02-5 ベビードールvsクマさん、エロ対決の行方
「お、おしめ替えてほしいって、その……」
国光くん、目を見開いてるわ。……まあエッチな物部一族の一員とはいえ、国光くん、そっち方面では極めてノーマルだからさ。私の説明も聞き流してたし、当然の反応と言うか。
リンちゃんに脇をつつかれた。
「どうすんだよレイリィ。このままじゃヤバイぞ」
「もう成り行きね、こうなると」
「情けないなあ。……それでも夢探偵かよ」
「恋愛デスゲーム容疑者は、想像以上にぶっ飛んでたってことで」
「うんそう。おしめ……」
ファンファーレが鳴り響くと、ソファーがベッドに変身する。かえでちゃんの服も変わった。なんての、ベビードールだっけ、あんな感じの幼ちょいエロ下着姿。で、もちろん下半身はファンシーなおむつ姿だよ。
「レイリィがやったのかよ」
さすがのリンちゃんも、のけぞってる。
「私じゃないよ。かえでちゃん。ここ、かえでちゃんの夢世界だし。……でも普通、夢介入されてるときは、夢の内容を変えることはできないんだけどなあ」
「だよなあ。藤田んときだって、あいつ、SM懲罰から逃げ出せなかったし」
「ま、そんだけかえでちゃんの思い入れが異様に強いってことでしょ。おむつプレイに対しての」
「そんなのんきな分析、してる場合かよ。おっさん、ドン引きどころか激引きじゃんか」
「おおおおしめ……」
絶句して謎衣装のかえでちゃんを眺め回してた国光くんが、いきなり立ち上がった。
「そうだ。仕事に行かないと。遅刻すると社長に殺される」
わけのわかんない言い訳すると、脱兎のごとく逃げ出したわけよ。クマの着ぐるみ姿で。
「ヤバっ」
とっさにリンちゃんが追いかける――って、全然追いつけないじゃん。あのリンちゃんの運動能力を持ってしても。人間にあるまじき逃げ足の速さ。……これも、命の危険(笑)を感じ取った国光くんの潜在パワーのなせる技だと思うわ。かえでちゃんのおむつ召喚と同じで。
「うーがおーっ!」
どこかのアニメみたいな叫びを上げると、走りながら、リンちゃんが部族型に変身した。さすがに制服を脱ぐ余裕はないけど、頭も手もふさふさの毛がおひさまに輝いてるし、ネコミミがぴくぴく動いてる。制服のスカートの下には、だらんと尻尾も垂れ下がったよ。
「頑張ってーリンちゃん」
実際、すごい加速。ぐんぐん距離が縮まった。ほら、サバンナで鹿とかをハントするチーターのビデオがあるじゃん。あんな感じ。
決闘の場で、伊羅将くんを死の一歩手前まで追い込んだ本領発揮というか。さすが武闘派ネコネコマタだわ。あっという間に追いつくとタックル。転がした国光くんの着ぐるみの首筋を咥えると、ぐいぐい引きずってくる。ネコ科肉食獣じゃん、マジ。国光くんはなんか会社がとかおしめいやーとか意味不明な叫びを上げて手足をバタバタさせてたけど、逃げられるわけないよね。
「逃げんじゃねえよ、おっさん。大人だろ」
国光くんをベッドに放り投げると、リンちゃんが叫んだ。さすがに息が上がってるわ。
「そ、そりゃ大人だけどさ。……というより、大人だぞ。大人がなんでおしめ――」
「はい黙るー」
私、おでこをごちんとしたんだ。そしたら――。
「いいのレイリィさん。私のせい」
かえでちゃんが、ふかーい溜息をついたわけよ。
「ごめんねおじさま。私、ちょっとヘンなんだ。おじさまみたいな素敵な方にいろいろ、その……世話……してもらいたいって。気持ち悪いよね。こんな夢」
涙声になってる。したら国光くん、しばらく黙ってたかと思うと、ほっと息を吐いたよ。力を抜くみたいに首を鳴らして。
「……そうか。こっちこそごめんね、かえでちゃん。ちょっとその……驚いだだけなんだ。別に人の趣味をどうこう言う気はないよ」
なんとか笑顔を作ってみせた。クマ姿だから笑っちゃうけど、ちょっといい男だよ。
「なんせこっちも、エロ一族、物部の一員だからさ。考えたら人のことなんか言えない。なんたって命と縮めてまで淫魔と契約した、ヘンな家系で」
ひとこと余計だっての。
国光くんは、今初めて会った人って感じで、かえでちゃんの顔かたちを眺め渡した。多分緊張がほぐれたんだね、やっと。
ベビードール姿のかえでちゃんの胸に特に視線が泳いでる。……嫌な予感がするわパート2。
「人間、誰だってどこか歪んでるんだよ。エッチの好み方面だけじゃなく、性格とか、どうしても止められない悪い癖とか」
マジメな話を始めたわ。クマ姿だけど。
「俺もそう。かえでちゃんも」
クマの手のまま、かえでちゃんの手を取ったわ。
「おしめプレイだって、考えてみれば、伊羅将の育て直しだと思えてきたよ。あの頃、嫁と一緒に必死に子育てした。日々成長していく子供の世話は大変だけど、おしめ替えだって楽しかった。今もう一度、今度はこんなかわいい娘のおしめか……。時代は変わるな」
かえでちゃんのすべすべの手を撫でてる。
「……わかったよ。彼女というより伊羅将が作った子供だと思って、優しくするわ。すぐにはその……なんとかプレイは厳しいかもだけど」
「おじさま……」
「……俺も先走りすぎてたんだ。彼女できるかもって思って。だからさ、焦らないで、友達から始めようか。ウチ、あんまりお金はないけど、週末に居酒屋に行くくらいはできるからさ。飲んでバカ話あたりから。……街外れの公園で散歩してもいいな」
「うん。……楽しそう」
かえでちゃんも、やっと笑顔になったよ。いい感じじゃん、この展開。さすが夢探偵レイリィ様のプロデュースだねっ!
「そして――」
って、ベビードール姿の胸、ガン見じゃん。もうレースの服が透けるほど。……このエロ親父。言ってることだけはいい感じなんだけどさあ……。
「はいーそこまでー」
頭ゴチン。
「そういうことは、ゆっくりね。まずかえでちゃんをきちんと、子供扱いしてあげてから」
自分でもなに言ってるのかわかんない。……けどこれでいいよね。ちょっといびつな大団円。きっとこれが、現代のリアルなんだよ。
「そうそう。おっさん。まずおしめ替えてやれよな。明日連れてくからよ。きちんと替えられるかどうか、あたしが見ててやるから。こっちはこっちで、伊羅将と仲良くやるからよ。まあ……また固くなるかどうか、噛み付いてみてから考えるけど。苦いの出ちゃったら困るけど、レイリィの話だと物部家はみんなすぐ復活して何度でも――」
「はい暴走ー」
ごっちん。
はたかれたリンちゃん、笑ってる。それを見てかえでちゃんも国光くんも、つられて笑い出した。
よしっ。後は明日、素知らぬ顔で、かえでちゃんに夢の話聞き出して、そっくりなおっさん、実際紹介するからって展開にすればいいよね。
ふうー。苦労したけど、今回も夢探偵レイリィ、難事件解決っと! 明日の晩はご褒美に、夢世界で伊羅将くんになでなでしてもらおうっと。……もしかしたらまたその……アレもらってパワーアップして。
■夢探偵レイリィ、今度こそ完結です!
レイリィ「あらー。私の活躍、まだまだあるんだけど、はあ。沖縄での裏話とか」
猫目「なんだよ、またしても。そもそも本編の沖縄編、仕上がるのずーっと先だぞ」
レイリィ「なら書きなよ、早く」
猫目「忙しいんだよ。人生のアレコレで。毎日毎日ゴロゴロしてるエロ妖怪とは違うんだからよ」
レイリィ「ふーん。またまたそんなこと言うんだ……」
猫目「な、なんだよ……。ヘンな目つきで」
レイリィ「みなさーん。この作者はですねえ。リアルでお――」
猫目「それは取材で……。あーもういいよ。書く書く。レイリィがなんか事件解決したらさ、『完結』を『連載中』に戻して書いてやるから。それでカンベンしろよな、お前」
レイリィ「はーいっ」
猫目「この野郎、うれしそうに胸突き出しやがって……」
レイリィ「夢探偵レイリィ、次はもっと面白いよ。――夢の世界でぇ、解決よっ! はあ」
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