昇降口で

「私を見たあなたたちが変りたいと願うことは、この学園で具現化するセカイに……」



 下校時間の昇降口で、僕と、津井ツイさん姉妹、氷川コオリカワさんが同じタイミングで出会ったタイミングで、もう一人の生徒が現れた。彼女は僕たちが見た、オレンジ色の光の姿だった。


「僕たちは、君がいたからこの学園で変ることが出来た?」


「本当のことが分かりたければ、2つ山の向こうに大木がある……」


 そう話し、4人がいる昇降口を横切る。今まで流れていた不思議な異様な空気が消える。ふと見渡すといつもの景色で、何事もないような感覚になる。そして気づくとその生徒は消えていた。僕たちはふと我に戻った。


「これって……」


「しまったっ! スマホの充電が切れていたっ!」


「もし彼女のことが本当だとすると、僕たちは何をすればいいんだろう?」


 氷川さんが惜しげな表情で話す。


「この件は充電をして~っ! 撮影してスクープにしましょう!」


「それは、やめた方がいいのでは?」

「何か違う雰囲気がしたから……」


「僕は2つ山の向こうの大木に、行こうと思う」


「じゃっ私もっ!」


「雄一君が言うなら」

「私も……」


 僕たち4人は、昇降口の前で2つ山の向こうの大木に向かうことに決まった。ずっと前から、僕たちの変化がオレンジ色の光が原因だと言うことを知った。その日から今日まで学園で起きる変化をそれぞれ4人が身をもって体験していたこと。そしてこの不思議な経験は僕たちだけの物だと思っている。


 僕と、津井さん姉妹、氷川さんは外のバス停に向かう。ベンチに津井さん姉妹と、氷川さんが座る。僕は向かい合うように、これからどうやって2つ山の向こうの大木に向かうかを話し合った。


「たしか、2つ山ってこの山背市の隣町の山頂だよね?」


「雄一君? だったっけ? 私、氷川にいい案があるんですっ!」


「えっ?」


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