人に街の外への外出は避けるよう注意を促してくれ。ここより北の方で既に民間人に怪我人が出たとの報告が挙がっている」


 じゃあティムと合流する前にその辺の団員集めて伝達するか。

エヴァンとティムはまだ店にいるだろうか?まとまっててくれると手間が省けるんだが…。


 

 執務室を出ると再び捕獲器を抱え、団員の集まっていそうな鍛錬場に顔を出す。

案の定任務に出ていない下級・中級クラスが鍛錬に励んでいた。一番手前にいた中級を呼び止め、全員の視線を集めて副団長からの命を伝える。


「これより臨時の部隊を組む。

〈炎〉・〈水〉・〈地〉はこの街に残り、手分けをして住人へ注意を促せ。

〈風〉は仮入団のエヴァンも連れてニコラスへ出向き、注意を。因みにティムは俺と別件で動く。もう一人はリグと任務中だ。質問のあるやつはいるか?

…いなければそれぞれ動け!」


『了解しました!』




「ところでエドワードさん、エヴァンは今どこに?」


 先程呼び止めた男で隊服の色がイングリッシュ・アイビー…、〈風〉部隊の中級が近づいてきた。


「おそらくティムと一緒だ。エヴァンは後から向かわせるから、お前たちは先に行け。俺はこれより警備団総本部へ向かう。もし何かあれば副団長に報告しろ」


「承知しました」


 中級は一歩下がって頭を下げると部隊へ駆け戻っていった。


俺は一度隊室に戻り、正装のローブをひっつかんで本部の外へ飛び出した。





-Evan-



『エヴァン様、』



 酒場で食事をとった俺たちは一度本部に戻ろうかと城へ続く大通りを歩いていると、大樹の麓にいるルイスから風の便りが届いた。と思ったら本部の方がやけに騒がしくなった。


「待てティム、本部で何かあったらしい」


 先を歩いていたティムを呼び止めると空を見上げた。

すると本部の方から約10頭程のドラゴン達が団員を乗せてニコラスの方角へと飛び立っていくところだった。


「どうしたっていうんだ?

まさかさっきのウルフに何か関係でもあるのか?」


 文献でも見たこともなかったし、新種のようだったが…、とティムがつぶやくと同時に上空から俺たちを呼ぶ声がした。






 


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