蛙の色合いの境界線 -香鳴裕人詩集Ⅲ-

言葉を撃てよ

死にきれねぇ言葉でいい

靉靆（あいたい）とした心持ちを振り払ってくれれば

いくらかはましだろう

死にきれねぇ言葉でいいんだよ

言葉を撃てよ

どうしたってばらばら

ネット回線は時折の不通

繋がることさえ満足にできなくても

時間差で届くだろう

おそらくは

埋め草になるかなんてわからなくても

どうせ死にきれねぇ言葉なら

埋葬より未満なのであれば

くだらねぇってことはわかるだろう

何を気にせずとも

言葉を撃てよ

砂はきみを溶かすだろう

波はきみが咽ぶだろう

命はきみがもてあそぶだろう

命よりも先に言葉は撃てないだろう

詩人さん

いくらかを持て余しているのなら

言葉など撃ってみてはいかが

何もたいしたことはありません

気の優れない昼を

少しばかり廉売するだけ

撃ってみてはいかが

死にきれない言葉でも

埋め草になると知れずとも

そこにある言葉のつながりが

無残なオブジェにも満たなくて

同調することには吐き気がして

けれど何もできないうちに

無力なんていいだけ思い知ったろう

それで息をやめないんなら

言葉を撃てよ

死にきれなくても

死にきれないから

苛立ちはきみを苦しめるだろう

微笑みはきみに緩むだろう

それがどこかにあるのなら？

どこにもない言葉なんてないから

撃てよ！

生きるに満たない残骸を並べて

死ぬに満たない鬱屈を連ねて

そんな大仰なことを言う必要もなく

そうさ間違いなくお前は生きているよ

死にきれねぇ言葉を撃てよ！

砂はきみを溶かすだろう

波はきみが咽ぶだろう

苛立ちと微笑みはきみを苦しめるよ

それでかまわねぇと知らん顔はできなくても

無力は散々思い知っても

間違いなくお前は生きているよ

言葉を撃てよ！

死にきれねぇでいるよ

さっさと撃てよ