ある介護士(非正規)の日常

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無職編

第1話30代から介護士に転職

「では今日の予定を言っていきます」



女性主任の大谷さんは今日もどこか険しそうな顔であった。


無理もない。ここ最近新しい新規の利用者や職員がここ最近3人もいっぺんに辞めてしまったのだから。


ここ介護施設「ゆりかもめ」はデイサービスと小規模多機能を運営している介護施設である。



「今日は送迎が終わったら月に一回の会議がありますので終わっても帰らないように」とそういって大谷さんは事務所のほうに戻ってしまった。



私こと佐久間 らんまはひょんなことから新卒で入社した会社が倒産してしまった。


もともと文系の文学部卒、しかもこれといって社会人になってからつけた資格もスキルもなく、30代に入ってしまったので転職が絶望的だった。



その日も私は転職活動の面接の結果があったが、結果は不合格。


私はハローワークに行き、とりあえず結果を言いに行ったのである。



「それは残念でしたね」とハローワークの職員さんは淡々と私に言ってきた。


「ほんとですよ、今回は良い感触だったのですが」

私は気分の落ち込みを隠そうと何とか笑顔を作っていた。


「そうですか・・・・・やはり今のご時世30代から正社員での転職は厳しいですものね」とその職員は深く、そして沈んだ声で言った。



私の相談相手のハローワークの職員も実をいうと正社員ではなく非正規社員だったのである。



一昔前まではそれこそこのような場所は公務員で正社員だったのだが、時代の流れなのか、ここ最近はハローワークの正社員はほとんどいないようである。だからこそなのかハローワークの職員も利用している人間も暗く、そしてこの場所が暗く思えるのは。



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