ライトノベルの方向性について綺麗な三角さまに相談した結果

しゃちほこ眼鏡

ライトノベルの方向性について綺麗な三角さまに相談した結果

私、この間、綺麗な三角さまとスポーツジムに行ってまいりました。

初めにこんなこというのもなんですが、これはすごく珍しいことです。


まず、綺麗な三角さまをざっくり紹介させていただきます。綺麗な三角さまは、30代前半、バリキャリの社畜で、週5でスポーツジムに通っているストイックな方です。その狂気の沙汰のせいで、もともと鋭利だった顎がさらにシュッとなり、現在の綺麗な三角さまになってしまわれました。現在恋人はいません。


そして私はというと、30代手前の喪男(もだん)、腐男(ふだん)、毒男(どくだん)というMFD3拍子そろった引きこもりの底辺人間であります。もちろん恋人はいません。


今思い出しても、どういういきさつで二人でスポーツジムに行くことになったのか明確ではありませんが、これはすごく珍しいことなのです。


以下は、エアロバイクを隣同士でこいでいるときの綺麗な三角さまとの会話です。


「あの、綺麗な三角さん、ライトノベルってご存知ですか?」


「知っているわよ」


「最近、僕、ライトノベルを書き始めたんですよ。」


「そう、どうして急に書き始めたの?」


「こう、僕みたいにずっと引きこもっていると、いろいろ妄想しちゃうんですよね。それで、こういう世界があったら面白いだろうなと、自己満足目的で始めたんです。」


「ふうん。それで?」


「書いてみると、これがなかなか難しくって、自分の表現力とか妄想力の未熟さを改めて思い知らされてしまいまして。自分ではそこそこ面白くなるように書いているつもりなんですけどね、なかなか読んでもらえなくって。」


「あら?自己満足目的と言いながらも、読んでもらおうなんてことも思っているのね。虫のいい話。」


「ですよね・・・でも、同じような世界を楽しんでくれるような仲間がほしいというか。それで自己満足が完結するというか。そんな感じで。」


「・・・」


「あ、すみません。綺麗な三角さまにこんな話をしても仕方ないですよね。」


「ちょっと読ませてもらえるかしら?」


「あ、はい。」


※しばし、綺麗な三角さま黙読中。


「ありがとう。なかなかコアっぽい世界観ね。これは確かに、同じような人間を探すの大変そうね。」


「あ、やっぱりそう思いますよね。」


「ねえ、くそ野郎。」


「え?それって僕のことですか?」


「私と今話しているのって、あなた以外にいないでしょ?」


「そう、ですね。」


「くそ野郎は、私の顔を見てなにか感じることはある?」


「あ、いや、その、綺麗な・・・三角形だな、と。」


「・・・でしょうね。それで?」


「え?それでって?それだけですけど。」


「くそ野郎は、私のような顔になりたいと思うの?」


「いや、僕はそこまで鋭利には生きられないです。」


「・・・でしょうね。」


そういうと綺麗な三角さんはエアロバイクを漕ぐのをやめ、地面に降りた。


「でも、だからって私は、三角形でいることをやめられる?いいえ、やめられないわ。この先も三角形で居続けるのよ。私がやめたいと思うまで。その途中で同志に出会えたら、それは素敵なことなのでしょうけれどね。」


「え?それって、どういう意味ですか?」


「だから、くそ野郎は、読んでくれる人がいなかったら作品を書かないのかって、そういってるのよ。書くのをやめられないのなら、あれこれ考えったって無駄なのよ。書き続けるしかないじゃない。」


「そ、そうですよね。なんだかすっきりしました。相談に乗ってくれてありがとうございました。」


「別に、私は私が三角形で居続けるために、言いたいことを言っただけよ。」


そういって、綺麗な三角さんはスポーツドリンクを飲み干すと、ストレッチコーナーの方へ歩き出した。


「でも、あなたの作品、私は嫌いじゃないわよ。」


どこまでも尖った人である。

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