僕たちが話すこと



 夜の学園の門の前、津井ツイさんに呼ばれて、分かったこと。


 不思議な経験をしたことは、体験した人にしか分からないこともあると思う。経験したことを、体験していない人に話していること、実際に不思議なものを見た経験がある人同士で、話すのとでは…意識と心の通い方が違うと僕は思った。


 僕たちは、二日の間の出来事を話し出す。



「僕は津井さんが話していたことの二日前から! 過去のこと、今の自分のことを考えていて、過去の自分が望んだことを思い出していたんだ」


雄一ユウイチ君の望んだこと?」


「過去の僕が進学したら、勉強も友達も人気もにぎやかな彼女も、すべて出来ますようにって……その願いが現実になってきているのかも……」


「それは雄一君の願いなの?」


「うん、そう望んでいたら、今日の出来事が… もしかして……津井さんは願いがあったの?」


「私は、今まで姉妹がいなくて普通に生きていたの、雄一君と同じなぜか二日前から、過去の自分と今の自分が気になった時に…… 一人じゃなく、姉妹がいたら… 彼氏がいたら…… 地味じゃなくて賑やかに学園生活が出来たら… って思っていたの」


「そうなんだ…… 津井さんと僕は似ていることを願っていた……」



 津井さんの願いの話と、僕の願いの話に共通することがあった。もしかしたら今日のお昼の出来事は、僕と津井さんの願いが組み合わされて出来た、現実なのかもしれない。不思議なオレンジ色の光を見ただけで、なぜ現実に具現化されたのかは。今の僕には分からない。



「不思議なことって、本当にあるんだ……」


「願い……今日の出来事って……僕も津井さんも、幸せなのかな……?」


「うん……いいと思うよ……」



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