朝の学園で


 学園内には、まだ授業がはじまる前の朝の混沌とした空気がある。津井ツイさんは別のクラスで、僕は自分のクラスに向かう。

 朝の教室は皆、眠いのか少し重い空気がある。僕のクラスは授業の前、授業の後、お昼の休憩時間に仲の良いクラスメイト同士が話をしている。そんな朝の風景の中、教室に入ると太子タイシが真剣にスマホの動画を観ていた。


「おはよう、太子タイシ何を観てる?」


「おはよう雄一ユウイチ……う~ん これ本当なのか?」


 そう太子が言うと、スマホの画面を僕に見せてきた。どうやら先ほど津井さん姉妹と話していた、昨日の夜、オレンジ色の光が撮影されたネット動画だった。


「ああ……う~んそうだよね、謎だよね……」


「俺は、こう言うのは疎いほうだけど、信じられないよなぁ」



 どうやら、太子は昨日の夜のオレンジ色の光を見ていないらしい。僕が朝のニュースで知って太子に話そうとしたことが、先に太子から話をしていた。太子が話すには興味はあるけど、分からないみたいだった。


「太子はこの動画、どう思う?」


「撮影時間が、昨日の深夜だろ? 俺はヘッドホンして寝てたからなぁ~、う~ん?  この動画に声が入っているだろ?」


「う~ん本当だね、撮影者の声かな太子?」


「俺、この声どこかで聞いたことがあるんだよな……」



「♪~授業開始のチャイム音」



「あっ! 始まる……」


「お昼に、もう一度観るか……」



 太子と僕がそう話していると、朝の混沌とした空気が、授業開始のチャイムの音とともに変わり出す。教室にはクラスメイト各自机に向かい、ザザッという椅子の音が教室に響く。教室に担任が入り、生徒のかけ声とともにいつもの授業風景が始まる。

 撮影された動画のことを気にしながら、朝の授業風景に僕は、ただいつものように溶け込んだ……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る